グローバル時代のアジア地域統合――日米中関係とTPPのゆくえ (岩波ブックレット)

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  • Amazon.co.jp ・本 (64ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784002708287

作品紹介・あらすじ

TPPに揺れる日本。アメリカや、中国との関係は今後どうなっていくのか?ASEAN+3、ASEAN+6、APEC…アジアにすでに存在する様々な地域「間」協力の様相を描き出し、混迷する国際状況をわかりやすく解説する。また、激動のEUの経験を踏まえながら、アジアの地域統合の今後を展望し、グローバル時代に日本が進むべき道を提言する。

感想・レビュー・書評

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  • ブックレット(パンフレット)形式の小著ながら、主に政治経済面から表題の課題を整理した良書。
    欧州(EU)統合の研究成果をベースにしつつ、アジアでの地域統合を分析、そしてわが国の対応について展望を示している。本書で使われている図表には古いものもあって、現状については出典を確認して最新資料で検証する必要もあろうが、「おわりに」もあるようにわが国はアジアの統合に対して、「EUに例えれば、スイスになるのではなく、せめてイギリスに、中に入った上で、少し客観的に地域統合に関与する国になればよい。」という意識をもって、10年から20年かけて関係深化を図っていく必要がある、という著者の主張には共感。

  • アジアの地域統合とそれにかかる日本の課題。
    副題の「日米中関係とTPPのゆくえ」については、
    あまり触れられていなかったし、
    入門書としては読みづらかったかな。

  • 羽場久美子著「グローバル時代のアジア地域統合」岩波ブックレット(2011)
    *地域統合の進展には、大きく分けて4つの要因があります。(1)グローバリゼーションによる国境を超えた人、モノ、サービス、情報の移動。(2)その結果国家単位を超える経済領域が形成され多国籍企業の進展に伴って、世界的な競争が始まる。(3)その競争に勝てないと考えたヨーロッパが統合の深化と拡大によって国家規模を超えた経済領域を形成し、その競争力確保を狙い大きな成功と成果をおさめたこと。(4)これらすべての背景にアジアの経済力の成長とそれへの対応があること。
    *日本上場企業(890社)の営業利益を地域別に比較してみると、欧州、アメリカからの利益が縮小し、アジアからの利益が39.4%、ほぼ4割をアジアが占めている。アジアとともに成長することがいかに日本の企業戦略にとって重要かということがこのデータに示されている。
    *筆者は地域統合を是とする立場から、広域地域経済圏には原則賛成である。その意味ではTPPも行うべきと考えている。しかしその際の原則は、(1)地域にとってもまた参加国にとってもウィンウィンの関係であること。(2)一国がヘゲモニーを取るのではなく、参加国の関係が対等であること。(3)例外なき関税撤廃と一挙の市場開放するのではなく、その国の国益や社会構造にかかわる問題については、例外品目を設定し、交渉だけでなく制度や法をもうけてそれを守り保証することの3点が保証されていなければならない。
    *アメリアとの貿易が15%を減少し、中国とが20%、アジア全体の貿易が60%と圧倒的にアジアとの自由貿易のメリットが大きい。アメリカ以外にもアジアにも広げなければならない。
    *TPPが是か非かではなく、世界をみるべきである。米/欧/アジアの三極構造の中で、現実に最も経済的に依存しているアジアの地域強力関係を軸として強化しつつ、アメリカとの協同、さらに欧州との協同を行う事が現実的である。

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著者プロフィール

青山学院大学国際政治経済学部教授。
著書等に
『21世紀 大転換期の国際社会 いま何が起こっているのか?』
(羽場久美子 編、法律文化社、2019年)、
『アジアの地域共同 未来のために
 東アジア共同体シリーズ 第3巻』
(羽場久美子 編著、明石書店、2018年)、
『アジアの地域協力 危機をどう乗り切るか
 東アジア共同体シリーズ 第2巻』
(羽場久美子 編著、明石書店、2018年)、
『ハンガリーを知るための60章 ドナウの宝石 第2版
 エリア・スタディーズ20』
(羽場久美子 編著、明石書店、2018年)、
『アジアの地域統合を考える 戦争をさけるために』
(羽場久美子 編著、明石書店、2017年)、
『ヨーロッパの分断と統合 
 拡大EUのナショナリズムと境界線 包摂か排除か』
(羽場久美子 著、中央公論新社、2016年)ほか多数。

「2021年 『移民・難民・マイノリティ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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