惡の華(11)<完> (講談社コミックス)

著者 :
  • 講談社 (2014年6月9日発売)
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本棚登録 : 812
感想 : 73
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「血の轍」「漂流ネットカフェ」は無料で読めるところまで読んでいた。
そして「浦沢直樹の漫勉Neo」でこの作品を今更に知る。
どうやら、作者ご本人のティーンエージャー時代の鬱屈とした感情を主人公に投影させた物語らしい。

「思春期を乗り越える」までの、主人公たちの、この年齢になってからではだいぶ痛々しい感情の波打ちにちょっと置いていかれることもあったが...。
クリスマスのあの決死の覚悟で挑んだ一言と、それに見事に撃ち抜かれた文の表情が忘れられない...。

徐々にフェードアウトしていく物語の末筆。
文をしっかり抱きしめながら主人公が見た夢の中で、それぞれの思春期を乗り越えた登場人物たちに、安らかな表情を重ねて描いてくれた作者。
なんとも言えない、感謝の気持ちで滲んでいった読後感だった。

そして、物語は、また誰かの心の中とリンクしていくように、思春期真っ只中の(困ったちゃん全開の)佐和にループしていく。

平成の中学生だったけど、令和の中学生も同じような感情抱いているんだろうか。

作者が考える思春期は、きっと時代が変わっても、皆が、もがき苦しむ普遍的なものなんだろう。

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読了された方へ。
下記リンクのインタビュー記事、とてもオススメ。
何度か引用される名シーンを思い返すと、また読み返したくなる。

ちょっと、突拍子もなかった感のあるあの夏祭りのシーンが、あの名画へのオマージュだったり、後半、セリフ(モノローグ)が極端に減っていったあの違和感も実は作為だったりとか。
もっと作者と作品と近くなれること必至かなと。

【インタビュー】“純愛”を考えていたら体操服を盗む話ができあがった。 『惡の華』押見修造【前編】
https://konomanga.jp/interview/3807-2 [2014/06/14]

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年7月13日
読了日 : 2021年7月6日
本棚登録日 : 2021年7月6日

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