愛国心を考える (岩波ブックレット NO. 708)

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  • Amazon.co.jp ・本 (71ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000094085

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  • 偏らない簡潔なまとめ。愛社精神との比較(III章前半)も分かりやすい。

    【版元】
    テッサ・モーリス=スズキ 著
    通し番号:78
    刊行日:2007/09/05
    ISBN:9784000094085
    A5 並製 72ページ
    在庫:品切れ

    「君は国のために死ねるか?」という問い.愛国心を問うときにたびたび登場するこの問いは,果たして正しいのか.「愛国」という言葉の起源から,その言葉の使われ方をひもとき,田中正造,小林トミ,ヴァレリー・カウアなどそれぞれの時代にそれぞれの国を思って行動した人々の姿から,愛国心の危険性と可能性を考える.

    ■編集部からのメッセージ
     ここ数年、愛国心をテーマにした本が次々と話題になりました。ときに排他性を帯び、ときに周囲との一体感を昂揚させるこの愛国心という感情。その感情とどう向き合うのか、これは大きな課題だと思っています。私自身、その名のもとに過去にどのようなことが行われたかを考えたとき、そして自分のなかにその感情を発見したとき、どうしても、それらを「いい」愛国心と「悪い」愛国心に分けて考えることによって,自分を守ろうとしていました。
      このブックレットは、「愛国心」の内実は百人いれば百通りあるということ、排他性も国をよりよくしようとする努力も、まぎれもないその感情の発露の双貌なのだということ、そして何より、その感情は人に押し付けられるものではなく、その内実も含めて自らが選び取るべきものだということ、など、さまざまな示唆を与えてくれます。
     多くの方に手にとっていただけるよう願っています。
    (ブックレット編集部・山川良子)
    https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b254246.html

    【目次】
    関連年表 [表紙裏]
    目次 [001]

    I なぜ,いま愛国心か 002
       愛国心と九・一一/日の丸・君が代と愛国心教育

    II 愛国心の起源 008
       愛情とイデオロギー/宗教,国家,愛国心/革命を起源とする愛国心/下からの愛国心が上からの愛国心に変わるとき

    III 愛国心と近代国家 018
       愛情と忠誠心/愛国心,ナショナリズム,ジンゴイズム

    IV 近代日本の愛国心 028
       上からの愛国心/国民精神総動員運動/愛国心と帝国/戦後の愛国心論争

    V 行動で示される愛国心 041
       愛国心という化け物/田中正造/違星北斗/小林トミ/ヴァレリー・カウア/国境を超える愛国心

    VI グローバリゼーションの時代の愛国心 056
       愛国心と安全/愛国心と恥の感覚/愛国心,ネーション,個人/愛国心と教育/愛国心と平和

    引用文献 [069-071]

  • 「『愛国心』入門」といったところ。ブックレットですからすぐ読めます。しばしば見かける「良いナショナリズムと悪いナショナリズムの二種類がある」というとらえ方を批判した上で、国境線の内側(の利益)だけにとどまる排他的で偏狭な「愛国心」ではなく、国境線を超えていく「グローバリゼーションの時代の愛国心」の必要性を説いています。議論としてはわかりやすいですね。おおむねうなずきながら読んだわけですが、国境線を超えていくというコスモポリタニズム的「愛」は、それでもやっぱり「愛『国』心」と呼ばれなければならないようなもの、なのでしょうかね。(現代日本語の)「国」という言葉から少し離れて、コスモポリタニズム的な「愛」をとらえた方がよいんじゃないでしょうか。訳語の問題かもしれませんが、私はその点に少し引っかかりを感じました。とはいえ、これは読みやすくていい本だな、と思います。高校生くらいの人にも勧めたいですね。(20071002)

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著者プロフィール

テッサ・モーリス=スズキ(Tessa Morris-Suzuki)
1951年イギリス生まれ。英ブリストル大学卒業、バース大学大学院博士号取得。現在オーストラリア国立大学教授。専攻は日本経済史、日本思想史。
著書に『日本の経済思想』『自由を耐え忍ぶ』『過去は死なない』『愛国心を考える』(以上、岩波書店)、『辺境から眺める』(みすず書房)、『批判的想像力のために』(平凡社)、『北朝鮮へのエクソダス』(朝日新聞社)、『北朝鮮で考えたこと』(集英社)、『レイシズム・スタディーズ序説』(共著、以文社)ほか多数。
2013年第24回福岡アジア文化賞、学術研究賞を受賞。

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