1989年刊。著者はフェリス女学院大学文学部教授(東京大学名誉教授)。
フランス革命に関するセミナー講演の収録書。
著者はいわゆる段階史観は採らず、また革命を近代社会の画期だけと捉えるのでなく、さらにブルジョワ革命と措定するだけでもない。
フランス革命の期間というのは、一般的な名士会開催からナポレオンクーデターまででも僅か13年間である。
本書は、その間ですら関係者の見解、立場・利害が変遷し、かつそれらは単純な二項対立と違い、都市と地方、地方毎、貴族・聖職者とそれ以外、民衆とブルジョワジー他多様な関係者の合従連衡と反発のもとで推移したとみる。
本書がその中でも重要視するのは、民衆運動と各ステークホルダーや議会内党派との関係である。時期と場合によっては反革命(=貴族)がこの民衆運動を利用する場合もあって、一筋縄ではいかない革命の推移を物語る。
このように非常に多様かつ細かな切り口で解説するので、
① ある程度仏革命の展開の概略を知っておいた方が頭に残りやすい。
② 基本的考え方がⅥ章で示されるので、Ⅵ→仏革命の具体的展開を叙述するⅢ・Ⅳ・Ⅴを経て、革命要因論のⅡ、著者の仏革命解釈の基本視座のⅠで読むと、割と判りやすいかもしれない。
という点に注意すべきか。