監視スタディーズ――「見ること」「見られること」の社会理論

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000258173

作品紹介・あらすじ

人々がさまざまな個人データをもとに振り分けられ、統治される現代社会。ますます発達し、増殖するデジタル社会の監視と管理のシステムは、自由や平等をどのように侵食しているのか。そして、そもそも人間にとって「見ること」「見られること」の意味とは何なのか。本書は、多様な知のネットワークと今日まで蓄積されてきた知見をいかにして現代における監視を理論的・歴史的に深く掘り下げ、批判的に問い直す新たな学問世界、「監視スタディーズ」へと読者を誘う。

感想・レビュー・書評

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  • 社会
    ノンフィクション

  • 本書における「監視」は、広範囲の監視を対象としており、ありとあらゆる監視主体、監視目的、監視手段を含めている。あえて一言で別の言い方をすれば、「監視」とは「社会的振り分け」である。

    商業的には、人々をいろんなデータで振り分けることによって、優良顧客(たくさんのお金を払ってくれる顧客)を見つけ出し、優良顧客とそうでない顧客を差別することにある。

    問題は、本人が認識できないところで振り分けられている可能性である。例として、一定の国籍や宗教の人は、空港で搭乗拒否される可能性がある。インターネットによって、ますます「監視」が行われるようになる。GoogleもFacebookも、利用者を監視している。

    過度に警戒する必要はないと思いつつも、あらためて、「監視」されていることに注意を払う必要があるし、「監視」に対する警鐘はされ続けていく必要があるだろう。

    10月13日、隣人に借りる。12月8日読了。

  • 「監視」へ自ら「参加」していく現代の監視社会

    地下鉄サリン事件の容疑者の逮捕に監視カメラの映像が一躍かったことを想起するまでもなく、それは今はわたしたちの環境に「自明のもの」として存在するものとなってしまった。安全保障の予備的対策という代価は何をもたらすのか、そしてその現状と問題は何か。本書は「見ること」と「見られること」を知のネットワークのなかで基礎付け、現代における監視の意味を問う刺激的な一冊である。

    監視カメラはここ数年に誕生したものではない。設置増加は近年に特異な現象とみることが可能だが、著しく変わったことは数の問題ではない。従来は、警察を初めとする権威が
    個々人を監視するという一方向的な眼差しだったものだが、現在では、それは「双方向」になりつつある。ここでは「プライバシーの保護」なんて問題にならない。その概念そのものが破壊されているのである。

    問題はカメラだけではない。ネット決済でクレジットカードを使ったり、オンライン取引は日常のありふれた光景だ。しかし買い物をしたりするたびに、自分のデータを知らずに「提供する」しているわけでもある。監視システムとはソフトにしなやかに忍び込む。私たちの日常は意識していないだけで、監視と一体化した社会である。一方的な監視から監視へ「参加する」のが現代の特徴と著者は指摘する。

    人々が様々な個人データをもとに振り分けられ、格付けされるのが現代社会の特徴だ。そこで発達する監視・管理システムは、自由や平等をどのように侵食しているか。本書は社会的な変化に注目するだけでなく、映画や小説の中にも表象される「監視の思想」を発見し、分析を加える。

    「監視スタディーズ」は、新たな学問世界への扉を開くと同時に、戦慄すべき告発の一書でもある。

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784000258173

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著者プロフィール

デイヴィッド・ライアン David Lyon
1948年、スコットランド・エディンバラ生まれの社会学者。イングランドのブラッドフォード大学にて学士号および博士号を取得(社会科学・歴史)。カナダのクイーンズ大学社会学教授、同大学サーベイランス・スタディーズ・センター前所長。監視社会論の代表的論者として世界的に知られ、『監視社会』(青土社)、『監視スタディーズ』(岩波書店)など多数の邦訳書がある。

「2022年 『パンデミック監視社会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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