- Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488425043
感想・レビュー・書評
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四作からなる短編集。
まず、「長く孤独な誘拐」にて出鼻をくじかれた。誘拐犯からの要求は「アル家族ノ息子ヲ誘拐セヨ」。息子を誘拐された側がとある家族の子供を攫う誘拐犯になる、そんな素敵過ぎるプロットに勢い良く食い付いた私は鼻息荒くしながら読み進めていた。のだが...、
むむ、確かにイヤミスで間違い無いのだが、これだとどの流れでも成立してしまう。伏線に期待するような作風では無い事を悟った初手だった。
続いて、「二十四羽の目撃者」
動物園での発砲事件、現場は実質密室状態。保険金殺人を上司が疑い現場に繰り出される事となる本作の主人公、探偵役となるミステリ好きの「おれ」がまさにペンギンの如くパタパタ動き回り、興味の赴くまま見当違いな推理を極悪面警察コンビに披露し怯える姿はとても愛狂おしくやはり前半は楽しい。
しかし、不意のアメリカン仕様はピストルを使う為の措置なのだろうが、言い回しや景色に違和感が大きく、私の拙い想像力では背景を補う事が出来なかった。最終的にはコナン君もびっくりなスーパー過ぎる閃きで強行突破だ。アクション映画ならスタンディングオベーション。
「光と影の誘惑」
タイトルにもなっている代表作。
ギャンブル依存の男二人が結託し、強盗を企てる。順調にセオリー通りの裏切りを経て、待ち構えているのは作者の仕掛けた巧妙な罠。だがしかし手法は今では使い古された定番物であり、驚きは少ない。更にそれを補強する為の細かい辻褄が絶妙に合わないので何だか心の居心地も悪い。昔の作品だから...でフォローされてしまうのは致し方ない気がしてきた折り返し地点の三作目だった。
「我が母の教えたまいし歌」
ここまで私的散々な結果にはなっていたがモチベーションは保たれている。
過去を振り返る皓ちゃん。父と母、そして姉の存在、んむ、複雑ではある。しかしこれを語る上に80ページは少な過ぎるし、収めるには登場人物が多過ぎた。みなみなの皓ちゃんとの繋がりにあまり重要性が無い。全体像が朧気ながら見えてきた頃には「伏線大丈夫か...」と、おろおろしたがなんのその、確か一作目にてその心配は無用だった事を思い出す。そもそも私が伏線だと勝手に盛り上がっているのが悪い。
勿論、終着にはそれなりの衝撃が仕掛けられているのだがなんかその...例えるなら...うん...静電気みたいな感じ...( ´•ω•` イテッ)
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散々ぶーぶー言ってはいるが、結末が私的に物足りなかっただけであって、どれも流石の演出だった。【誘拐・密室・強奪・告白】と、テーマが完全に私の癖にドンピシャして来る。これは罪だ。良い罪。実際どれも読み終えたからの文句であり、経緯はしっかり楽しんでいたもの。やれやれ、我ながら狡いと思う。
ペンギン系メンズの「おれ」の存在以外はALL曇天使用なので胃もたれに注意。「イヤミス」を求めるブラックな己が見え隠れした時、第二のデビル人格を沈めるお薬要員としてこの作品を手に取ってみてはいかがでしょうか。あぁ、もっと刺激の強い処方をお求めであればいつでもご相談下さい...(含)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
4つの短編、全部がすごく面白かった。
特に表題作は貫井徳郎さんの思惑通りに。
最後…ん?え?えぇ?となって読み返してしまった。たしかに…そこココにヒントがあるでわないか!笑
久しぶりの貫井徳郎さん。面白かったぁ! -
貫井さんは既読4作ほどだが、貫井さんらしい嫌な後味の中編4編だった。特に最初の『長く孤独な誘拐』は、子どもが小さい同じような家庭環境だと他人事と思えず、余計に辛い。『儚い羊たちの祝宴』でも自分の子どもで想像してしまい、最悪の気分になったので、出産前に読みたかった。
表題作は久しぶりの叙述トリックで楽しめたが、ラストは救われない。主人公が子どもの誕生日プレゼント資金を競馬でスったくせに、妻のヒステリーにはウンザリとかボヤいてて殺意を覚えたので、読後感は重くはなかった。最後の話もあっさり展開が読めてしまうので、ファンの方以外には勧めない作品かな。 -
やはり著者の作品ふ読みやすくておもしろい。
個人的には「我が母の教えたまいし歌」が面白かった。
読み終わったあともう一度冒頭を読み返したら考え深いものがあった。 -
「光と影の誘惑」「我が母の教えたまいし歌」
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貫井先生好きだけど…
プライムリーディングで無料で読んだから諦めも付く。
お勧めできない。
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可もなく不可もない標準のミステリー小説。特記すべきカラクリがあるわけでもなく全てが想定内。現金輸送強奪の話以外は。それも想定外と言うより意味不明、書いた者勝ちなオチだったw
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4篇からなる中編集。前2篇はいまいち。後2篇はドンデン返しに重きを置いた佳作。競馬場で知り合った男達が現金強奪計画を練る表題作と、ある家族の謎に迫る「我が母の教えたまいし歌」。それぞれのオチはやや強引だが、伏線が丁寧で面白い。ただオチが明かされた途端呆気なく終わってしまったのが残念。確かに想像に委ねるというのも余韻を残す良い手段ではあるが、もう少しその後についても書いてほしかった。でないとまるでドンデン返しのための小説のようで、そこまで積み上げてきた登場人物の心理が置き去りになってしまうのがやや勿体無い。
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貫井ファンとしては、この話はどんな方法で読者を裏切ってくれるのだろう?と期待を上げて読み始める。圧倒的な人の心を描ききる筆力に引き込まれるあまり、忘れた頃にいきおい裏切られる。