- Amazon.co.jp ・本 (389ページ)
- / ISBN・EAN: 9784001141436
感想・レビュー・書評
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約100年前の児童書である。
最近の児童書やYAは社会を反映して、離婚や虐待や貧困や発達障害、LGBTQなどが描かれることが多いが、昔の児童書ってこうだったなあ、と思う。
ひねくれた子どもだったのでアニメの『ポリアンナ物語』が嫌いで、そのせいでこの作者にも興味がなかったのだが、いやいや、なかなか良かった。
主人公のデイヴィッドは無垢な少年である。
ハイジやセドリック(『小公子』)もこういうキャラだった。所謂大人が評価するお利口な子どもではなく、本当に邪気がなく、天衣無縫で、やさしく、明るい。こんな子どもは本当はいないのである。いないのではあるが、いたらきっとこんな風に世界は良くなるな、と思わせてくれる。
父と二人きりで山の上の小屋で暮らしていたデイヴィッドはヴァイオリンの(作曲、即興演奏もできる、というか即興を最も得意とする)天才で、ヴァイオリンだけでなくラテン語もフランス語もドイツ語も父から教えてもらい、自然を心から愛し、美しいものだけに囲まれて暮らしてきた。
しかし、父は自分が余命いくばくもないことを悟り、息子を連れて山を下りる。そして途中で死んでしまう。少年はヴァイオリンしか持たず、名前もデイヴィッドとしかわからない。親切な農家の夫婦に引き取られるが、農家の仕事は上手くやれないし、教会に行ったこともないのでキリスト教徒としてのふるまい方も身についていない。
しかし彼のやさしさ、自然を見つめる目、そして音楽が、頑なだったり、利己的だったり、希望をなくしたりしている周りの人々を変えていく。
これほどの奇跡を起こすなら、普通の子供では無理。
こういう風に書くと、全く絵空事、と思う人もいるだとうが、ディテールがきちんとしてきるので、すごく心に響く。
これは私がすっかり汚れちまった大人だからかもしれない。
子どもだったら、デイヴィッドのあまりのいい子ぶりに反感を抱いたかもしれない。
しかし、今は、こういう本にも価値があると思う。こういう世界がたとえ現実にはなくても、読んでいる間だけでもこういう世界にいられることが幸せ。
何度か涙が出た。
伏線はすべて回収され、デイヴィッドの出自の謎も解け、完全なハッピーエンド。
一種の貴種流離譚であり、そこも子どもは好きだと思う。(ハリー・ポッターしかり。)
読めるかどうかは子ども次第だが、現代の子どもにも、意外と面白いだろう。
しかし一番楽しめるのは俗世間に疲れ切った大人かもしれない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「大切な父親をうしなったデイヴィッドは、名字すらわからないまま農家のホリー夫妻に引き取られます。あらゆる感動をヴァイオリンで奏でる、無邪気な謎の少年は、やがて周りの人たちにとって、かけがえのない存在となっていきます。小学5・6年以上。」
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学校教育とは、何かと思うわねー
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ヴァイオリンを弾く少年の話。自然の中の美しさに触れたくなります。
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デイビッドの存在が全ての人に幸せを与えてくれる。
孤児となった彼に取り巻く人々は、彼と、彼のバイオリンに心を癒されて絡み合った糸が解けて行く様子が、暖かく描かれている。 -
うわぁぁぁん
おもしろい
泣ける
なんか似てるな〜と思ってたら
ポリアンナの作者だったー!
にてるなー!
主人公が超!いい子
いい子で天才でふしぎちゃん
すれちがってるカップルが出てくる
このへんもおもしろいけどポリアンナのおばさんっぽい -
純真で美しいものは、なににも負けないのだということ。それを信じていていいのだと励まされる。単なる「よい子ちゃん」話で終わるんじゃなくて、デイヴィッドの素性が知らされる最後には、ほぉ〜と普通にびっくりさせられる。27 Aug 2007