「色」と「愛」の比較文化史

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (396ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000027816

作品紹介・あらすじ

本書は、近世の男女の性的な関係を徴す「色」の意識を引きずったまま、近代に立ち至った文学者たちの「愛」の理念との衝突、そして葛藤が引き起こす心性の局面を鋭く論じたものである。

感想・レビュー・書評

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  • 尾道市図書館で読む。
    明治期に「愛」が西洋から輸入されて「色」を駆逐した過程を文学作品から分析している。よい本です。

  • 近代において西洋から日本に伝えられることになった「恋愛」をめぐる諸問題を、坪内逍遥から森田草平に至るまでの文学作品を手がかりとして考察している本です。

    著者は、精神と肉体、愛と性欲の二元論的な区別が、尾崎紅葉や二葉亭四迷、森鴎外らの作品の中で扱われてきたことをたどるとともに、そうした区別に基づいて前近代的な「色」の価値観を批判する論者たちが陥った問題を批判的な観点から示すものとして、泉鏡花の作品に高い評価を与えています。さらに、理念的な「恋愛」によっては解決することのできない、現実の中で生きる男女の「孤独」を追求した作品として、夏目漱石の『行人』や『門』、『こころ』などの作品についての考察がおこなわれます。

    また著者は、森志げの『あだ花』や大塚楠緒子の『空薫』、田村俊子の『露分衣』、さらに樋口一葉の作品など、女性作家たちによって描かれた男女の姿に、「恋愛」のイデオロギーからの自由を見出し、森田草平の『煤煙』に「虚」と「実」を区別することの不可能性が示されていると主張します。

    本書を読むよりも先に「江戸幻想」に対する小谷野敦による批判を知ったので、ある程度懐疑的な視点を持って読み始めたのですが、確かにユング心理学的な「聖」と「娼」の結合という発想が本書の議論のバックグラウンドにあることは認められるものの、文学作品を題材に近代日本の「恋愛」をめぐる言説をたどった本として興味深く読みました。

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著者プロフィール

1961年生まれ。同志社大学大学院社会学研究科教授。専門は比較文化史。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了(学術博士)。国際日本文化研究センター客員助教授等をへて、現職。著書に『遊女の文化史(中公新書)』、『「色」と「愛」の比較文化史』(第20回サントリー学芸賞、第24回山崎賞、岩波書店)、『「女装と男装」の文化史』(講談社選書メチエ)、『明治〈美人〉論』(NHKブックス)、『美少年尽くし』(改訂版、平凡社ライブラリー)、『男の絆の比較文化史』(岩波書店)ほか。

「2022年 『「専門家」とは誰か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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