- Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000614658
感想・レビュー・書評
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美人、知的、おてんば
今、周りを見渡してこんな破天荒な人がいるだろうか?
冒険心と知性と美貌を携えた...
本のあとがきのその後に略年譜が添えられており
今年2021年 − 岸恵子生まれ年 1932年=89
89??
電卓を引っ張り出して再度計算 89だ
なんと89歳...
美しく冒険好きな おばけだ!と思ってしまった...
誰もこんな風に生きられない...
老いとか歳をとるとか...
なんかすごい...謎だ...詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
大女優は稀代の名文家でもある。79年の日仏波乱の人生を振り返る。
横浜出身。空襲体験から松竹の研究生から「君の名は」で大スターに。フランス人の映画監督イヴ・シャンピとの国際結婚と渡仏。映画からジャーナリストへ。波乱の人生。
高峰秀子でも感じたが女優として頂点を極めた人の観察眼と表現力は素晴らしい。一芸に秀でるとは多芸につながるということが良く分かる。 -
フランスと日本を行き来する美しいお洒落な女優さんという認識しかなかった自分を恥じた。強く、たくましく、エネルギッシュで命知らず。しかし、そこには強い自己顕示欲はなく、ある意味飄々とした生き方をしてきた人。それを知ることができた一冊。
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著者の岸恵子さん。日本を代表する女優のおひとりですが、エッセイストとしても何冊も著作を世に出しています。
私としては、岸さんが出演された映画は「悪魔の手毬唄」「女王蜂」「たそがれ清兵衛」ぐらいしか観てはいませんが、それでも流石の存在感でした。
本書は、ご本人による自伝。岸さんの様々な面を垣間見ることができるとても興味深いエピソードが満載です。 -
女優岸惠子さんの出演作品は『細雪』と『悪魔の手鞠歌』しか見たことがないし、著作は今読んだこの自伝以外は一冊も読んだことがない。でも『細雪』には愛着があるので、それだけで「岸惠子といえば長女鶴子の人でしょ、大好き」と、“世代が違う割にはよく知ってるしそれなりに好きな女優さん”といった感情を持っている。だから読んだ。
横浜で育った子ども時代、戦争体験、女優人生のスタート、『君の名は』の大ヒット、フランス人医師で映画監督のイヴ・シァンピとの結婚、私的海外渡航が認められていなかった時代のパリ移住、離婚、国際ジャーナリストとしての活動、娘や孫や両親のこと・・・。内容はそんなところ。
ご本人としては、女優よりもジャーナリストや作家として活動しているときのほうがより強くやり甲斐を感じられていたようだが、そうした仕事は権威筋からは邪険にされたり、揶揄されたり、色々あったらしい。想像に難くないことではあるが、その悔しさ歯痒さプライドがイタいほど伝わってくる。
また、家族のことを語る際はどこか冷めていてなんとなく距離感がある。それがカッコいいともいえるし、寂しげにも見える。
終章で、庭で伸び放題のミモザの木が、土のなかではか細い根で辛うじて自分を支えている様子を「私に似ている」と語るところが、切なくて、一番好きな箇所だ。ミモザは根が弱いので、普通は枝が広がりすぎないよう剪定してあげるものらしい。それを知ってなおさら、「どこにも根付かなくたっていい、剪定なんかするものか、広がれ広がれ」とやけくそにも見える態度でミモザを見守る岸惠子。
全体に、いけすかなさと紙一重の気高さにゾクゾクさせられた。なんだかんだいっても、いくつになっても若々しくてきれいでおしゃれな雰囲気を保ち続けているのだ。敬意をもって「女優さん」と私は呼びたいけどな。
それにしても、自伝というジャンルの読み物は、読む前は正直あまりワクワクしないのだがいざ読んでみると面白い。内容以上に、語り口に人となりが隠しようもなく出るところが、面白い。 -
★▼「岸惠子自伝」岸惠子。2021年岩波書店。岩波書店から出てるってところがナルホドですね。なんというか、プライドと希少価値が滲み出てる(笑)。
▼問答無用の大女優(&作家、ジャーナリスト)・岸惠子さんの自伝。ファンの方は、かなり多くの経緯はさまざまなエッセイなどで知っていることが多いのでしょうが。
▼なにしろ、1932年生まれです。もうすぐ90歳です。そりゃ運も拍子もあるかもですが、10代の頃から自分で働いて稼いで人気商売浮き沈み、国際結婚離婚にキャスター稼業…もう単純にほとんど「戦後史」的面白さです。なんというか、岸惠子さんが素晴らしいかどうかというよりも、「この70年を、色んな場所で、色んな仕事で派手に生きてきた女性の物語」というだけで、日本人としては相当にオモシロイ。
(無論のこと、中盤以降はかなり「うーん、まあつまり、自慢か?」という要素は4割方はありますが)
▼その上、個人的には映画好きであり、映画史好きであり、日本映画史好きだったりするので、うーんなんというか、プロ野球ファンの人が、ドラマチックなシーズンの振り返り記事を読むような、そういうなんかもう読んでるだけで時間が止まっちゃうみたいな楽しさ、強烈にありました。
やっぱり知名度としては「君の名は」なんだけど、日本の映画ファンに開かれた有名作の中で秀逸なのは「おとうと」「悪魔の手鞠歌」それからあんまり大きな役では無いけれど「細雪」。つまりは、小津作品よりも市川崑作品で輝いていたなあと改めて。こういうのは言葉にし難い、”相性”みたいなものなんでしょうね。
(でも個人的には豊田四郎監督の「雪国」が最高の岸惠子さんだったと思ってますけれど。脱線するんですが「雪国」「墨東綺譚」「夫婦善哉」の3本だけでも豊田四郎さんはモノスゴイと思っています。もっと評価されてしかるべき。まあされてはいますけれど) -
この女優さんがそもそもインテリで、根っからの女優としてその身を捧げているわけではないからか、いつも感じる「大女優の自伝は面白い」という感想が特にうかばなかった。「女優としてその身を捧げ」たくはない旨、ご本人も長谷川一夫との会話を再現しながら語っている。
全体の基調として流れる、それぞれきちんと取り繕いながらも、至る所で特定できる人に毒を吐いているそのタッチは面白かった。
ちなみに途中で掲載される、盟友有馬稲子と当時の夫中村錦之助、さらには長嶋・王・野村・稲尾という野球史のトップ中のトップとのパリのご自宅での集合写真は、必見だと思う。まさに昭和の大スターが集合したとんでもないシーン。 -
私の中では「岸惠子」は女優だった。
時折報道番組で、女優さんがレポーターとして出てる…と。
けれど、この本を読んでからは、見方が変わった。
この人はジャーナリストなんだ。
イラン、アフリカ、イスラエル…。
かなり危険な場所へも行き、命がけの撮影になったりもしている。
女優の仕事、取材で世界中を飛び回る生活で、家族との関係にも亀裂が生じるが、半ばあきらめているのか。
C'est la vie
孤独だけれど、それを受け入れて、淡々と。
なんだかカッコイイ。