再読。
ナチスの反ユダヤ主義・人種論とオカルティズムの類縁性を扱った一冊です。
「オカルティズムへの傾斜は、一般には彼らの狂気、ないしは無知、無教養を示す証拠として言及され、嘲笑されてきた。しかし、そのような見解は事の本質を見誤るものである。十九世紀後半以来、オカルティズムは現実の外に己れの優位性、他者の劣等性を渇望する疎外された人々を魅きつけてきたのであり、とりわけ近代ドイツにあっては、フェルキッシュな夢想家たちの欲望を満たす格好の装置となったことを、私たちは既に見た。ヒムラーやローゼンベルクといった存在は、アリオゾフィに典型的な非理性的フェルキッシュ思想のコンテクストにおいて把握されねばならないのであり、彼らは直接的にせよ間接的にせよ疑いなくその影響下にある」(p. 202)
本書の核心は、おそらく上記引用にあります。
「高次の人種」幻想、社会ダーウィン主義、北方人類起源説、etcetc。十九世紀後半から二十世紀前半の欧州は、まさに奇説怪説の温床であったといえましょう。
荒唐無稽としか思えないそれらが、いかにして実際の政策ーーすなわちナチスの「最終的解決」へと繋がったのか? 本書はそのプロセスを論じて余すところがありません。
博覧強記でありながら論理は明晰そのもの。論理的な文章を書く方の参考にもなるのではないでしょうか。
オカルティスト・エックシュタインと音楽家・ブルックナーの意外な関係など、興味深いエピソードも満載。
お勧めです。
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- 感想投稿日 : 2011年5月5日
- 読了日 : 2012年9月16日
- 本棚登録日 : 2012年9月16日
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