「NovelJam」とは、即興で小説を書き上げるイベント。著者・編集者・デザイナーがチームを組み、出された「お題」から即席で小説を作り、さらにはストアで電子書籍の販売まで!まさに音楽におけるジャムセッションのように、その場で小説を「書いて」+「本にして」+「売る」。今までにありそうでなかった小説ハッカソンが「NovelJam」です。
昨年に続き2回目となる今回の会場は、東京八王子の山の上にある「八王子セミナーハウス」です。2月10日(土)~12日(月)の3日間、参加者は「缶詰」の合宿形式で実施されました。
ブクログ通信編集部は、その会場へ潜入取材してまいりました!
お題は「平成」!たった3日で書きあげて売る!小説ハッカソンついに開催
今回の参加者は、著者16名・編集者8名・デザイナー8名の総勢32名。来歴もさまざまで、日頃から小説を書いている人はもちろん、出版社編集者からテレビドラマ脚本家、ゲームシナリオライター、学生など、男女比半々で年代の幅も広くバリエーションに富んだ皆さんが集まりました。
最初に発表されたお題は「平成」。2019年4月末で終わることが確定している日本史上初の元号「平成」は、テーマとして書きやすいようでいて、なかなか奥が深い「難題」かもしれません。会場ではどよめきとも歓声ともつかない声が上がります。
ルールは、「平成」というお題で3000字以上の小説を書き上げること。締め切りは2月12日(月)午前8時まで。
今年から、チーム編成も会場で行われます。まず編集者がプレゼンをし、その編集者と組みたい!と思った著者とデザイナーが挙手するドラフト方式。各編集者から自己紹介とNovelJamにかける「思い」をアピール。ドラフト方式なので、数人から指名を受ける編集者もいましたが、無事8つのグループに。
初日は初稿のプロットまでのアウトラインを考え、2日目から具体的に執筆。途中にチェックポイントが設けられていて、途中で提出された作品は、全てGoogle Driveで一般公開。各チームの途中経過を見ることができるので、製作工程までも丸はだか!そして3日目朝、ほとんどのチームが徹夜で、全ての原稿を提出完了。ここで終了!かと思いきや、続いて電子書籍のパブリッシング作業です。午後1:00、全16作品がWeb上の販売プラットフォーム「BCCKS」(※ブックス:誰でもカンタンに本を作ってアッという間に公開/販売できるWebサービス)にて一斉に発売されました。
続けて作品のプレゼンタイムです。3分間という限られた時間の中で、各編集者から作品のアピールタイム!朗読する人、ギターを弾く人、即興演技をする人、ラップをする人と、まさかと思えるさまざまなスタイルで発表が続き、会場は笑いにつつまれながらプレゼンタイム終了。いよいよ審査へ。
波瀾の予感?!審査結果発表!最優秀作はなんと…
16作品への評価を別室で当日審査員が実施します。
その審査員は、
- 米光一成さん(ゲーム作家)
- 海猫沢めろんさん(文筆家)
- 内藤みかさん(作家&エッセイスト)
- 新城カズマさん(作家)
- 有田真代さん(スポンサー審査員:株式会社エブリスタ)
そうそうたるメンバー!しかし審査は予定時間をオーバーするほど難航し、待たされること30分。ついに席に着席した審査員の皆さん。
待ちに待った審査結果発表です。栄えある最優秀賞は!
NovelJam2018 最優秀賞
作品はまさかの「該当なし」!!
議論に議論を重ねた結果、NovelJam2回目にして最優秀賞なしの結果になりました。その代わり優秀賞は2作品選ばれました。
NovelJam2018 優秀賞
天王丸景虎さん『バカとバカンス』
『バカとバカンス』
天王丸景虎(著) 野崎勝弘(編) 波野發作(デザイン)
内容紹介
「誰が何と言おうと、世界は平らだ。俺が作ったのだから間違いない」と男は言う。天地創造を成した男は、シンプルで美しい世界が人間の醜悪な知性に汚されていくことが我慢ならなかった。
というかもう開発デスマーチが嫌になった!?
牧野楠葉さん『ユキとナギの冒険』
『ユキとナギの冒険』
牧野楠葉(著) ハギヨシ(編) 古海あいこ(デザイン)
内容紹介
闘う女たちの命の輝きが平成の終わりに激しく瞬く!
世界に対して居場所のないナギとユキ。
いかしてイカれた怒れる二人の女の物語。
講評
その他発表されたNovelJam2018スポンサー賞、各審査員賞など全16作品はこちらからBCCKSのNovelJam特設サイトから確認できます。
最後に審査員の皆さんから各16作品への講評があり、今回最優秀作品が選ばれなかった理由が説明されました。
米光一成さんは「優秀賞2作品は審査の中で飛びぬけて高い点を集め、双方とも良かったという評価は間違いがないのだが、ではどちらを推すのか?という段になると、双方の弱点がどうしても目につき、一方だけを最優秀作品と選定することができなかった。この際、最優秀賞2作品にしようかという議論もあったが、今後の『のびしろ』を期待して優秀賞にとどめた」と説明。
「2作品とも『車輪の再発明』的な弱点があり、過去に一世を風靡したスタイルを継承していたとしても、それが現代的にアップデートされているのか?というところが問われた」と海猫沢めろんさんの言。
講評コーディネイター役の仲俣暁生さんからは「惜しくも賞を逃した作品でも、今回は「このNovelJamで作品を作った意義」が問われた審査だったので、作品の完成度高いか低いかは関係がない」との言葉も。
各審査員賞での思いや、作品へのさまざまアドバイスなど暖かな言葉が贈られました。最後は参加者・審査員入り乱れての懇親会が催され、審査員の皆さんへ当選また落選の質問する参加者たちの熱気に溢れていました。皆さん2泊3日お疲れ様でした!
しかしまだまだ終わらないNovelJam!グランプリが3月26日に発表!
しかしNovelJam2018は今回で終了ではありません。実はこれはあくまで「当日賞」であり、ここから1ヶ月後、来週3月26日(月)に、電子書籍の完成度やと販売実績も含めて再び審査が行われ、「NovelJam 2018 グランプリ」が発表されます。
NovelJam2018 グランプリ授賞式&審査員トークセッション詳細はこちら
グランプリ審査員は作家・藤井太洋さん、マンガ家・ 鈴木みそさんがマンガ家 / イラストレーター山田章博さんと、さらにそうそうたるメンバーがグランプリ審査員を務め、今回の当日賞とは違った展開に?!本は出したら終わりではなく、出してからが勝負!来週26日にグランプリを制するのは、どのグループになるのでしょうか!
後半は主催である日本独立作家同盟理事でありNovelJam企画の部会長である江口晋太朗さんにインタビューを実施し、NovelJam2018を振り返っていただきました。