旧約聖書〈2〉歴史書―ヨシュア記・士師記・サムエル記・列王記

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000261821

感想・レビュー・書評

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  • 「歴史書」という表題が付けられているが、実際読んでみると、思った以上に歴史書らしい歴史書である。特にサムエル記と列王記がそうだが、王宮内のスキャンダルや王族同士の争い、王位簒奪、裏切り等々、人間の醜い側面も包み隠さず語られ、旧約聖書が持つ“聖典”のイメージを大きく覆す。
    一応宗教書らしく、歴代の王たちはもっぱら、神ヤハウェに忠実であったか、異教の神々を拒絶したかという視点で評価が下され、政治的業績などはまったく考慮されていない。だがその一方で、戦争や内政・外交など、宗教に直接関連のないこともかなり記述されている。殊にソロモン王に関して言えば、異国の王族との政略結婚や遠国との交易にまでも言及され、興味をそそられる。
    さらに、「解説」にも書かれているように、本書にはいわゆる“聖人”は一人も登場しない。みなどこかしらに欠点を持ち、人間臭い者たちばかりだ。
    その中でも特に興味を引いたのが、ダビデ王の軍の長であるヨアブという人物だ。王の姉の子という地位を良いことに、政敵をことごとく排除。ダビデの息子が反乱を起こした際には、王の命令を無視して彼を殺害した。ダビデには、ヨアブは手に負えぬ危険な男と映っていたようだ。
    しかしヨアブからすれば、情にもろいダビデが少々危なっかしく見えたのではないか。息子の死を嘆き悲しむダビデを見て、ヨアブが叱咤する場面(サムエル記 下 19:6以下)はとりわけ印象的である。ヨアブは、ダビデに代わって汚れ役を進んで引き受け、王を力強く支えているようにも思えるのである。
    宗教も結局、人間が生み出したものだ。宗教そのものにはさほど興味がなくとも、人間に興味を持つ者ならば本書を面白く読むことができるだろう。

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