智にはたらけば角が立つ: ある人生の記録

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想 : 2
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022573315

作品紹介・あらすじ

敗戦後の象牙の塔で著者はいかにしてプリンシプルと理を貫いたか。

感想・レビュー・書評

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  • 森嶋さんの京都大学時代と大阪大学時代の自伝です。
    書名の「智」は、知識、情報の記憶ではなく、理性、理屈が主の漱石の智。
    エピソードを読みました。

    日本人はますます精神的に弱者になっていきつつあるのかもしれない。知識の量では世界でトップ・グループに属する。しかし自己主張―ただしそれはプリンシプル(原理・原則)に忠実な論理的に説得力のあるものでなければならない―の面では、日本人はますますひ弱になっている。和を強調することは、日本人をますます、(弱者的)にし、(貧弱)にしてしまう。日本人はむしろ逆に論理によってしか屈服せず、相手を論理によって説得する人にならなければならない。現在の日本人は、こういう論理を捨てた和の人生観では、外国人のプードル(猟犬・愛玩犬)になることはできても、外国人を動かすことは決してできないことを銘記すべきである。

    と書かれています。
    とても戒められて、反省させられる指摘です。

  • 学生時代に読んだ本で、とても好きな本なのだが、すでに絶版となっているようで再購入したのはネットの古本屋だった。「血にコクリコの、、、」が文庫本になっているのに以降の本はなっていないのだから、よほど人気がないのだろう。

    僕は森嶋通夫のような人物が大好きである。彼のようなプリンシプルのある人物、それは白洲次郎もそうなのだけど、がとても好きである。もちろん、森嶋には昭和の人特有の狭量さがあり、彼自身もそれにはとても自覚的なのだけど、それでも学者としてとても尊敬したい人物だ。このくらいになると、狭量さも一種のチャームである。

    本書は彼の京大、阪大での紛争とイギリスへの逃避(かな?)のエピソードである。大学内での争いごとと年月を経ての「和解」がきびきびとした文章でまとめられていて美しい。奥さんへの敬意も(テレを入れながら)あちこちにかもしだされていて、それも好感が持てる。

    大学の内紛にはいろいろな思いがある。

    僕が学生時代、どうしようもない医局があり、そこは専門分野が異なることを理由に新任教授と教室員とが小学生みたいな幼稚なケンカを繰り返していた。僕はあれを見て、大学というのはとにかく幼い場所だなあと感じたものだ。その後、あれは母校特有の珍事ではなく、オムニプレゼントな事象なのだと悟り、「昭和の人たち」がいかに幼稚に愚かになることができるのかを良く理解した。

    もちろん、森嶋、白洲を含め、優れた「昭和の人」はたくさんいる。池田清彦先生や内田樹先生、、、僕の数々の恩師も「昭和の人」だから、皆が悪いわけではない。僕は(数々の葛藤の末に)両親も尊敬しているから、かの世代を全否定しているわけでもない。が、それと同時に「こんなに人生経験積んでるくせになんでそんなに学びがないのだ?」と難じたくなるような人たちもこの世代には多い。「今どきの若い奴らは」は1000年以上前からの常套句だが、僕はむしろ、「今どきの年寄りときたら、、、」と苦々しくコメントしたくなることが、週に1度はある。such a jerk,,,というアメリカ時代以来久しく使っていなかったフレーズを思い出してしまうことも、、、、、(今日はそうだったなあ)。

    (白洲次郎が活躍した)大戦直後以降、今ほど日本に「プリンシプル」を必要としている時はない。僕らは、こんなに地震の多い小さな島国に50基以上の原発を作り、それを黙認し、僕らの子どもや孫の世代のエネルギー供給に計り知れない禍根を残した世代として、なんとしてでも日本の未来に一本筋を通す必要がある。そんなことを考えながら、本書を再読した。

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