城を追い出された親兵衛は、河鯉守如の息子、高嗣が今まさに処刑されようというその時にい合わせただけで、実は高嗣の乳母だったという政木狐の霊力により高嗣は助けられ、素藤と妙椿コンビが再び館山を取り返し、国元が大変なことになっていること、どうすれば彼らの裏をかくことができるかの作戦、また妙椿の正体など様々に政木狐に教えられ、親兵衛はひとまず城に戻ることとする。
伏姫の加護がある親兵衛は簡単に敵を掃討し、誤解の解けた殿さまからの謝罪を受け、親兵衛再び七犬士を探す旅に出る。
その頃七犬士達は、先々代の殿様及びその主筋の殿様の菩提を弔うために結城に庵を結んだ﹅大(ちゅだい)法師の元へとやってくる。
そこでまた地元の悪坊主たちとひと悶着あり~の、あわやという時に遅れてきた親兵衛がおいしいところを持って行き~の。
ちょっとね、飽きてきました。親兵衛アゲ。
いいところを全部親兵衛が持って行くのなら、残り七人要らないじゃないの。
「いやいや、八人の間に格差はないよ」と里見の殿様は仰せられ、この度めでたく八犬士を召し抱え、立派な家まで建てておやりになる。
八人に一軒。
シェアハウスといえば聞こえもいいけど、まあ、合宿生活なのね。
そして数年後、それぞれ犬にちなんだ苗字を持つ八犬士達を呼び集めた殿さまは、彼らの名字を金碗(かなまり)としたい、と。
金碗っていうのは﹅大法師の本名で、由緒ある苗字なのであるが、武士が苗字を変更するのには将軍の許可がいるということで、誰かが京都に出向かなければならない。
で、親兵衛がいうわけよ。
「みんなは長年旅をしたけど、自分はずっと山の中で育てられているので世間を知らない。だからぜひ京都に行きたい。行かせてくれ」
千葉から大阪まで船で行く。
天候の関係で三河に足止めを食い、海賊に襲われる。
ここで初めて親兵衛は、自分がちょっと思いあがっていたことを痛感する。
そうなんだよ。九歳のくせに大人に対して上から目線はいかがなものか、なんだよ。
そして京都で将軍にお目通りがかない、苗字変更の許可を得て、さあて帰国の暇を…と来て、許可が下りない!
新兵衛、京都にとどめ置かれたまま次の巻へ。
さて、戦いが終わって平和な時を過ごす八犬士達。
この辺りがちょっと退屈だな~と思いながら読んでいたら、作者の弁が。
“抑(そもそも)和漢、稗説(さうしものがたり)に遊ぶ諸才子、新を出(い)だし奇を呈して、看官(みるひと)の愛懽(めでよろこ)ぶ条(くだり)は、作者もおのづからにふですすみ、又話説(ものがたり)平和にて、看官(みるひと)のすさめぬ(不欲)条(くだり)は、作者難儀の文場(ぶんじょう)なり。遮莫(さばれ)是等(これら)の平話(ただごと)なければ、新奇も倒(なかなか)に綴るに由なし。”
なるほど。
それから室町時代の武士の心得。
“武士たる者、時運により、勢ひ竟(つい)に究(きわま)りて、敵の為に擒(とりこ)になれるは、恥に似て恥にあらず。”
生き延びて、反撃の機会を窺うことの方が良しとされていたようです。