十二世紀ルネサンス: 西欧世界へのアラビア文明の影響 (岩波セミナーブックス 42)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000042123

作品紹介・あらすじ

地中海文明の周縁に位置していた西欧は十二世紀に至って文化的興隆を開始する。それには、この時期にビザンチン文化やイベリア半島のアラビア文明と出会い、そこに継承されて来たギリシアの学問を、ラテン語への翻訳活動を通じて摂取し発展させたことが大きく寄与している。本書はその実態を科学・哲学・文学にわたって検証する。

感想・レビュー・書評

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  • 1993年刊。著者は国際日本文化研究センター教授。東京大学名誉教授。
     岩波セミナーでの講演録から起こした書。


     世上「暗黒の中世」と評されて久しいが、それは俗に言う「イタリア・ルネサンス」の過大評価に起因するものであり、実際はそれに先立つ十二世紀、西欧はアラビアから、当時の最新知見やギリシア哲学等を、アラビア語からラテン語への翻訳を通じて吸収していた。
     これを簡明な語り口で解説していく。

     その情報の流入地はキリスト・イスラム文化の結節点たるスペイン、貿易商人の集う北イタリア、シチリア(ノルマン≒ヴァイキングが支配)を核に。
     近代科学の合理性の淵源をこの十二世紀ルネサンス、アラビア文化(そこに含まれるギリシャ)の接受に求めつつ、その後のルネサンス、科学革命における西欧知識人の創造性の意義をも忘れていない点は、本書のテーマからイタリアルネサンス等が外れているものの、著者の公平な観点を感じさせるところだ。

     なお、文化・文明の流入における大学と、そこで行われる翻訳の意義(勿論、外国語学習の意義が含まれる)は、当時の固有事情ではなく、現代にも通じる視座のようだ。

  • (1995.01.25読了)(1994.02.05購入)
    西欧世界へのアラビア文明の影響
    (「BOOK」データベースより)amazon
    中世の真っ只中、閉ざされた一文化圏であったヨーロッパが、突如として「離陸」を開始する十二世紀。東方からシチリアへ、イベリア半島へ、ギリシア・アラビアの学術がもたらされる。ユークリッド、プトレマイオス、アル=フワーリズミーなどが次々とラテン訳され、飛躍的に充実する西欧の知的基盤。先進的アラビアとの遭遇が生んだ一大転換期を読む。

    ☆関連図書(既読)
    「科学と現実」伊東俊太郎著、中央公論社、1981.12.20
    「比較文明」伊東俊太郎著、東京大学出版会、1985.10.01

  • ヨーロッパ中世における、ギリシア哲学・思想復興の重要な契機となった「12世紀ルネサンス」が、アラビア文明におけるギリシア文化の保存と発展が無ければありえなかったということを強調している。比較文明史的視点もさることながら、12世紀当時の知識人に対する言及も門外漢にとっては非常に参考になるものだった。

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著者プロフィール

伊東俊太郎
1930年東京生まれ。東京大学文学部哲学科卒業。Ph.D.(科学史・米国ウィスコンシン大学)。東京大学教養学部教授、国際日本文化研究センター教授を経て、東京大学名誉教授・国際日本文化研究センター名誉教授・麗澤大学名誉教授。日本科学史学会会長(2001-09年)、日本比較文明学会名誉会長、国際比較文明学会名誉会長。著書『文明と自然』(刀水歴史全書、2002年)、『十二世紀ルネサンス』(講談社学術文庫、2006年)、『近代科学の源流』(中公文庫、2007年)、『新装版 比較文明』(東京大学出版会、2013年)など。共著『思想史のなかの科学 改訂新版』(平凡社ライブラリー、2002年)など。全集『伊東俊太郎著作集』(全12巻、麗澤大学出版会、2008-10年)。2020年文化功労者。

「2022年 『人類史の精神革命』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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