人間を超えて: 移動と着地 (河出文庫 う 3-2)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309472607

感想・レビュー・書評

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  • 当時60歳を目前にした哲学者の中村雄二郎と、当時40歳を迎えるフェミニズムの第一人者として知られる上野千鶴子の往復書簡です。「老い」というテーマが中心になっていますが、ジェンダーやセクシュアリティについても興味深い議論が交わされています。

    上野は、この本が刊行される数年前に、中村から「老い」をテーマにした対談を依頼され、当時の彼女が「老い」というテーマに関心を抱いていなかったことを告白しています。のちに上野は『おひとりさまの老後』(文春文庫)というベスト・セラーを書くことになるわけですが、「老い」というテーマに上野を開眼させるきっかけとなったのが中村だったとは知らず、興味深く読みました。

    かつて妊娠中絶の問題をめぐって、プロ・チョイスの立場を取るフェミニストたちが、優性思想を隠蔽しているという批判を受けて、差別についてのより深い認識に到達したことがありましたが、上野も本書の中で、「エイジズム」という観点からの批判を受けてみずからの思想を見なおすきっかけを与えられたことを語っています。

    AV女優の黒木香について上野は熱を込めて語っています。黒木香は、「性」の主体となることをめざす「疎外からの回復」の物語を生きたのではなく、男たちの欲望の「対象」となることをみずから意志することで、「主体」である男があらかじめ「奪われた主体性」でしかないことを逆説的に示しているという、フーコー的な戦略を読み込もうとしているようです。議論そのものはおもしろいと思ったのですが、AVがポーズだけではあれ反体制を気取っていた時代から遠く離れてしまった(森下くるみとTOJIRO監督の作品あたりがその掉尾ということになるのでしょうか)現在から見ると、黒木香という存在を肯定的に語っていることには、やはり違和感を覚えます。

  • 往復書簡ってたしかに面白いなー。私もだれかとお手紙したいわ。

  • 上野千鶴子って、人関係なしにケンカをうりにいっている印象があって、こんなにまるい人だったのかとビックリしました。

    というか、わりと上野千鶴子が、必死に話し合わせているのに、中村雄二郎は、あんまり人の話聞いていないみたいな……。
    都合の悪いことは、あっさりかわすみたいな。

    黒木香とかでてきて、けっこう時代を感じさせらせますねぇ。
    でも、あの子も、結局、消費されて、崩壊しちゃったんだよね。

    生きていくのは、つらい世の中だ。

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著者プロフィール

上野千鶴子(うえの・ちづこ)東京大学名誉教授、WAN理事長。社会学。

「2021年 『学問の自由が危ない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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