本を書く

  • パピルス
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本棚登録 : 111
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (138ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784938165208

感想・レビュー・書評

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  • 130ページほどの短い文章なのだが、実は最後まで読めなかった。

    千夜千冊に入っていたので、まずは読み始めた。
    のっけから、気になる言葉も出てきて、出だしはワクワクしていた。

    でも、すぐに、
    これはなんかちがう。

    という感情に苛まれた。


    半分ほど読んだあたりで、どうにも我慢がならなくなり、読むのをやめてしまった。

    理由はただひとつだけ。
    そう、リズムだ。


    また機会があれば、手にとって見よう。


    という感じで、アニー・ディラードふうに書いてみた。

  • ・その日その日がそれぞれに神であるということに、思い至る者はいない。―エマーソン

    ・魅力的な仕事場は避けるべきである。部屋に眺めなど要らない。そうしておけば、想像力は暗闇の中で記憶に出会うことができる。この小屋を七年前に書斎にしたとき、私は長い机を殺風景な壁に押し付けた。二つある窓のどちらからも景色が見えないように。
    一度、十五年前に、私は駐車場の上のコンクリートブロックの部屋で書いていたことがある。そこからコールタールと砂利の屋根が見下ろせた。林の中の松材のこの書斎は、コンクリートブロックの書斎ほどよくはないが、なんとか、足りる。
    西アフリカの格言に、「知恵の始まりは、頭上に屋根を得ることである」というのがある。

    ・「若い作家は月に橋を架けるために材料を集める」とソローは嘆きながら言っている。「あるいは地上に宮殿を建てるためかもしれない。だが、それらはせいぜい、作家が中年になったとき掘っ建て小屋を建てるのに使われるにすぎない」

    ・駆け出しの写真家が毎年、自分が撮った一番いい写真の束を持って老大家のところに意見を聞きにやってくる。大御所は毎年、溜息をつきながら、その束をいい物と悪い物の二つの山に振り分ける。彼は毎年、ある風景写真を悪い物の山のほうに置く。あるときとうとう老大家は若者を見てこう言った。
    「君はこの風景を毎年持ってくるね。そして僕は毎年、これを悪いほうの山に振り分ける。なぜこれがそんなに好きなのかね」。若い写真家は答えた。「その写真を撮るために険しい山を登らなければならないからです」

    ・書かれた言葉は弱い。多くの人は人生のほうを好む。人生は血をたぎらせるし、おいしい匂いがする。書き物はしょせん書き物にすぎず、文学もまた同様である。それはもっとも繊細な感覚―想像の視覚、創造の聴覚―そしてモラル感と知性にのみ訴える。あなたが今しているこの書くということ、あなたを思いっきり興奮させるこの創作行為、まるで楽団のすぐそばで踊るようにあなたを揺り動かし夢中にさせるこのことは、他の人にはほとんど聞こえないのだ。

    ・有名な作家が一人の学生に次のような質問で引き止められた。「私は作家になれると思いますか」
    「そうですねえ」と作家は答えた。「わからない…。きみは文章が好きかね」
    学生が驚いているのが、作家にはありありと分かった。文章?ぼくが文章が好きかって?ぼくはニ十歳です、文章が好きですって、どういうこと?
    もし彼が文章が好きなら、私が知っている陽気な絵描きのように、彼ももちろん始めることができる。私がどのようにして絵描きになったのかと尋ねると、その絵描きは「絵の具の匂いが好きなんだ」と言った。

    ・書くことについて私が知っているわずかなことの一つに、一回一回、すぐに使い尽くせ、打ち落とせ、弄べ、失え、ということがある。本の後のほうで、または別の本で使おうと思うな、取っておくな、ということだ。出すのだ。すべてを出し切るのだ。いますぐに。あとでもっと適当なところに使うためにとっておきたいと思う衝動こそ、いま使え、というシグナルである。もっと他のこと、もっと良いものは、あとで現れる。これらは後ろから、真下から、まるで湧き水のように満ちてくる。同じように、あなたが手に入れたものを自分だけのためにとっておくのは、恥ずかしいことであるばかりでなく、破壊的なことである。あなたが自由に、ふんだんに与えようとしないもの、それは消えてなくなってしまうものだ。金庫を開けてみると、灰になっている。
    ミケランジェロの死後、彼のアトリエで一枚の紙がみつかった。そこには晩年彼が弟子のために書いた言葉があった。
    「描け、アントニオ、描け、アントニオ。描け、時を無駄にするな」

  • 私たちはいまでも、そしてこれからも常に目覚めていなければならない。

  • 8/19 読了。

  • 特に目的もなく、こうして図書館の書棚を眺めながら

    歩いていると

    (本って実は無限にあるのでは…?!)

    と、改めて感心してしまう。

    そしてどの本も

    装丁やタイトルに工夫を懲らし

    「お願いっ!手にとって見て下さい。」

    なんて嘆願している様にも思えてしまう。

    (でも…)

    人は何に惹かれてここから抜き取るきっかけを得るのだろう?

    こんなにたくさんの中からただ一冊を選ぶ理由って…


    (ん!?)


    その本の前で足が止まった。

    シンプルな白い本。

    タイトルは『本を書く』

    もちろん著者の名前に聞き覚えはない。

    手に取る。

    ページを開く。

    最も大切だと思うのが最初の一行だ。


    プラトンの言葉

    「もし人が美そのものを見る事ができたら?

     純粋で無垢で死ぬ運命や人生もろもろの

     汚れやしみや虚栄からの自由で不変で

     神々しい美、そのものを。

     人はその時神の友になり、彼自身、不死の身になる。

     …そのように生きられる生を、おろそかにして

     よいのだろうか?」


    ストンと言葉が心に落ちた。


    情報氾濫の今の世にあって

    人伝に聞いた本なら間違いなく、面白い本なのだろうけど…

    そんなパターンばっかりじゃ

    ちょっとつまらないな、と私は思う。

  • 717夜

  • 書けそうもないことを書きなさい @千夜千冊 by 松岡 正剛

  • 本を書くという事についての態度、考察
    働けど働けど我が暮らし楽ならず。そういうこと。空白が私に書く事を教えてくれる。タブローで仕切られた空白が。

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著者プロフィール

アニー・ディラード[Annie Dillard]
1945年、アメリカ、ペンシルヴェニア州ピッツバーグに生まれる。63年、ヴァージニア州のホリンズ・コレッジ英文科に入学。大学2年のとき、教授のリチャード・ディラードと結婚。88年に、H.D.ソローの研究家であるロバート・リチャードソンと三度目の結婚。作品には本書の他に、少女時代の回想を語った[An American Childhood](1987、邦訳『アメリカン・チャイルドフッド』パピルス)、ピュリッツァー賞を受賞した[Pilgrimat Tinker Creck](1974,邦訳『ティンカー・クリークのほとりで』めるくまーる社)、[Teaching a Stone to Talk](1982年、邦訳『石に話すことを教える』めるくまーる社)、他。自然に対する深い感覚と精緻なスタイルを備えたその作品は、ヨーロッパ各国にも翻訳され、きわめて高い評価を得ている。

「2022年 『本を書く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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