「知」の欺瞞: ポストモダン思想における科学の濫用

  • 岩波書店
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感想 : 38
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000056786

感想・レビュー・書評

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  • 宮部みゆき先生が新聞書評で紹介されていました。

    ポストモダン思想において、科学の用語法が不適切に濫用されてるということそのものより、その背景にある、「科学」に対する認識のゆがみの方が実は重要な問題だと思います。

  • ★まさに爽快!★不勉強にして存在を知らなかったが、まさに欲しかったのはこんな内容だった。現代思想はなぜ、分かりにくくするための比喩が多いのか。それも通常の人間が理解できない自然科学系の例えが、と長く思っていた。反論するだけの知識がないので傍観するしかなかったが、自然科学の研究者である著者は、それがいかに誤解に満ちたものであるかを地道に説明する。すべてを理解できたわけではなかったが、思想家の底の浅さが露呈する爽快感は素晴らしい。建築でもこうしたけむに巻く議論が少なくなく、難しいことが言える人間の設計が(形はともかく)良い、となりがちなだけに、こうした衒学的な議論が消えることを切に望む。「知の欺瞞」という題名も悪くはないが原題(?)の「Fashonable Nonsense」の方がより本質を突いている。

  • 「ソーカル事件」と呼ばれる、ポストモダニズム界への物理学者の殴りこみ事件が、ソーカル自身によってまとめられています。

    事件の概要としては、まずソーカルが、「ソーシャル・テキスト」という代表的な学術雑誌に、『物理を専攻する学生なら誰でもすぐに指摘できるような数学・物理学上のでたらめの数々と、生半可な科学知識からの短絡的一般化とをつなぎ合わせた粗雑なパッチワーク』からなる論文を投稿し、見事掲載されます。
    その後、別の雑誌の誌上で、「ソーシャル・テキスト」に掲載されたパロディ論文について、ネタばらしをするという内容になっています。

    本書では、パロディ論文を作成する際に“引用”した、ラカン、クリステヴァ、イリガライ、ラトゥール、ボードリヤールなど、代表的なポストモダニストの言説について、詳細に突っ込みを入れています。
    また、「ソーシャル・テキスト」に掲載された論文の全文も含まれていますので、事件の詳細は、これ1冊で理解できると思います。


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    ソーカルの主張を一言でまとめると、「知ったかぶりをするな」だと思います。

    完膚なきまでに叩きのめしちゃダメだと思うんですが、ある意味、別領域の誰かがやらなきゃ、きっと誰もやらなかったと思うので、これはこれでありなのかなぁ。

  • 科学の真理の普遍性も相対主義で崩そうとする悪しき観念を潰そう、というのと人文学系の大物達が科学用語を文脈と合わない所で使ったりして、自分の言説をかっこつけようとしているのを叩こうという、っていうのがソーカルの真意かな。

  • 個々の批判内容よりも、本職の物理学者が考える科学哲学的論点の主張が読み応えがある。「第一の間奏」、「第二の間奏」がお勧め。

  • 科学をめぐるポストモダンの「言説」の一部が「当世流行馬鹿噺」に過ぎないことを示し、欧米で激論をよんだ告発の書。名立たる知識人の著述に見られる科学用語の明白な濫用の数々。人文系と社会科学にとって本当の敵は誰なのか?著者らが目指すのは“サイエンス・ウォーズ”ではなく、科学と人文の間の真の対話である。(工学分館HPより)

    ◆◇工学分館の所蔵はこちら→
    https://opac.library.tohoku.ac.jp/opac/opac_details/?reqCode=fromlist&lang=0&amode=11&bibid=TT21159584

  •  当時の人文系哲学に辛辣な鉄槌を下した「ソーカル事件」を起こした著者の主著。

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  • 数学や物理学の用語を、その意味を無視して、また、その意味を理解できないのに、やたらと使いたがる人文科学や社会科学の研究者を批判した本。個別に章を設けて批判されているのは、ラカン(第2章)、クリステヴァ(第3章)、イリガライ(第5章)、ラトゥール(第6章)、ボードリヤール(第8章)、ドゥルーズとガタリ(第9章)、ヴィリリオ(第10章)。主にフランスの有名な知識人(ポストモダニズムの哲学者、社会学者、思想家)だそうだ。ラカンの名前は辛うじて聞いたことがあるものの、それ以外は名前も知らなかった。これらの人々の著作から批判のために引用された文章は、なるほど数学用語や物理用語らしいもので飾り立てられているが、全く意味不明。エネルギーと質量の等価性を表す特殊相対性理論の有名な式についてのイリガライの意見(147~148ページ)は、一番の傑作だった。この式は、最高速のもの(つまり光)を特権化していることから、性化された署名が入っている可能性が示唆されるのだそうだ。伊勢田哲治「疑似科学と科学の哲学」、ドーキンス「虹の解体」の参考文献。

  • 借り物

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