- Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000050487
感想・レビュー・書評
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災害社会学のテキスト
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東北・太平洋沖大地震による被害の恐ろしさを目の当たりにして、震災対策のまとめを作るためにとりあえず買って読んでみたもの。地震に対する「防災力」をどう考えていくかから始まって、復興までをしっかり取り扱っていて、バランスはよいと思われる。
著者は「震災」というと、報道にのりやすい地震による家屋倒壊、避難生活etcのイメージが強いが、震災報道が終わった後も数年以上のスパンで続く復興までのプロセスがすべて「震災」だと捉える。これは、実際に被災するかそれに密着するかでしか獲得しにくい視点で、気づかされるものがあった。
ただし、この本は「防災力」とは何か、そしてそれを高めるには、ということを阪神・淡路大震災などを例にとって一般的に捉えることがメインとなっており、いわゆる震災ハウツー本ではないことに気をつける必要がある。そういった点からすると初めにに挙げた目標に合致した本ではなかったが、各人が防災力を高めるための土台として読んでおいて損はない内容である。
しかし、南三陸地震も東海、南海、東南海の地震3兄弟とともに予想されていたことが書かれているが、それにしても今回このような壊滅的被害を受けることになったのは衝撃的過ぎる。阪神・淡路大震災以上に厳しいことが考えられるが、復興を祈りたい(募金くらいでしか協力ができてないが…)。
また、東海、南海、東南海の地震3兄弟も2035±10年ごろには起きることが確実視されている。さらに、この兄弟と富士山くんはもちろんお知り合いである。これらの想定される大地震(+噴火?はまじ勘弁してもらいたいが)に向けて、最悪の場合を想定して防災力を強化していくことがこれからますます必要になってくるだろう。「今回のは強すぎたから想定外でした」とか「なにぶんはじめてのことで」といった逃げ口上で未来の被災者を増やさないために。「被害を出さないために投じた災害前の一ドルは、災害発生後に必要となる七ドルに相当する」という警句を心に刻みたい。