カント哲学の奇妙な歪み――『純粋理性批判』を読む (岩波現代全書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000291989

作品紹介・あらすじ

近代哲学はカントの認識論で素朴な経験主義を脱し、自然科学から自立したという理解は本当だろうか?哲学史的事情を踏まえるなら、カントの哲学は自然科学を形而上学によって基礎づけたのではなく、自然科学を基盤としてそれに形而上学の装いを与えたのではなかったか。自然主義と全体論の視点から近世哲学史を再検討する。

感想・レビュー・書評

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  • 本書は、デカルトから始まった「観念」の近代的用法が持つ、自然主義的論理が、カントにおいてどのような歪みを生じることとなったかに焦点を当て、カントを取り巻く歴史的諸事情との関係において、その実際を示そうとするものである。
    その結果明らかになるのは、反自然主義的基礎づけ主義の立場が結局はそれ自身自然主義的枠組みの中で構築されるという、逆説的論理である。別の言い方をすれば、西洋近代の観念説のカント的変容は、われわれがその内で生きている「全体論」的論理、「解釈学的循環」構造に対し、その論理や構造を踏み台として用いながらその土台を掘り崩そうとする、逆説的な試みであったということである。

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著者プロフィール

1952年、香川県生まれ。京都大学文学部哲学科卒。京都大学博士(文学)。ハーバード大学客員研究員などを経て、現在、京都大学大学院人間・環境学研究科教授。著書に、『ロック哲学の隠された論理』(勁草書房)、『クワインと現代アメリカ哲学』(世界思想社)、『観念説の謎解き』(世界思想社)、『観念論の教室』(ちくま新書)、『ローティ』(ちくま選書)、『カント入門講義』(ちくま学芸文庫)、Inquiries into Locke’s Theory of Ideas(Olms)、 The Lost Paradigm of the Theory of Ideas (Olms)、「科学哲学者柏木達彦」シリーズ全5冊(ナカニシヤ出版)、「生島圭」シリーズ全3冊(講談社現代新書)など、訳書に、R.ローティ『連帯と自由の哲学』(岩波書店)がある。

「2019年 『デカルト入門講義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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