梅暦 下 (岩波文庫 黄 232-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (437ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003023228

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  •  下巻の収録2作は1838(天保9)年の「英対暖語」と1841(天保)12年。
     峰次郎を慕うお粂・お房の姉妹が中心人物となっている感があるが、上巻に出てきた人物がたくさん再登場し、最終話ではかなり入り乱れて複雑な話になっている。ただし上巻最初の「春色梅児誉美」に出てきた重要なお長(お蝶)は最後にちらっとしか出てこない。
     読んでいてやはり江戸時代の町人階級の風習に興味が向く。男どもはみなモテモテで、無責任に複数の女に手を出すのだが、そうした浮気はどうやら男の甲斐性などと見られて強く糾弾されることがない。おまけに、最後は女性たちの一人を正妻に、一人を妾に、などと一夫多妻状態に落ち着いて大団円となって、しかも女性たちはそれをよしとして甘んじている。江戸時代の町人階級でさえ、こうした一夫多妻制が多く見られたのだろうか。もちろん、収入のある男に限られたのだろうが・・・。
     ジェンダーについて社会倫理がどうのという見方はさておいて、ここでは、無個性で思慮の無い男どもの曖昧な「われわれ」の共同主観の眼前で、詰め寄ってくる美女たちの言動や情緒の花のような模様を、夢の中の万華鏡として楽しむというのが、本作の要点であろう。
     男たちにとっては誠に都合の良い社会システムである。その都合の良い幻想の中で、では女性たちは「道具」なのかというとそうでもなくて、それなりに生彩があって生きた人間性をもって描出されているところが面白い。
     江戸後期の文学世界の一角として非常に興味深くもあるし、物語内の「幻想」を芸術的現象として味わうことのできる、やはりこれは「名作」と呼ぶべきものだろう。

  • 春抄媚景英対暖語
    春色梅美婦禰

    著者:為永春水(1790-1844、小説家)
    校訂:古川久(1909-1994、名古屋市、日本文学)

  • 梅児誉美の続編、がおさめられています。文学的には評価されてないようですが、もしかしたらこちらの淡々とした話の進み方の方が実際には近いのではないかしら、と感じさせられます。もっと読まれて欲しい一冊です。

  • 未読。

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