海のたまご (岩波少年文庫 2142)

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  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001121421

感想・レビュー・書評

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  •  2人の兄弟が漁師から手に入れた、卵のような不思議な石。潮だまりに入れたその卵から生まれたのは、海の生き物・トリトン。夏のコーンウォールを舞台に描かれた、美しい海の物語。

     図書館本。
     トリトンといってもポセイドンの息子ではなく、男性の人魚を指している。
     トリトンはそれほど登場せず、むしろ海の美しさに筆が割かれている。南の青い海とはまた違う、北の海の魅力いっぱいの物語だ。
     その分、いわゆる「地の文」が圧倒的に多いため、読書慣れしていない人には読みにくいかもしれない。
     また、ボストンの作風は非常に穏やかなため、近年の児童書に多い活劇的ファンタジーを期待して読むと、完全に当てが外れるのでご用心を。

  • 正直、ちょっと先が読めてしまうが、海の神秘、海の不思議、海が隠しているものへの子どもの頃の好奇心などが思い出される。
    物語そのものというより、海や嵐などの自然の描写がとても良い。

  • 親の知らない子供の経験は、子供を成長させるわね〜

  • 海の描写がとてもよかった。
    児童文学には、もう私にはわからなくなってしまった摂理があって、魔法よりもなお神秘的なそれが私にはとても魅力的だ。
    その時、がわかるのもそのひとつの効果だと思う。
    お父さんとお母さんがとても素敵なひとたちだった。

  • 訳者の猪熊葉子さんも書いていらしたが、物語というより散文詩とでもいいたくなるような言葉の響き、五感にうったえる感覚的で繊細な美しい作品。
    イギリス南西部のコーンウォールの海が舞台。夏に家族で訪れていた少年二人と海の妖精トリトンの交流と冒険が描かれていく。

    作者のルーシー・M・ボストンは、イギリスの古い館に住み、その一連の『グリーン・ノウ』物語で知られているが、それとは趣の違うこうした作品も書いていたのですね。
    イギリス南西部の海岸といえば、コーンウォールに隣して、以前読んだ『まぼろしの白馬』の舞台デボン州などもあり、独特の景勝と風土は、海馬伝説や妖精の存在を感じさせる自然の神秘さが濃く漂っているようだ。

    またあとがきで猪熊葉子さんが引用されている、ボストン夫人の講演の言葉がとても印象的。
    “わたしは大人に、喜びについて思いおこしてもらいたい――子どもには、自分の感覚を信じて使い、直接ものごとを体験するようなはげましをあたえたいのです。耳や目や鼻を、指や足のかかと、皮膚や呼吸を使い、筋肉の動き、リズム、胸の鼓動の作りだす喜びを味わい、本能的な愛や憐れみ、未知のものに対する畏敬の念を知ってもらいたいのです。直接的な感覚の刺激から想像力というものは生まれるのですから……”
    現代に生きる私たちにこそ、より大切なことのように思われる。

  • 「リビイが見た木の妖精」の自然描写も美しかったけれど、こちらも負けず劣らず素晴らしいものでした。  「リビイ」が「森、林、川、田園」が舞台ならこちらはタイトルからも明らかなように「海」を舞台にした自然賛歌です。  しかもその自然賛歌はいわゆる「観光レジャー的」なそれではなく、どちらかというと原始的・・・・というか、ありのまま・・・・というか、要するに「美しくて癒される」という類のものじゃなくて、プリミティブな信仰に近いもの。  畏れと憧憬と親しみがないまぜになったもの。  自然の厳しさは厳しいままに、現代のパック旅行のような短い、おいしいとこどりの滞在で感じられるあれこれとは完全に一線を画しています。  24時間、365日をそこで過ごして初めて見たり、感じたりすることができることを言語化した物語だと思います。

    「リビイ」を読んでいる時にも感じたことだけど、本を読んでいる間中、まるで皮膚の毛穴が全開になっているのと同じように KiKi の五感が全開になって、物語の中心に位置しているイギリス人の少年、トビーとジョーが見るもの、感じるものを疑似体験しているような気分になり、何度もゾクゾクときちゃいました(笑)。  う~ん、やっぱりこういう物語はいいなぁ!!!

    (全文はブログにて)

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