Other Voices, Other Rooms (Vintage International)

著者 : TrumanCapote

• Vintage (1994年2月1日発売)

感想・レビュー・書評

[さんの感想 · 2005年12月17日]

少年を主人公とした、幻想的な物語。頻出するゴシック的要素は妖しく美しいだけでなく、反復される転倒や不一致のモチーフと相俟って、アイデンティティに関するこの物語の中心的テーマを示している。物語の最後、結局屋敷へ回帰していってしまう主人公は、その一見ポジティブな描かれ方とは裏腹に、どこへも辿り着かない。無論この時代のアメリカ作家が単なる成長物語を書くわけはなく、表面上のポジティブさは故意のポーズと考えられ、その点では一貫した物語となっている。一方で、閉じられた回帰のプロットは自閉的な印象を与え、そのために、繰り返されるモチーフが効果を損ねられ、冗長に感じられる。とはいえ基本的にはカポーティの文体は嫌いではない。