アストロバイオロジー: 宇宙が語る〈生命の起源〉 (岩波科学ライブラリー 147)

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  • Amazon.co.jp ・本 (122ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000074872

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  • 地球外生命。これは人類の永遠のロマン。
    はたして本当に存在するのか?
    そこに、過酷な宇宙空間を経て存在する生命があるのであれば、
    それは原始の地球を再現しているとして、地球生命の起源を
    求めるのは無理からぬことであるけれども、
    はたして原始地球と、惑星の衛星の環境が同じなのかどうなのか?
    しかも、地球での生物学的常識を、他の星にあてはめてもよいのか?
    そういう議論は、この手の本には見られないので、いつも違和感を感じるのだが。

    考えさせられる部分は多々あり、そういう意味からは楽しめる書物に違いない。

  • ブックレット的な体裁に反して内容は濃い本。

    ・生命の本質的な特性の最大公約数。1.代謝を行う、2.自己複製を行う、3.外界との境界をもつ、4.進化する
    ・すべての生物が代謝のためにタンパク質を使い、自己複製には核酸を使う。タンパク質の合成にはどの生物も同じ20種類のアミノ酸しか用いない。DNAは共通の4種のブロックから成り、その並び順の違いのみが生物種の多様性を産み出す。地球上の生物は共通の祖先を持つことを強く示唆している。
    ・RNAで使う糖であるリボース、DNAで使う糖であるデオキシリボース。これらを作るのが難しい。
    ・35億年よりも古い微化石は見つかっていない。しかし、堆積岩中の炭素13の割合を調べたところ、38億年前にはすでに生命が誕生していた可能性が強く示唆された。
    ・最後の共通祖先(コモノート、LUCA。十分複雑)以前の生命は何だったのか?これは現在の地球分子生物学では答えようがない。
    ・トップダウンアプローチ(生物進化をたどる)、ボトムアップアプローチ(化学進化を再生する)
    ・生命の起源固有の謎。炭素数2,3,5、6のアミノ酸はタンパク質に含まれるのに、4のアミノ酸は一つもタンパク質に使われていない。
    ・長野県の野辺山天文台では星間分子の発見に活躍している。
    ・地球を食べる生物たちのエネルギーは、メタン、硫化水素、水素、アンモニア、鉄イオンなど。
    ・生命を探す顕微蛍光法
    ・海底熱水噴出孔モデルの実験では、アミノ酸の合成や細胞乗の構造体を作ったという報告がなされている。ここが地球生命の故郷である可能性は高い。
    ・ゴミ袋ワールド説、金属イオン進化説、がらくたワールド説
    ・好塩菌、好酸性菌、好アルカリ菌、好放射線耐菌。成層圏にも生きた微生物。

  • 生命の起源を宇宙に求めよう、というアストロバイオロジーの話。とても短いので、すぐ読める。
    まず衝撃的だったのは、地球の生物は「真正細菌」「古細菌」「真核生物」の3つしかいない、という分類の仕方。。。それだって、DNAがあってたんぱく質を生成して基本は全部一緒だから、地球には生物は1種類しかいない、と。なんとおおざっぱな!と思ったのだが、読み進むうちに非常にしっくりしてくる。
    なにしろ、アストロバイオロジーは宇宙規模。そこからしたら地球の生き物なんて全部同じ、宇宙には全然違うやつらがいるはず。で、アミノ酸とか、DNAの元になるような分子とか、かなり小さなものを探し回っている。

    地球でだって、分厚い氷の下だとか、超高温とか超酸性とか太陽の光が届かないとか放射線がキツイとか、これまで絶対なんかが生きるのは無理と思われていたところでも、遍く生物が生きてる。タイタンやエウロパには液体の海と大気があるし。。。などと言われると、「いるな、タイタン」とすんなり思えてしまうから不思議だ。

    それにしても、生命の起源を調べて一体何になるというのか。タイタンになにやらの原始的な生物がいたとして、だからなんだ?
    しかし、この壮大にお金と時間のかかる研究の行く末が、非常に気になることも、また確か。私が生きてるうちに、なんか見つかるといいな~。

  • 天動説である「地球生物学」から、地動説である「アストロバイオロジー」へ。最新の惑星科学の知見をもとに「生命」の一般化を図ろうとするこの壮大な学問分野について、やさしく丁寧に、かつ過不足無くまとめ上げた一冊。名著です。

  • 隕石から数多くの情報が得られる事に驚かされた。生命の謎の迫る一つの手段としては面白い。

  • 宇宙から生命の種が来たパンスペルミア説はもちろん、地球の常識で他の星の生物を考えてはいけないと言う生命の地動説まで分かりやすく書かれています。他の星にはどのような生物がいるのかその検出方法はや、地球生命はどのように発生したのか等興味深い内容で楽しめました。

  • 19世紀、パストゥールの“白鳥の首フラスコ”の実験によってアリストテレスの生物自然発生説に終止符が打たれると同時に人類を悩ませ始めた謎──生命はどうやって誕生したのか。1920年代に提唱されたオパーリン/ホールデンの化学進化論と'53年のミラーによるメタン・アンモニア・水からのアミノ酸生成実験、同年ワトソン/クリックのDNA二重螺旋構造の発見により始まった分子生物学とその発展、そしてボイジャー・ヴァイキング等による太陽系探査によって明らかにされつつある生命誕生の条件。本書は、未だ道半ばのアストロバイオロジー(宇宙生物学)のこうした歩みを化学の門外漢にも理解できる平易さで紹介しつつ、未来に開かれた展望へと読者を誘う。現在、1億種あまりといわれる地球生物はすべて“コモノート”と呼ばれるたった一つの共通祖先から始まったという。DNAをもとに自己複製を繰り返す核酸生物という点で、地球上にはたった1種類の生命しか存在しない。アストロバイオロジーの発展にともない、様々な環境下で他のタイプの生命が誕生しうる可能性が模索される。生命の定義すら書き換えを迫られるような未知の生命との出会いにロマンが掻き立てられる。

  • 生物学的に生命の誕生と進化について書かれた本。
    一部、(私には)専門的すぎる記述があるが、専門外の読者にとっても興味深い。

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著者プロフィール

小林憲正

1954年愛知県生まれ。82年東京大学大学院理学系研究科化学専攻博士課修了。米国メリーランド大学化学進化研究所研究員、横浜国立大学大学院工学研究院機能の創生部門教授などを経て、現在、横浜国立大学名誉教授。著書に『アストロバイオロジー』(岩波書店、2008)、『生命の起源』(講談社、2013)、『宇宙からみた生命史』(ちくま新書、2016)ほか

「2021年 『地球外生命』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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