- Amazon.co.jp ・洋書 (40ページ)
- / ISBN・EAN: 9780099432951
感想・レビュー・書評
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幼い女の子とミスター・ラビットというウサギのお話。
「ミスター・ラビット、手を貸して」
という少女の言葉で始まる。この状況よくわからないけれども、とにかく始まる。
その日は少女のお母さんの誕生日。彼女はお母さんにプレゼントをあげたい。でも何をあげればいいかわからない。そこで、なぜかウサギに相談をもちかけたわけだ。
1人と1羽は、お母さんが好きなものについて話し合いながら、プレゼントを探しにでかける。こんなふうに。
「赤色が好きだよ」と少女はいった。
「赤色」とミスター・ラビットはいった、「赤色はあげられないな」
「赤い物だよ、たぶん」と少女はいった。
「ああ、赤い物」とミスター・ラビットはいった。
「何が赤い?」と少女はいった。
「そうだな」とミスター・ラビットはいう、「赤い下着があるよ」
「いや」と少女はいう、「それはあげられない」
と不思議な会話がつづいていく。けれども着々と、お母さんが好きな色を帯びた物は見つかっていく。そしてそれはみな果物だ。りんごと洋梨とバナナとぶどう。
「あと必要なのはバスケットだよ」とウサギは助言する。
「バスケットならもってる」と少女。
そのバスケットに果物を詰める。
「さようなら。よい誕生日と幸せいっぱいの果物をきみのお母さんに」
そう言い残してウサギは立ち去る。
本書の絵を描いているあのモーリス・センダックの絵も奇妙なら、この物語も十分に奇妙。そもそもどうしてウサギ!?
ウサギで思い出すのは、キリスト教の復活祭。豊穣の象徴。ウサギの存在そのものが少女のお母さんの誕生日を祝福している!?
それ以外に何かないかと思って調べたがそれしかなかった。調べる過程でちょっと面白い歴史的事実を発見。有名なのかも知れないけど少なくとも自分は全然知らなかった。
以前レビューしたショーン・タンの絵本に「ウサギ」というのがある。これは英国からの植民者たちの象徴として、ウサギたちがオーストラリアと思しき大陸を侵略しにくる話だ。
が、これはあながち想像の物語ではなかった。
というのは、英国人はオーストラリアに入植した際、狩の獲物としてウサギを持ち込んだ。それを野に放したところ、異常繁殖し、現地の生態系をはげしく破壊したのだそう。詳細をみるコメント0件をすべて表示