報復ではなく和解を: いま,ヒロシマから世界へ

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000247528

作品紹介・あらすじ

被爆六〇年を前に、「憎しみの連鎖」に囚われ、ますます不安定化していくかのような世界。今こそ「人間であり続けた被爆者」の方々の尊い生き方に学ぶべきなのではないでしょうか。広島市長として、世界に向けて「ヒロシマの心」を訴え続けてきたスピーチの中から、特に反響の大きかったものを収録しました。日英対訳による平和宣言や「平和宣言の作り方」も併録。「パシュラル先生」シリーズで人気の絵本作家、はらだたけひで氏による描き下しの挿画と合わせて、未来の破局を避けるために、いま、あらゆる人に噛みしめてほしい、一冊です。

感想・レビュー・書評

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  • 広島市長の秋葉さんって、もと通訳ということしか知らなかったけれど、被爆者でなく広島出身でもない。選挙で選ばれた市長として被爆者でない人々が果たさねばならない責任を象徴しているという。「ヒロシマの心」を訴え続けてきたスピーチを集めた本書では、被爆者の人々が自殺しても不思議はない境遇にありながら生きることを選んだことに対する感謝、つらい記憶を何度も語ってくれていることに対する感謝、報復の連鎖を断つ取り組みをしていることに対する感謝が語られている。事実そのおかげで長崎以降、実戦で核兵器が使われたことはない。タイトルにあるように報復ではなく和解をめざす活動が実を結んでいるといえる。
    それなのに今になってプーチンが核の脅威をちらつかせていることを筆者(広島市長は2011年まで)も被爆者の方々もどんなに悔しい思いで見ているだろう。
    平和宣言の文案を毎回キーワードをもとに丁寧に練っているということは知らなかった。キーワードの一つ「和解」の考え方は本当に有益だと思う。仲の悪いインドとパキスタンがそれぞれ自国は平和を愛する国だからこちらから戦争を仕掛けることもなければ核を使うこともない。カシミール問題の経緯はこれこれで、悪いのは向こう。と言っている場合、インドの説明を聞けばパキスタンが悪いように思えるし、パキスタンの説明を聞けばインドが悪いように思える。この状況で人間が本当にすべての事実を知ったうえで正しく判断することは不可能なので、まずは、そんなことを言っていたら状況は改善されず戦争で死ぬ人もなくならない。過去の清算にこだわっていたら何もできないので、とりあえず人類全体が協力することなしに次の世代は先に進めないという前提で、それを最優先してともかく小さな協力から始めようという考え方はとても現実的だと思った。ウクライナ戦争でもこのアプローチをすればいいと思うが、プーチン相手では無理?

  • 平和=経済=まちづくり=福祉=文化=環境=科学技術。

    これはなかなかよい。

    以下、引用。

    私たちの当面の目標は核兵器の廃絶ですが、長期的目標はこの地球を「万人のための故郷」に変えることにあります。
    (中略)
    「万人のための故郷」には豊かな記憶の森があり、その森から流れ出る和解と人道の川には理性と良心そして共感の船が行き交い、やがて希望を未来の海に到達します。

    引用おわり。
    さわやかな読後感。読んでよかったなぁ。

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著者プロフィール

1942年、東京生まれ。高校時代AFSによってアメリカに留学。東大理学部数学科・同大学院修士課程卒業。マサチューセッツ工科大学(MIT)でPh.D.を取得後、ニューヨーク州立大学、タフツ大学等で教鞭をとる。世界のジャーナリストを広島・長崎に招待し、被爆の実相を伝えてもらう「アキバ・プロジェクト(ヒバクシャ・トラベル・グラント・プログラム)」の運営に携わり、その後、広島修道大学教授に。1990年から衆議院議員を10年近く務めた後、1999年に広島市長就任。3期12年在職。その後2014年まで広島大学特任教授、AFS日本協会理事長。市長在職中、平和市長会議会長を務め、当初は参加都市数が440ほどであった組織を、約5,000の都市が加盟・賛同する組織に育てる。市政では財政再建、情報公開、市民サービス、都市環境などに力を入れ、暴走族追放条例、新球場建設、オリンピック招致にも取り組んだ。マグサイサイ賞等、多くの賞を受賞。著書に『真珠と桜──「ヒロシマ」から見たアメリカの心』(朝日新聞社)、『“顔”を持ったコンピュータ』(コンピュータ・エージ社)、『夜明けを待つ政治の季節に』(三省堂)、『元気です、広島』(海鳴社)、『ヒロシマ市長』(朝日新聞出版)、『新版 報復ではなく和解を』(岩波書店)ほか。現在、広島県原水禁代表委員。

「2019年 『数学書として憲法を読む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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