ガラン版 千一夜物語(2)

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 77
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000287746

作品紹介・あらすじ

いまや大金持ちになった船乗りシンドバードが貧しい荷かつぎ屋ヒンドバードに語った世にも不思議な七つの航海の話,夫に殺された女性の一件に関わった奴隷に恩赦を与えるために語られた「三つのリンゴ」の話,こぶのある道化の殺人の罪を着せられた三人が面白い話を披露して罪を免れようとする「こぶ男の物語」が語られる.

感想・レビュー・書評

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  • 注)軽くネタバレ有

    「海のシンドバードの話」
    旅好きで全ての海をまわったとされる、莫大な財産の持ち主のシンドバード
    決して楽して恵まれて財産を持っているわけではなかった(もともとはお金持ちだが、散財したっぽい)
    彼の7回もの命がけの壮大な航海が語られる

    毎回帰ってきては「これが最後!」「もう二度とごめんだ」と言い切るのに、また日常生活が退屈になるのか出かけてしまうシンドバード!
    そしてお約束のように不思議な出来事に遭遇し、命を脅かされる恐ろしい目に遭う

    子供のころ読んだことのある話でうっすら記憶があるのは
    島と思って上陸したところが、クジラの背中だった!ってところだけだ
    ピンポイントでここだけ
    これ以上の記憶はまったくない
    が、実際のお話しは盛り沢山であった
    巨鳥のロック鳥、人喰い族、巨人、海賊はもちろん、結婚した伴侶が死んだら生きていても生きたまま埋葬するしきたりの国、取りついた相手を絞め殺すまで離れない老人、象を殺さず象牙を得る方法を見つけるシンドバード…
    いずれにせよ強運でどうやら神に愛される人物ということらしい
    改めてシンドバードを読むと千一夜物語って大人向けだ 子供に伝わるのはある一部分だけなのかも…


    「三つのリンゴ」
    カリフさまと宰相が見つけた大きな櫃
    そこにはなんと若い女性の遺体が…

    病に伏した妻が求めたのがリンゴ
    その愛する妻のため夫はリンゴを探す
    しかしどの市場にも店にも庭園にもない
    バスラの地まで行きようやく、3つのリンゴを手にいれることができる
    ある日夫が店番をしているとリンゴを手にした黒人奴隷の男が…
    何処で手に入れたのか?問いただすと
    好きな人からもらったと言う(しかも仲良く食事もしたらしい)!
    よくよく聞くと紛れもない我が家のリンゴである(あれだけ探しまわってなかったのだから、そりゃそうだ)
    妻にリンゴはどうしたのかと問いただしても「さぁ?」という生半可な返事
    逆上した夫は妻を短剣で刺す

    その後泣いている長男が帰宅
    リンゴを持ち出して遊んでいると大きな奴隷が通りかかりリンゴを取り上げたと言うではないか!
    なんという皮肉なめぐりあわせ!
    まぁその先まで物語は続くのだが…

    とにかく「千一夜物語」ではこのパターンは結構多く、すぐカッとなり、逆上し殺害してしまう
    しかしよくよく聞くと…というオチがあったりする
    悲しい人のサガと愚かさ
    そう、すぐに皆さんカッとなって、殺害しちゃうのだけど、その割にいつまでも後悔したり、泣き続けたり、ひどいと病に臥せったりする
    まぁとにかく日本人からもちょっと考えられないくらいの激情家が多く、感情の起伏も驚くほど激しい
    それが面白いんだけど


    「こぶ男の物語」 
    これまたややこしい
    ある仕立て屋の夫婦が招待した食事の場で「こぶ男」が魚の骨を詰まらせて死ぬ(マジで⁉︎)
    あせった夫婦は遺体をユダヤ教徒の医者の家へ
    死体を階段の上まで運び上げ、逃げ帰る仕立て屋夫婦
    何も知らない医者が死体を蹴飛ばしてしまい、階段から落ちた「こぶ男」が死んでいることに気づき、大慌て!
    こちらもとにかく死体をどこかへ…
    そしてお隣のイスラム教徒の煙突に放り込むことに

    外出先から戻ったイスラム教徒は暖炉に人がいることに気づく
    とっさに泥棒だと思い、木杖で何度も殴りつける
    しかし相手がびくとも動かないことを不審に思いよく見るとなんと死んでいるではないか‼︎
    こちらも他の場所へ移動させることに
    街はずれのとある店に「こぶ男」をもたれさせて逃げ帰るイスラム教徒

    さて外出先から戻ったキリスト教徒の商人
    ひどく酔っており途中で立ち小便がしたくなり、一軒の店の壁を背に向けると…
    商人の背中に倒れ込んでくる
    つい物盗りだと勘違いした商人は、「こぶ男」を思いきり殴りつける

    ちょうど近くを通った番人に見つかり、御用となるのだが…

    スルタン(君主)の前で各人が「自分がやった」と言い出す
    スルタンからすればどういうこっちゃ⁉︎
    なのだが…
    スルタンは今回の話に興味を示し、書き記させることに!
    さらに、もっと面白い不思議な話を知る者はいないか
    こぶ男の話より面白くなければ縛り首だ!と挑発(何この展開!?)

    そして4人が知っているオモシロ話を「又聞き」として話すのでまぁややこしいこと!
    そして運悪いことにこの巻で完結していないので、3巻に続く…なのである


    本書でも感じるが豪華絢爛さが半端ない
    財力の規模が違い過ぎる
    当時のアラブ諸国の財力を感じさせる
    日本ではこんな物語は誕生しないだろう!

    またしてもなんだか病みつきになってしまう「千一夜物語」
    最後に人にストレスを与えるかなりイラつく床屋が出てきており、この男がどうなるか気になるのでやはり続きも読まなくては!

    • kuma0504さん
      おはようございます、ハイジさん。
      とても楽しく読ませていただきました♪
      レビューでさえコレなのだから、実際読み始めたら時間がいくらあってもあ...
      おはようございます、ハイジさん。
      とても楽しく読ませていただきました♪
      レビューでさえコレなのだから、実際読み始めたら時間がいくらあってもありなくて千夜必要になりそうですね。
      いかん、いかん!
      つい手に取らないようにしよう、
      絶対取らないようにしよう、
      そうしよう‥‥。
      2021/09/07
    • ハイジさん
      kuma0504さんコメントありがとうございます!
      楽しんでいただけて大変光栄です。
      ぜひぜひもっともっと楽しみませんか!?(笑)
      こ...
      kuma0504さんコメントありがとうございます!
      楽しんでいただけて大変光栄です。
      ぜひぜひもっともっと楽しみませんか!?(笑)
      こちらのガラン版はレビューも少なく寂しい思いをしております。
      kuma0504さんなら千夜も必要ありません!

      ジンに魔法をかけてもらわなくては…
      「あなたも読みたくな~る♪読みたくな~る♪」
      2021/09/07
  • 有名なシンドバットの冒険をはじめ、ジンが出てきてアラビアンナイトらしい「3つのリンゴ」、全編の中でも屈指の面白さを誇る「こぶ男の物語」などコンテンツが充実した第二巻です。やはりガラン版は読みやすい!シンドバットはオリジナルにはない話とありますが、「マルドリュス」「バートン」「ガラン」と邦訳のある全ての「千一夜物語」には収録されていますね。

  • ストーリー展開に置いてきぼりにされることしばしば。いい意味で。それが楽しいから。
    シンドバードの話は第二の航海が子供向けにされて有名な話かな?確かにそれ以外の航海はちょっと残酷に過ぎるような…最後はともかく、よくまあ懲りずに航海に出たなぁ。
    3つのリンゴの話はもう何もかもメチャクチャ。本筋のリンゴの話もしょーもないけど、クリームタルト…いやーもう、クリームタルト。これしか覚えてないわ。
    こぶ男の物語は次巻に続く。こぶ男をめぐる話はどこかで聞いたことがあるような展開だけど、その後の入れ子になった物語がまたむちゃくちゃ…相変わらず女たちが怖すぎっていうかむちゃやり過ぎ。とくにガーリックいりのシチューの話(タイトルはそんなんじゃない)…ガーリック…
    次巻も読みます。解説もいつも楽しみ。千一夜物語って結局なんぞや?ってことがわかる。この作品成立そのものがミステリー。

  • おいおいおいおい!いいところで終わるなよ!
    と、シャフリヤール王の気持ちがわかったような気持ち。

  • 1巻に引き続き面白い。それにしても、盗みをはたらけば腕を切り落とされる、か…恐ろしい…

  • 海のシンドバードの話、三つのリンゴ、こぶ男の物語(途中まで)の三つのお話が収録されている。三つのリンゴが好き。この時代って感情も財力もスケールが大きくて、勢いがすごい。ぐいぐい引き込まれる。何もかもがダイナミックで読んでてすごい元気出る(笑)

  • 海のシンドバード、三つのリンゴ、こぶ男の物語、大きく三つの話。シンドバードは小さい時にテレビアニメでみていたが、この話のとおりだと子供に見せられないなあ。自分が生き残るために他人の命を使うのに、無事帰国したら喜捨する善人面が目に余る。

    当時のアラブは浮気した妻を問答無用ですぐに殺し、後から後悔して(中略)結局許されるとか、なんだか脂っこい世界観。でもそれが昔話、おとぎ話の味わいのひと
    つなのかもしれない。

    アラブでは寒冷地でしか育たないリンゴが貴重なのだな。
    表現はあっさりしていて残酷ではないので全巻読めそうだ。

  • 三、四巻。シンドバードの冒険譚とミステリっぽい三つのリンゴ、こぶ男のお話。

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著者プロフィール

国立民族学博物館副館長 人間文化研究機構国立民族学博物館教授/総合研究大学院大学文化科学研究科教授 言語人類学
最終学歴:京都大学大学院文学研究科博士課程修了
学位:博士(文学)
主要業績:「枠物語異聞—もうひとつのアラビアンナイト、ヴェツシュタイン写本試論」堀内正樹・西尾哲夫(編)『〈断〉と〈続〉の中東—非境界的世界をぐ』悠書館 2015。『ヴェニスの商人の異人論—人肉一ポンドと他者認識の民族学』みすず書房 2013。『世界史の中のアラビアンナイト』(NHKブックス)NHK出版 2011。

「2016年 『中東世界の音楽文化 うまれかわる伝統』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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