朱子: 〈はたらき〉と〈つとめ〉の哲学 (書物誕生-あたらしい古典入門)
- 岩波書店 (2009年1月21日発売)
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- Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000282871
感想・レビュー・書評
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朱熹のテクストを読みなおすことを通じて、既存の朱子学のイメージをくつがえすような、朱熹の本当の思想を明らかにする試みがおこなわれています。
本書は二部構成になっており、第一部では朱熹の生涯と彼の生きた時代についての解説にあてられています。とはいっても、概説的な時代状況の説明ではなく、社倉にかんする朱熹の政策提言に焦点をあてています。その背景に著者は、皇帝個人を中心とするパーソナルな人間集団として国家秩序を理解するか、それとも職務と権限というパブリックな機能をもつシステムとして理解するかという対立が当時の中国において存在していたことを指摘します。
こうした議論は、朱熹のテクストを読み解く第二部における議論と密接につながっています。著者は、朱子学における「理」が、国家の実現するべき「事業」を秩序づけて官吏に分担する「職」のあり方と相同的な関係にあることを明らかにしています。こうしたテクストの解釈を通じて著者は、封建的な身分秩序を人びとに強制してきた悪しきイデオロギーであるとする朱子学のイメージを塗り替え、生き生きとしたものとして現代によみがえらせようとしています。
著者のこれまでの研究成果にもとづいた内容で、朱熹の思想を朱熹そのひとのテクストにもとづいて解釈する著者の思索の現場に居合わせているような臨場感をおぼえました。詳細をみるコメント0件をすべて表示