- Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000223560
感想・レビュー・書評
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「いいなずけ」という制度があった。大阪の商人の娘だった岡部伊都子は、あこがれてきた青年と約束を交わし、出征し、戦死してしまった青年の「こんな戦争で死ぬのは…」という言葉にうなずけなかった。
市井の思想家「岡部伊都子」を苛み続け、支え続けてきたのは、その一事だった。
戦死した兄や、許婚を戦地に送り出した、50年にわたる自己批判の人生。穏やかで、かつ、厳しい文章の中に漂う気迫。「ほんとうのこと」、「嘘でないこと」を追い求め続けた岡部さんもなくなって久しい。
忘れてしまってはいけない、そんな人間の生き方がここにある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
岡部先生の半生は「私は加害者である」をずっと背負ったものだった。
非を認めて生き続けることよりも、死を選んで帳消しにする、言い方をとてもとても悪くすればこの国にはそう言った習慣があり、美学として語られることが多い。岡部先生が木村さんに放った加害はたった一言の言葉だけれども、彼女は半生を尽くし彼と、土になった彼の骨に対して寄り添ったのですね。同じ時代に、「お国の為だ」と狂信し死に追いやった人、一億総玉砕の先駆けとして飛行機に詰め込まれ追いやられた若者、終戦後、それを忘れることは出来ずとも生活の中に埋もれていっただろう「加害の意識」。死や辞を未だ覚悟の最もたる姿と認識する習慣はこの国にある。そしてそれは間違いではないと思います。ただ、背負い寄り添って「加害」と生き続けることはきっともっと難しい。別の本で、昭和天皇の沖縄に関するお言葉を呼んだり、今まさに争われる基地問題に触れ、沖縄を思うならば、戦後復興と言う言葉は安易に使うことの出来ないものだと思い知らされました。
沖縄史、もう少し掘り下げてから再読をしたいと思います。