ここ10年ぐらい、昔に比べて漫画を殆ど買わなくなりました。自分が年とったせいか、漫画なんてもう何見ても何周も廻ってるようにしか思えなくて。あぁ~あれはこれ系だな、これはあの流れだな、とか。
それも楽しいんだけども、最近はただのイラスト集のような漫画ばっかりな気がする。昔に比べたら商業ベースに乗っかってる漫画の種類が増え、表現の幅が広がったってことなんですが(音楽で言うとノイズやテクノのような漫画)、どうも自分にしっくりくる作品が少ない。
そんなこんなで最近は漫画好きな後輩の情報を頼るのみ、押見修造は『惡の華』のアニメ版を薦められて知りました。漫画版は未読。
後輩の漫画漁りにつき合って古本屋でひまつぶし、この『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』を見つけて読み始めたらめちゃくちゃおもしろい。立ち読みで全部読んじゃったけど購入。押見修造を見くびってた。
話自体は目新しくないんだけど、志乃ちゃんのおっおっおがぐうかわすぎる・・・どうしても笑ってしまうんだなあ。おっおっおを疾病名として出さなかったところがとてもよい。『英国王のスピーチ』の時に書いたけども、実際にそういう友人と話すとこっちが恐縮してしまってものすごく気を遣うし、冷や汗もだいぶかく。萌えと笑いとタブーと差別と障がいは全部つながっていて、押見修造の他の作品に比べるとこの作品は一見マトモに見えるが水面下では変態なような気がします。
あと、演出が良いんじゃないかなあ・・・。小説だと文字の視覚的印象よりもリズムだと思うけども、漫画だとフォントの種類やサイズ、書き文字で印象が全く変わってくるし、自分にしっくりくるかどうかはその点が大きいんだと思います。
青春物語としては誰しもあるコンプレックスの話なので感情移入しやすい、作者あとがきはまるでピートタウンゼントの鼻の話のよう。
『惡の華』では萩原朔太郎や金子光晴、ロートレアモン等文学作品がモチーフだったけど、今回は同じ部分が音楽に置き換わっている。けっこうベタだけど加代ちゃんの趣味がいい。ボブディラン、フレイミングリップス、ベルセバ、坂本慎太郎、ジムオルーク、小島麻由美、ムーンライダーズ、同級生はレッチリ・・・(他の細かいとこわかんなかった、ごめん)。
キーワードになってる(?)音楽は山本精一。大友良英が昨年NHKのラジオでかけていて、『まさおの夢』を聴いたばかりだから出会えてよかった。ボアダムズ数枚と羅針盤の『らご』とya-to-i、ソロ『Crown of Fuzzy Groove』ぐらいしか持ってないんでこれを機に買いたいと思います。
元ネタのひとつはポスターとして貼ってるゴーストワールド、これは『惡の華』共々共通してるとこがありますね。あとグンマの描写。’81年生まれの押見修造のグンマと、’82年生まれの田我流の山梨も共通してる。
- 感想投稿日 : 2015年1月5日
- 読了日 : 2015年1月4日
- 本棚登録日 : 2015年1月4日
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