- Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000615341
作品紹介・あらすじ
地租改正による近世村落の解体は、村請制に支えられてきた秩序を全面的に崩壊させた。未来への予期を欠いたまま、資源を奪い合い、暴力におびえる住民たち。人々は〈未熟なリヴァイアサン〉、すなわち力を持たない政府の裁定を仰ぎ、相互監視の規約を改めて交わす。近世・近代移行期における日本社会の根本的な変容を描く。
感想・レビュー・書評
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本書は近代日本社会のあり方は「日本人の国民性」などという不変のものに由来するわけではない、と言い切ってしまうんだけど、そこに至るまでの実証のプロセスの濃密さが凄まじい。近世村と近代村落の違いをこんなにはっきり、説得的に、そしてわかりやすく示した研究はほかにあるのだろうか?という印象である。
「未熟なリヴァイアサン」というのも、いったい何なんだろうかと思いつつ読むと、明治政府がいかに予算と人員を欠いていたのかがわかり、なるほどという感じになる。
内容的な凄さもそうだけど、この研究で使われている史料をどうやって見つけてきたのかという「史料を見つけてくる凄さ」。そしてもし他の人が見ても、筆者のようには読めないだろうという「史料の読みの凄さ」。そのへんも印象的。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
序論 「美風」の行方、「淳風」の来歴
一 課題としての近代村落
二 近代日本の村落概観──行政村と自然村
三 先行研究
(1)戦前・戦時の村落論
(2)戦後の村落論
四 本書の課題
第Ⅰ部 村請制村落から近代村落へ──地租改正前後の変容
第一章 明治初期の村運営と村内小集落
はじめに
一 大麻生村と村内の「組」
二 大麻生村の村政機構と「組」
三 大麻生村の貢租徴収と「組」
(1)明治二(一八六九)年の貢租徴収
(2)明治四(一八七一)年の貢租徴収
(3)明治七(一八七四)年・八(一八七五)年の貢租徴収
四 大麻生村の財政と「組」
(1)明治二(一八六九)年~五(一八七二)年の村財政
(2)明治六(一八七三)年の村財政
(3)明治八(一八七五)年の村財政
むすび
第二章 村請制と堤外地
はじめに
一 大麻生村における割地の存在形態
二 壬申地券発行後の堤外地
三 堤外地をめぐる村規約と番人
四 上組・下組と割地
五 地租改正と共有地の分割
むすび
第Ⅱ部 地租改正の遂行過程──壬申地券発行・耕宅地・山林原野
第三章 壬申地券と村請制
はじめに
一 大蔵省の検地回避方針
(1)神田孝平と検地回避方針
(2)検見と検地
(3)府県の伺と大蔵省の対応
二 地券と租税──武蔵国比企郡宮前村の場合
(1)明治二(一八六九)年における耕地の状況
(2)明治二(一八六九)年~明治五(一八七二)年の貢租徴収
(3)壬申地券の発行過程
(4)壬申地券発行の結果
(5)壬申地券と貢租
むすび
第四章 地価決定の制度的問題
はじめに
一 地価をどのように決めるか
二 地押丈量と諸役職
(1)「区内惣代人」
(2)「地租改正総代人」
(3)「地主総代人」
(4)区戸長・地租改正総代人・地主総代人の関係と機能
三 地位等級調査と諸役職
(1)模範組合の設定と地主総代人・代理人・議員
(2)全管の「権衡」と地租改正顧問人・地租改正大総代
(3)全管巡回調査と県庁への委任
むすび
第五章 林野官民有区分の構造
はじめに
一 近世・近代日本の林野制度
二 森林政策の動向
三 地租改正以前の福島県庁と官有林野
四 地租改正後の福島県における官有林野管理
五 官有林野増大の要因
六 会津六郡民有地引き直し
むすび
第Ⅲ部 相互監視の場としての村落の再建
第六章 官有地・御料地と無断開墾問題──富士山南麓の場合
はじめに
一 富士山南麓原野の官民有区分
(1)近世の富士山南麓
(2)官民有区分と民有地下げ戻し運動
二 開墾の進展
(1)山本長五郎(清水次郎長)の開墾
(2)大渕村および周辺諸村の動向
(3)粟倉村口における学資畑の開墾
(4)開墾地の拡大と県庁の対応
三 御料地編入と開墾地
(1)県庁と宮内省の交渉
(2)地元の動向と行政訴訟
(3)個別貸与と開墾地の状況
むすび
第七章 明治中期の大字・行政村・町村組合
はじめに
一 行政村の形成
二 行政村と大字
三 山林をめぐる大字・行政村・町村組合
四 大字の機能
むすび
結論 日本近代村落の起源
一 得られた知見
二 若干の含意
三 再び、課題としての近代村落へ
初出一覧
あとがき