ガラン版 千一夜物語(3)

著者 :
  • 岩波書店
3.54
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本棚登録 : 62
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000287753

作品紹介・あらすじ

「こぶ男の物語」の続きで,殺人の罪を着せられた三人の一人,仕立屋が語るおしゃべりな床屋と,その五人の兄たちの抱腹絶倒の物語.また,ペルシアの王族の貴公子とカリフお気に入りの美女との許されざる恋の物語,なかなか結婚しない王子と王女が数奇な運命を経て恋に落ち,結ばれるまでの不思議で面白い物語が語られる.

感想・レビュー・書評

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  • 2巻からの続き

    「こぶ男の物語」
    「こぶ男」の中の床屋の話(ややこしい)
    最高に人をイライラさせる床屋は、6人の兄がおり、この全員の不幸な兄たちの話を順番に始める
    一番目の兄は背中にこぶがあり、二番目の兄は歯無し、三番目は片目、四番目は盲人、五番目は耳無し、六番目は唇無しだという
    (これだけで充分不幸さが伝わる…ここからさらにどう展開するのだ…)
    床屋の話はあまり好みではなく、今まで読んだ中ではイマイチ(もう床屋自体が受けつけないイヤらしいタイプなのだ)
    ユーモアのある不幸話は嫌いではないが、ユーモア無しかつなんとも惨めな不幸話で救いも見出せず…
    最後に床屋とこぶ男のあっと驚く展開があり、床屋が欠点はあるものの、ひとかどの人物とみなされ、スルタンからも莫大な年金をもらうのだが…
    うーん残念ながら響かないなぁ
    床屋の話なんかより、こぶ男をもっと膨らませて欲しかった
    こぶ男ってそもそもなんなの⁉︎


    「アブールサハン・アリー・イブン・バッカールとカリフのハールーン・アッラシードのお気に入りシャムスンナハールの話」
    タイトル長っ!
    男①:ハールーン・アッラシード→カリフ
    女①:シャムスンナハール→カリフのお気に入り女性
    男②:バッカール→シャムスンナハールに惚れた男

    という構図
    三角関係のイケない恋である
    カリフの女に手を出すとは、命がけの恋愛だ
    まぁとにかく二人(シャムスンナハールとバッカール)の恋煩いが異常な温度で展開する
    (恋煩いをして病に臥せってしまうほどだからもうそれはそれは…)
    二人の秘密の関係に手を貸しているターヘルという男がクールダウンさせようとするが当然全く歯が立たず
    とまぁここまでは想像の範囲内の展開(さーてここからどんな展開になるのか…ワクワク)
    まず二人に手を貸していたターヘルが(たぶん)自分に火の粉がかかることを恐れとんずらする
    そのあとを引き継ごうという名もなき宝石商(勝手に怪しいにおいがすると思い込むわたくし)
    二人の逢引きを手助けするのだがそこへ強盗の集団が…
    意外なこの展開がどうなるのか…と思いきや…
    そう、びっくりするほど正統派の感動物語で終わってしまって、それがあまりにも意外で逆に驚きで楽しめてしまった
    いやいや本当は(心の澄んだ方にとっては)ただただ二人の愛の感動ストーリーなのだが、
    (心の澄んでいないわたくしには)、裏の裏をかかれたような意外さが面白かった


    「ハーリダーンの子どもたちの島の王子カマルッザマーンと、中国の王女ブドゥールの愛の話」
    またもタイトル長っっっ
    タイトルに負けじと話も長い長い…

    まずは遠く遠く離れた王子と中国の王女
    瓜二つの美男美女
    魔神であるジンと妖精の勝手な競争心により、片方が眠っている間だけ、片方がその空間で相手を見ることができる…という魔法によりお互い一目惚れする
    もちろんジンと妖精の仕業なので誰も信じてくれず二人はそれぞれの国で正気を無くしたとされる
    かたや王女の国では父である王が娘を治したら王女の婿としよう が、失敗したら斬首に処する
    そして150人以上が首が城門に並ぶことに…
    ようやく一人の救世主が現れ、二人は出会いその日のうちに祝福され結婚する
    王女の国で幸せな新婚生活を送っていたある日、王子が父である王の臨終を迎えようとしている夢を見て、二人して会いに行くことに
    もちろんその道のりは何ヶ月もかかるほと非常に遠い
    そして道中にハプニングにより王子が一人はぐれ道に迷う
    11日間もさまよい、見知らぬ町へ
    そこで庭師の親切により居候させてもらいながら、商船が出航するのを待つ

    一方の王女
    いなくなった王子を心配するものの、我が身を守るため、自分と王子が瓜二つを良いことに、王子に成りすまし旅を続ける
    ある島に到着し王子として振る舞うが、その国の王様に大変気に入られる
    ぜひうちの姫の婿に…
    さーて困った王女
    昼間は誤魔化せても、夜の営みは誤魔化せない(笑)
    とうとう王女はこの姫にすべての事情を話す
    この素晴らしい姫君は王女の味方となる
    そしていつものごとくややこしい出来事が起こり、ようやく王子と王女は再会する
    さて、王子と王女と姫君
    これでは1人の女性が余ってしまう
    しかし一夫多妻が認められるこの時代のイスラム教
    王子は二人の妻を持ち、二人の妃は変わらぬ友情で結ばれて3人は仲良く暮らしたのだ
    ここで終わらないのが千一夜物語

    さてこの二人の妃のほぼ同時期にそれぞれ息子が産まれる
    二人息子王子は異母兄弟としてとても仲良く暮らす
    ここで不穏な空気が
    なんと妃がそれぞれ相手の妃の息子によこしまな気持ちを抱くように…
    抑えられない気持ちを純粋な相手妃の各息子にとうとう書状を出して打ち明ける
    純粋な兄弟王子は激怒する
    しかしここは妃たちのが一枚も二枚も上手
    兄弟王子たちを破滅させることに…
    二人の兄弟王子は処罰されることになるが、なんとか逃げ切る
    ここからさらに二人の旅物語が大きく展開する
    ここからの物語はなかなか堂々巡り
    ようやく脱出できたら、また元の地獄へ逆戻り
    などなかなか気の毒な試練の旅が続く
    想像力を越えてくるので夢中にさせられる 
    最後はハッピーエンドだが、個人的に二人の妃が一体どうなったのか(描かれていない)気になるところだ

    それにしても、何かあるとすぐ暴力ふるうのはやめてほしい…
    罵声を浴びせたり、したたか棒で叩いたり、血まみれになるまで暴力を振るったり…
    すぐ処刑(よくあるのがうまくいったら褒美をやるが失敗したら処刑だ!ってやつ)
    うー 何もそこまでしなくても…
    読んでいても痛ましい
    なんでこういう描写がこれほどに多いのかが謎だ
    だから良い子には読ませられないのだ

    そして女性蔑視を随所に感じさせる描写が多いこと多いこと
    まぁ時代的に仕方ないのかもしれないが…

    でもやっぱり面白いんだよなぁ…
    想像の範疇を毎回越えてくれるこの喜び!
    やっぱりやめられない!
    ここまで来たらどーせ引き返せないので続きも読むぞ!

  • ペルシアの王女と中国の王女のラブロマンスはスケールが大きく「千一夜物語」のテイストが濃厚で、本巻ベストの作品です。ジンや妖精が2人の中を取り持つののもいい。波乱万丈ですが、見せ場は結婚したのに別れ別れになった2人が再開するシーン。訳あって男装で王様になっている姫に寝室に呼びつけられた王子がビビっていると正体を明かされついにベッドイン。姫は聡明でシェークスピアの“ポーシャ”を連想します。読み比べようと所有するバートン版やマルドリュス版でその箇所を探しましたが見つかりません。確かに、読んだ記憶はあるのですが。

    • ロカさん
      はじめまして、ロカと申します。
      マドリュス版は読んだことがないので、わからないのですが、バートン版はちくま文庫で現在も手に入ると思います。
      はじめまして、ロカと申します。
      マドリュス版は読んだことがないので、わからないのですが、バートン版はちくま文庫で現在も手に入ると思います。
      2020/08/06
    • myjstyleさん
      コメントありがとうございます。
      バートン版保有していますが、この物語が第何話にあるのか、探せないのです。
      コメントありがとうございます。
      バートン版保有していますが、この物語が第何話にあるのか、探せないのです。
      2020/08/06
    • ロカさん
      そういうことだったのですね。失礼しました。
      そういうことだったのですね。失礼しました。
      2020/08/06
  • 2巻からの続き(こぶ男の物語)のあとは2つの恋物語。恋する男女は気絶しがち。
    バッカールとシャムスンナハールの悲恋は熱い。熱苦しい言葉の数々。
    カマルッザマーンとブドゥールのお話はトンデモ展開過ぎてコメントに困る。他の版の千一夜物語を読んだことがないので、訳注にある「アラビアンナイトのエロティックなイメージを象徴するシーン」がどんなものか知らないけれど、解説を読む限り、しょーもなさそうなので、このガラン版の展開が良いんじゃないでしょうか…

  • 三つの話が入ってるんだけど、ラストのカマルッザマーンとブドゥールの愛の話が最高にパンクやった。大河ドラマみある。ブドゥール姫最強。カマルッザマーンがんばれ(笑)ラストは最強、ヤバいこれは映像で見たい。宗教わからんけど楽しかったー!

  • 面白かった。恋心の激しさが伝わってくるラブレターの中身に思わずうっとり。王子と王女の物語はハッピーエンドに終わったかと思いきや…。王女は男勝りの手腕を発揮していたのにああなってしまうとは…恋心が理性に勝ってしまったか

  • 愛とか宗教とか。

  • 五巻と六巻。カマルッザマーン!

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著者プロフィール

国立民族学博物館副館長 人間文化研究機構国立民族学博物館教授/総合研究大学院大学文化科学研究科教授 言語人類学
最終学歴:京都大学大学院文学研究科博士課程修了
学位:博士(文学)
主要業績:「枠物語異聞—もうひとつのアラビアンナイト、ヴェツシュタイン写本試論」堀内正樹・西尾哲夫(編)『〈断〉と〈続〉の中東—非境界的世界をぐ』悠書館 2015。『ヴェニスの商人の異人論—人肉一ポンドと他者認識の民族学』みすず書房 2013。『世界史の中のアラビアンナイト』(NHKブックス)NHK出版 2011。

「2016年 『中東世界の音楽文化 うまれかわる伝統』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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