大転換――新しいエネルギー経済のかたち

  • 岩波書店
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000610605

作品紹介・あらすじ

「日本はかつては再生可能エネルギーのリーダーだったのだが」半世紀近く環境問題のオピニオンリーダーとして世界を引っ張ってきたレスター・ブラウンは、姿を現わし始めたばかりの新しいエネルギー経済を見据えながら、80歳の誕生日を祝う席でこう切り出した。本書は、日本をこよなく愛してきた著者からの、最後の叱咤激励のメッセージでもある。福島の原子力発電所の事故、差し迫る地球温暖化の脅威…。現状維持を願う人たちですら抗いようのない、強力で確かな流れが加速する。「これまでのやり方」に固執する日本にこそ、勇気ある大転換が求められている。

感想・レビュー・書評

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  • 開発目標7:エネルギーをみんなにそしてクリーンに
    摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99781581

  • エネルギー分野で現在進行中のエネルギー転換について、各国のデータをもとに詳細に記載。確かに石油、石炭、原子力からクリーンな自然エネルギーへの転換は避けられない。日本のデータも提示されているが、特に日本の現状に特化しているわけではないので国内の状況を把握するにはちょっと物足りないかも。それにしても日本の政治家って、この転換にどう対応するつもりなんだろう・・

  • 再生可能エネルギーへの転換

  • 化石燃料や再生可能エネルギーについて、網羅的かつ精緻に記述されている良書です。文章的には著者の意見はそれほど全面に出ていないように感じられますが、実際は当然ながら意見的記述となっています。化石燃料にはすでに陰りが見え始め、再生可能エネルギー推進の土壌が急速に整備されている中、現在のエネルギー事情を理解する上で非常に参考になる著書と言えます。

  • 半世紀近く環境問題のオピニオンリーダーとして世界を引っ張ってきた著者。
    エネルギー問題に対する、ひとつの見解、考え方である。大きな方向性は違わないと思うが、例えばバイオマスが果たすべき役割やそのメリット、水素利用に関する考察など、異論も多いかと感じる。また、翻訳の問題なのか分からないが、前後の文章、段落のつながりが、飛躍している部分がいくつかある。

  • 世界では新しいエネルギーへの転換が進んでいるようだ。
    帯に「加速する世界、逆行する日本」と記されている。

  • 今、世界的に新しいエネルギー経済のうねりが広がっている。石炭・石油、原子力といった、かつて、そして現在も世界を動かしているエネルギーから、太陽光、太陽熱、風力、地熱、水力といった、地球に負荷をかけない再生可能エネルギーと呼ばれるエネルギーにシフトされつつある。こうした流れを、地球環境問題で高名なレスター・ブラウンが世界各地の実例を挙げながらレポートしている。これはある意味、日本を愛する彼の、日本へのエールともいえる。つまり、エールを送られないといけないくらい、日本のエネルギーシフトは原発の再稼働にこだわって停滞していることがわかる。

  • 501.6||Br

  • 世の中動いているのだな、ということを実感させられた本でした。この本の内容は、データに基づいて書かれているので恐らく事実だと思います。

    今まで、新しいエネルギーとされる太陽光・風力・地熱発電などは、エネルギー効率が悪い等、言われてきたように思いますが、世界の国の中には、従来の石油・石炭・原子力からすでに脱却して、新エネルギーを主体にしている所もある(デンマーク:2014年で39%が風力)という事実を知って、目からウロコが落ちた感じです。

    日本においても、将来の電力需要に備えて原子力を稼働させるべきだ、と主張している人もいますが、廃棄物の処理に困るような方法に頼るのが果たして良いものなのか、成功している例を参考にして、太陽や風力に切り替えることも考えるべきだと感じました。

    特に、全体を平均すれば、石炭火力がメインとされている米国でも、州毎に見ていくと、風力発電が主力になりつつあるところもあるようです。この本を読んで、データを平均してみると、大事なポイントが隠れてしまうこともある、ということが再認識されました。

    以下は気になったポイントです。

    ・太陽光と風力の発電コストは急速に低下、電力市場では化石燃料コストを下回るところが増えている。デンマークでは2016年稼働の風力発電所は、石炭・天然ガス発電所の半分のコスト、オーストラリアでも石炭よりも安い(p2)

    ・2010年初めで稼働していた米国500超の石炭火力発電所のうち、180箇所以上がすでに閉鎖されたかか、その予定、稼働しているのは343箇所(p7)

    ・天然ガスは燃焼時のCO2発生は石炭燃焼の半分だが、ガス田やパイプラインから、温室効果がCO2よりも高いメタンが大量に漏出することが明らかとなった(p8)

    ・エネルギーの転換に失敗しつつあるのは、巨大石油資本の、シェブロン、エクソンモービル、シェルなどの大手独立系石油・ガス会社、2009-13年に3社は5000億ドル投資したが、2013年の生産量は減少した(p10)

    ・石油業界は、政府補助金への依存度が高い、2013年の世界全体の政府補助金は6000億ドル、再生可能エネルギー:1200億ドルの5倍以上(p12)

    ・フランスでさえ、2025年までに原子力発電の割合を50%にまで減らそうとしている、中国は1.6万メガワットの原発を有しているが、世界最大となる9.1メガワットの風力発電をすでに開発している(p16)

    ・シェルは、米国内でのシェール岩層の掘削を縮小した、シェル、トタル、スタトイル(スウェーデン)もお、カナダのタールサンドのプロジェクトを一部中止した(p25)

    ・全米世帯移動調査において、35歳未満のすべての人口で自動車運転が減りつつある、2001-9年において、23%減少(p29)

    ・欧州での自転車販売量は、2000-2100万台であり、すべての国で、自動車の販売台数を上回っている(p32)

    ・中国の自動車保有台数は、1000人につき69人で、2009年には米国(4人につき3台)の米国を抜いて、世界最大の新車市場となった。(p36)

    ・2014年、ノルウェーで最も売れているのは、電気だけで走る電気自動車、テルサ・モデルS(p39)

    ・石炭は地中から掘り出されてから発電に使われるまでに、年間3450億ドルを米国経済に課している。その大部分は、医療費の負担と気候変動によるもの(p44)

    ・中国では3つの省と3つの大都市(北京:半減、天津:19%減、重慶:21%減、河北省、山東省など)が、2017年までに石炭使用量を大幅に削減すると公約した(p60、180)

    ・世界で稼働中の原子炉は、2002年の438基がピーク、2014年には31か国で388基、大半は日本の原発稼働停止のため(p66)

    ・福島原発の原子炉を廃炉にするには、40年と1000億ドルがかかると推計されている、これには被災者への補償(4000億ドルと推定)は含まれない(p75)

    ・中国でもインドでも、2013年には風力発電が原子力発電よりも多くの電力を発電した(p80)

    ・太陽光発電は、2014年前半において、14か国とカリフォルニア州において、たとえ補助金がなくても価格競争力があるとされている(p86)

    ・カリフォルニア州にあるCSP(集光型太陽熱発電)方式だと、最大6時間の熱エネルギーを溶融塩に蓄えておけて、日没後も長時間発電ができる、チリのアタカマ砂漠にあるCSP発電所のものは、18時間分蓄電可能(p100)

    ・世界中で使われる推定15億個の灯油ランプは、全住宅照明の1%に満たないが、照明部門ではCO2排出量の29%を占める(p102)

    ・風力発電は、冷却用の水を必要としないので、水は灌漑・住宅用、環境目的に使える、また大気中への汚染物質を排出しない、建設工期は、原子力発電所では10年程度だが、風力発電は1年(p111)

    ・中国では2013年、風力発電が原子力発電を上回り、石炭、水力発電につぐ、三番目となった(p112)

    ・ベネズエラは有数の石油産油国だが、電力の60-70%を水力発電としている。石油を輸出できるように(p147)

    ・世界の自動車業界が、内燃機関エンジンから、効率がその3倍となる電気モーターへシフトするにつれて、石油市場は縮小するだろう、このことは、パイプライン、石油精製所、ガソリンスタンドが変わることを意味する(p171)

    ・世界で最もダイナミックなエネルギー効率基準制度は、1999年に導入された日本のトップランナー方式。市販されている最も効率が高いものが、それ以降に販売される製品に対する基準(3-10年以内に基準到達)となる。それにより、22-99%の効率向上が見られた。この対象としては、エアコン、コンピュータ、家電、産業用モータ、照明器具、軽自動車、トラック等、合計30以上(p177)

    ・ウォーレンバフェットは、2014年までに、太陽光・風力発電開発に、150億ドル投資してきた、さらに同額投資する準備があると発表している(p182)

    2015年8月9日作成

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