- Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000286428
作品紹介・あらすじ
この世で生きて行くためには、誰でも自分のくらしを支える生業を身につけなければなりません。さまざまな職業があり、働くことのよろこび、かなしみがあります。赴任地から帰京し安堵する貫之、どうやっても上手く行かない時もあると語る世阿弥、何より「正直」を重んじた西鶴…。古典に描かれた「はたらく」人びとの心と姿を探ります。
感想・レビュー・書評
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なぜか気になるこのシリーズ。結局また読んでしまった。
だが、この「はたらく」で編集した久保田氏も反省しているのだが、直接汗水たらした人の言葉があまりなくてそこが残念だと思うと記している。
いつも読書するときは、付箋片手に読むのだが、一度も「貼りたいな」と思った場所はなかった。
いささか無理に配置した場合もあるかもしれないといっているまえがきが一番面白い。
上代文献に「はたらく」ということばの用例がないというところだ。古代の日本人が働かなかったはずはない。「もしかして、多岐にわたる労働を一括して「はたらく」と捉える考え方は、上代もかなり下るまで生じにくかったのであろうか」と「あろうか」という感じで疑問で止まっている。
日本人にとって、古代にとって、労働とは何なのか。かなり気になることを取り上げているようにも思えるのだが。「追う」「釣る」「織る」はある。だが、
「はたらく」がない「上代」。とても気になる……。
あと、世阿弥の花伝の紹介部分で、世阿弥が修行しつくしてこそある「なぜかうまくいかないこと」は「うまくいかないことは仕方ない、身を任せよ」とぶっちゃけるところはリアリティがあってよかったが、これははたらくというか芸の道の話だ。
日本人にとって「はたらく」というのは、二宮金次郎みたいなのを思い浮かべるけれども、もしかしたらなんかちょっと違うのかもしれない。いったいなんだろう。その謎を考えたくなるきっかけにはなった本だった。