コサック軍シベリアをゆく (岩波の愛蔵版)

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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001108408

感想・レビュー・書評

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  • 上橋菜穂子さんの「蒼路の旅人」のあとがきに、十代の頃読んで衝撃を受けた「コサック軍シベリアをゆく」「急げ草原の王のもとへ」の二冊について、
    ”歴史には絶対の視点などなく、関わった人の数だけ視点があり物語があるものだと、そのとき初めて思った”と書かれてある。ずっと気になっていた作品。


    舞台は16世紀ロシア。シベリア征服。
    先兵コサック軍の長エルマークと彼についてコサック入りした少年ミーチャを軸に描かれる。

    作者バルバラ・バルトス=ヘップナーの故郷は、第二次大戦後の三年間をソ連軍の占領下にあった。彼女は、憎しみと許し、それを超えた大きな人間愛に到達しようとするミーチャを描く。「この作品を書くことによって、わたくしは自分の心の中のそういうものを克服したのです。」

    ロシア皇帝とコサックの歴史の一端ほんの僅かな部分を垣間見れた。征服される側の草原の民、タタール人の少年が主人公の「急げ 草原の王のもとへ」と二冊あわせて。



    読後しばらく経って…
    親の仇である皇帝を憎みながら、しかも皇帝のいわば手先として戦うエルマークの葛藤、苦しみをひしひしと感じる。描かれているのは英雄像ではなく一人の人間。その孤独さだと感じた。

  • 子供が読む戦争の本って、抑圧された被害者目線で「もう二度とあんな悲惨なことダメです平和イチバン」てのだが、侵略者(コサック)の側から書いた児童文学があったなんて。

    しかもシベリア侵略の動機がさまざまなこと。没落貴族や、ならず者、単なる冒険心、利権だとか政治や地政学的なこととか。
    帝政ロシア、ストロガノフ家、コサック、タタール、原住民と、出てくる役者が多岐!
    侵略される側も、部族によって気質がそれぞれで、生きるために侵略者に懐柔されるか誇りをもって抵抗するか臨機応変に態度を変えるか、、正解なんて分からないし、平和って何だろうと思わされる。

    学生時代に、こんな多面的な視点を意識させてくれる本に出会っていたかった…。大人が読んでもハッとさせられる良書。

    本書を読んだ後は、コサックに攻められる側から描いた「急げ草原の王のもとへ」が必読。

  • 『精霊の守り人』上橋菜穂子氏の後書きから。
    訳者の方、『ジム・ボダン』翻訳した方か!!懐かしい。

    久しぶりに図書館利用にて このハードブックタイプ借りたとき懐かしいなぁ、と。
    小学生の頃は史実か物語か関係なく こういった本を読んでいたなぁ、と。
    (父親は最近まで宮本武蔵が創作上の人物だと思っていたそうで。。 昔は今よりテレビドラマの題材も歴史もの多く取り扱っていそうだし。 それこそビデオテープの時代って年末に歴史ドラマ一挙放送とかあって『壬生義士伝』を観たのであった。。)

    『急げ 草原の王のもとへ』は検索ヒットせず。
    絶版とかかなぁ。。 そういう時電子は有難いので、動いていない希少な作品ほど電子書籍化してくれないだろうか。。


    『コサック軍シベリアをゆく』
    史実の人物と、それについていった少年目線。
    割と冒頭に 敵軍の負傷者へ水を飲ましてやり、少年の倫理観がぐらつく展開。
    一口の水に、若いタタール人に宝石を差し出されたこと。
    逆に敵の死体を踏み越えていくことが平気になっていく。
    そして 「みんな、許さないで憎むことから起こるんです!」という彼の叫び。
    『戦争は女の顔をしていない』を思い出した。

    また、そこに住んでいる住民にとっては日々の暮らしの安息こそが重要で 誰が統治するかはさほど重要ではない。
    作中の登場人物の目線によって見える景色は大分かわるのだろうな。と。。
    エルマークの過去はそんに描かれていないけれど、正に相棒、という存在がいて、だからこそコサックに与するようになったのだろうか。。

    『急げ 草原の王のもとへ』
    前作よりも一人称視点が多いので読みやすかった。
    それこそ王宮の外に興味を持つ王子なのでチャグムを思い出す。
    恥ずかしながらチンギス・ハーン後の歴史的展開に詳しくないので、汗が彼の子孫からなる派生だとは前作では全く築かず。。(何となくトルコとかを連想)
    歴史って繋がっているのだなぁ。。
    そして御父上は長寿だったのだなぁ。。佳人薄命、の典型的パターン。。

    頭をぶつけ合う戦い、 そんなの恐ろしすぎる。。と
    一番記憶に残った。。

  • コサックがロシアの先兵となり
    タタール人と戦いシベリアを開拓する。

    シベリア出兵の様子を
    その英雄 エルマークともに 行動した少年の視点で描く。
    産業革命以前に 毛皮や金属資源を巡る富の争いがあったんですね。

    戦争の残酷さ、原住民の生活の知恵、鉄砲の威力など
    を読み物を通じて理解できるようになっている良書です。

    長篠の合戦と同じ頃に シベリカで火器が威力をふるっていたのは歴史の共時性を感じる。

    火器の登場により人を残酷になることができたとはいえないだろうか。

  • 16世紀ロシアを舞台にした歴史小説。
    イワン雷帝の時代のロシアによるシベリア征服を、コサックの一員となった少年の視点で描く物語。
    戦争とは、人生とは……、といったテーマを、静かに、かつ力強く語りかけてくる作品です。

    同じ作者の手による、この作品の数年後の時代をタタール側から描いている「急げ、草原の王のもとへ」とセットにして読むことをお勧めしたいです。
    ぜひとも復刊して欲しい作品。購入は困難だと思うので、図書館で探してみてください。

    2015年4月 再読

  • 皇帝と対立していたコサックたちが、ロシア領土拡大の名の元に、「稲妻」と呼ばれる銃を持ち、他国へ攻め入る。
    …戦争の英雄と、それに惹かれる者たちの物語が水を含んだ大地の感覚と共に語られる。

    ラストに、「刃のあとに、鍬が続かねばならない」と言っていたが、今のウクライナ等は…ロシア系の市民が入り込んだいい例なのであろう。

    征服される側からの物語である『急げ、草原の王のもとへ』と合わせて読んでおきたい。

  • コサックダンサーが、ビーフストロガノフやシベリアって菓子を食べに行く話ではありません。これは、少年に是非とも読んでもらいたい。勇気と友情、戦略と裏切り。そして最後に自分の夢を見つけて、前に進む人達の物語です。

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