「意地悪」化する日本

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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000610988

作品紹介・あらすじ

「正直・親切・愉快」な日本を取り戻す。

感想・レビュー・書評

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  • 2015年12月第1刷発行、安倍一強の自民党や、大阪都構想で住民投票を行い、結果、政治家を引退した橋元徹の行動パターンから、その心性を看破する。ふたりの共通点は幼児的で攻撃的で不寛容。言葉はその場しのぎ。なるほど、内田樹氏のアンチ親米の立ち位置や解説にいつも納得させられる。確信的な反知性主義者とは正鵠を得た表現だろう。
    もうミニ政党に成り下がってしまった社民党の福島みずほとの対談という形で進む本書は、よくいうとリベラル、いい子ちゃん、ええ恰好師な社会主義色も強い。今の大人は学校や部活や会社にしても、民主主義とかけ離れた社会に慣れきっているというのも、言われてみれば、そうなのだと思う。文化系のゆるい部活やサークル出身の僕のような男がイマイチ、会社縦社会に馴染めなかったのも、素因があったんだという今さらの発見(時すでに遅し)。
    本書の対談は2015年の秋ごろに行われたものらしく、その夏に安全保障関連法案の採決された様子や反対運動のことにも触れられている。翌2016年は安倍一強を阻止するために野党が共同戦線を張って、参院選を戦おうというところで本書は終わっている。その参院選でも安倍一強は止められず、明くる2017年は森友に加計と自らの驕りが招いたエラーで支持率が低下したものの、すわ政権交代かとの思いもよぎった2017年10月の解散総選挙は安倍自民の圧勝で終わった。国民の信託を得て、消費税が10%になるのは致し方がないとして、憲法改正、国が晴れて交戦権を持つことはやはり避けては通れないのだろう。
    この国はアジア諸国の追い上げで家電製品はもう競争力を持たない。されば、武器輸出でもしないと本当に経済が持たないのかもしれない。
    内田氏の説く「もっとも弱い者が、自尊感情を持って、愉快に生きることができる制度」がもはやファンタジーとなってしまったのだろうか。日本政府が国ではなく、株式会社化を目指しているという指摘は実感するが、そのことに違和感も感じない選挙民が日経平均を上げる安倍政権を信任した当然の帰結だったのだろう。

  • いつか、そう遠くはない未来の、学校の社会の時間に、

    「史上最悪の総理大臣」という説明を受けながら、現首相の名前を暗記している学生が、

    「しかしなんで、こんなどう考えてもくるっている選択を、国民は許してたんだろうかね。バカだったんじゃね?ま、とりあえずこーならないように勉強しとこっと。」とか言いながらテスト勉強なんかをしてるんだろうか。


    第2次世界大戦のドイツのときみたいだ。
    世界史で習っているときは、「なんでこんな人が受け入れられたのか」と疑問に思いながらも事項を暗記していくという。


    歴史は繰り返す。そういうけれども、

    私の日々生きる糧を稼ぐ行為よりも、明らかに人の生き死にが関わってくるような重要事項を決定する人間が、頭が良く、大綱的に物事をとらえられる人間であるという前提を、裏切らないでほしい。

    知性ある人間の行為を、務めあげるくらいの器を見せるオトナであってほしい。

    子供じみた言動を、メディアで発信することが、次世代の目に触れさせることが、「それでいいんだ。」というメタメッセージを洗脳のように垂れ流しているという事実を、もっと深刻にとらえてほしい。

    私の世代ではもう間に合わないかもしれない。私は貧困をかみしめて死んでいくかもしれない、でも、せめて私たちの次の世代くらいは、新しくよりよく生きられる方向に、少しでも多くの人が目を向けられる環境であってほしい。


    私は多くを、望みすぎでしょうか。

  • 安倍晋三とか橋本徹とか、なんかうさん臭くて好きになれなかった。本書を読んでおよそその理由がわかった。昨日と今日と違うことを言っていても平気なんだ。根拠があいまいなことも、自信をもって大きな声で言ってしまう。そうするとそれが真実のように聞こえてしまう。そういうことを肌で敏感に感じ取っていたのだと思う。自分の中で、でもな、こういうこともあるよな、とか思ってしまうと、自信をもってはっきりと人を説得することができない。気が弱いというのか、正直というのか、それを誠実と言っていいのかなあ、などと考えながら、でも、それって、悪いことではないよなあ、なんて思いながら本書を読んだ。「正直・親切・愉快」な日本を取り戻す。と帯にはある。愉快という部分がもう少しなんとかなればいいなあ、今年はそういう年にしようと思う。

  • アンチ安倍さん的な本かなぁ

  • 内田樹と福島みずほの2015夏の対談。

    最後の方で、「民間ではありえない」という考えを国家や自治体の運営に持ち込むことがナンセンスだという話が出てきた。おお、ですよね。

  • 16/01/11。

  • 福島みずほさんが、内田樹さんにインタビューを申し込み、何度かの議論を経て活字化したもの。この中でまず本当にと思ったのは、安倍さんや橋下さんは議論が出来ない相手だということである。それは、まともの人なら、人から矛盾をつかれればひるむのに、かれらはまともに議論をする気がないから、持論をひたする言いまくるか恫喝するかだという点である。二人の言動を見ているとまったくそのとおりだと思う。本書は、本来なら弱い者同士が助け合わなければやっていけなくなっているのに、悪い人をたたくのではなく、弱い人間を叩いて平気な顔をしている人たちが増えていることを問題にする。それは、たとえば内田さんが講演のついでにおいしいものを食べたと書いただけでも批判するという心の狭さである。そんな世の中ではあるが、シールズの若者のように、一筋の光明は差していると二人は言う。それはこの2016年の参議院選でわかるだろう。

  • うーん。

  • 社会

  •  福島みずほとの対談というのであまり気乗りしなかったんだが、内田樹が絡んでるならと読みかけた。そういう期待に応えてくれない本。途中放棄。岩波出版。

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。神戸女学院大学を2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』『日本習合論』(以上、ミシマ社)、『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』など多数。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2023年 『日本宗教のクセ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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