- Amazon.co.jp ・本 (92ページ)
- / ISBN・EAN: 9784001155792
感想・レビュー・書評
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何を今更の児童書の名作。
1954年「百まいのきもの」というタイトルで石井桃子さんの訳で出されたものを、再訳して2006年に世に出したのがこちら。
石井桃子さんはその年100歳。どのような思いを込められたか後書きで語られている。
私と同じく、子ども時代に旧訳の方を読んだという方が多いかもしれない。
時の流れで「きもの」は「ドレス」になったが、言葉の優しさと話の切実さは変わらない。
学校内で起こる虐めを、つい加担してしまった少女の目線で語っている。
虐めのターゲットは、ポーランド移民のワンダという女の子。
みすぼらしく目立たないワンダが「家に百枚のドレスがある」と発言したことで、女の子たちの執拗な虐めが始まる。
過激な表現こそないが、どんな動機で虐めが始まったか、その歪んだ理屈や心理と結末まで、丁寧に描かれている。
マデラインという主人公の女の子は、傍で見ていて何も言えず何も出来なかった自分を、ワンダが去った後で強く反省してこう決心する。
「黙って見てなんかいないこと」
一筋の希望を感じるラストだが、ことはそう簡単ではない。
虐めの張本人だったペギーという少女はあっけらかんとしているからだ。
人の心の中には、誰かを虐げて喜ぶ部分があるのだろうか。
デフォルトとしてあるのならば、ユーザーは変更して防がなければならない。
ではどうすれば?私は考えずにいられない。
教育にそれがあると信じるひとは、このような本を読んで話し合ったりするのだろう。
だが現実には、罪悪感のかけらもない人というのは存在する。
その見分け方と対処の仕方を説いた本も数多い。
「相手の身になって考えろ」と言われても、未経験のことは想像さえ出来ないものだ。
教育の最大の課題はそこかもしれない。
人を傷つける大人になってほしいなどとは、誰しも思わないだろうから。
戦後9年という頃に、このような作品が出ていたということに、あらためて驚いてしまう。
もしかしたら自分も知らずにやっていたかもしれないと、ふと自らを振り返ってしまう。
胸がざわつく話のようだが、虐められた側が手を差し伸べるラストは涙が滲むほど爽やかだ。
ちなみに、ワンダの「百枚のドレス」は本当の話で、後半綺麗な挿絵であらわれる。
児童書のカテゴリーに入るが大人にもおすすめ。
子どもたちには、マデラインのメッセージがしっかり伝わることを願う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
以前研修で図書館司書(本職の!)方が、「手紙」というテーマでブックトークをして下さった時、リストに入っていた一冊。
小学2年あたりでガマくんとカエルくんの「お手数」を国語でやるのだったか…その絡みでこのテーマを選ばれたように記憶している。
切ないながらも思春期の入り口の女子社会の現実を、ある子どもの目を通して書かれている。子どもの揺れ動く心、逞しさ、優しさを感じ、大人にありがちな固定的な見方を改めさせられるそんなお話だと思う。 -
百枚のきもの、の改訂版です。
同じ作者で挿絵で翻訳者の、内容はほぼ同じ本なので、2度読んだことになります。
しみじみした挿絵とお話でした。 -
小学4年生の時に初めて読みましたが、その何とも言えない切なさ、さみしさ、そして最後の場面のほんのりと立ち上る暖かさ、みたいなものがとても印象に残り、大人になって購入しました。
「百まいのきもの」と「百まいのドレス」両方持っていますが、挿絵が左右対称なのが面白いですね。 -
再読。
やはり一気読み。 -
このお話を読んで考えさせられたのは、
人を批判するより
自分がどうあるべきかということ。
自分をきちんと持っている人でいたいな。 -
終わり方がしみじみ。追いやられた側が思いやりを差し出す。いじめられている子どもの挙動、いじめている側の子どもの心理を丁寧に描いている。好悪、善悪の感情を交えていないかのように。あと、ルイス・スロボドキンの挿絵が素晴らしい。提示のタイミングも。下手な感動作ではないが、考えさせられる良作。
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誰かを傷つけると自分も傷つく。引きずる。一度してしまったことは無かったことにはできない。そういう苦い経験をして心は育っていく。
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2015年、娘へのクリスマスプレゼント。サンタより。9歳5カ月。
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「だまって見てなんかいないこと」という決意。
自分が何をしたのか、
あるいは何をしなかったのかを考えること。
できてるつもりの大人は多いだろうけど、
すごく大切な事。
とくに今はそれをしっかり意識する必要がある時だと思う。