Ubik (Vintage)

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  • Amazon.co.jp ・洋書 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9780679736646

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  •  読心術や予知能力という超能力をもつグループとそれらの能力をキャンセルしてしまう能力をもつグループという対比、死んだ人が完全に死にきるまで半死の状態にあって、面会してコミュニケーションがとれる施設、こうした興味をそそる材料に期待をもったが、’Ubik’は一体だれのリアリティが本物なのかということのみを原動力として展開していく、いってみれば面白い食材を使っているのにできあがったものはそれらが生かされていない料理という印象を受けた。また多くの登場人物がでてくる中、私はだれ一人についても興味をもてなかった。たとえば主要人物であるジョー・チップとランシター。雇用者と被雇用者の関係にある二人はそれ以上に信頼関係をもっているということが途中でわかるがそれを示す伏線はないし、ジョー・チップが物語の主人公であるらしいということさえ私はグループがLunaに遠征にいってから(5章、全体の4分の1を過ぎたところ)初めてわかった。ディックはこの小説の構成、ノリを途中で変更し、変更に応じて最初の数章を書き直すことをしなかったのではなかろうか。
    機械で制御された融通の利かない装置、時間の進行、収縮が原因で異常な現れ方をする事象や人物の変化などに未来小説独特の雰囲気は巧みに描かれていて、このあたりがディックファンをファンせしめているのかも知れない。手塚治虫の「火の鳥 復活編」を彷彿とさせるイメージ喚起力のある無機質な世界のムードは嫌いじゃない。しかし’Ubik’が発表されてからのこの40年間、特に映像という表現手段で無数の未来社会が描かれ、40年前は遠く親しみのない無機質な社会が身近になって私たちはそれをふつうのものとして受け入れるようになった。少なくとも私はそういう意味で未来社会の描かれ方に「スレて」しまっている。
    そんな今でもディックファンはディック作品をレトロ趣味以外で評価できるのだろうかという疑問はもってしまった。

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