広島: 戦争と都市 (岩波写真文庫 山田洋次セレクション 復刻版)

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  • Amazon.co.jp ・本 (61ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000282765

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  • 『原爆に夫を奪われて』のなかで、原爆のことを聞こうとせん孫たちに、この写真文庫を見せるんよというのを読んで、復刻版を借りてきた。もとは1952年の8月6日発刊で、100円だった。目次はこうなっている。

    一 天災と戦災
    二 原子爆弾
    三 原爆の傷痕
    四 ノーモア・ヒロシマス

    広島原爆の投下目標とされたT字の相生橋がかかる中島砂州(現在は平和公園となっているあたり)は原爆により壊滅した。巻頭の、かつての中島町の写真には家並みがみえる。広島有数の繁華街だったというこの中島町界隈では8月6日は建物疎開がおこなわれていて、そのために動員されていた生徒たち、また川内村などの義勇隊はほぼ全滅した。この6日が最終日で、義勇隊に出た夫や娘たちは早く帰るとか帰りに映画を見ると言って家を出たと『原爆に夫を奪われて』にあった。

    戦災前の広島の姿と、戦災後の姿とを並べたこの小さな写真文庫が1952年に出ているのは、この年の4月にサンフランシスコ講和条約が発効し、日本が独立したからである。同じ8月6日には「アサヒグラフ」が"原爆被害の初公開"という号を出している。

    原爆の被害について、広島や長崎以外の人が知るのはほとんどこれが初めてだったはずで、占領下では原爆被害の報道が厳しく規制されていた。このことは、文沢隆一が『ヒロシマの歩んだ道』で、被爆からの10年間は被爆者はまったく孤立無援の状態だったと書いていることと無縁ではないのだろう。どんなことが起こったか、原爆によって人間がどうなったかが、報道規制のもとで知られていなかったのである。(2010年4月読了)

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