みれん 改版 (岩波文庫 緑 6-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003100639

作品紹介・あらすじ

原タイトル: Sterben

感想・レビュー・書評

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  • 恋愛小説ですね。
    訳者は森鴎外です。作家のシャニッツラーと鴎外は同い年で交流もあったそうです。また職業も医学関係で、作家でもあり、共通するところが多々あった関係で日本で最初にシャニッツラーを紹介したのが鴎外との事でした。
    「みれん」は原作は「死」なのだそうです。
    肺を患ったフェリックスと看病する恋人のマリイとの生業を揺れ動く心理描写を巧みに駆使して描かれています。医者のアレフレットとの交流も「死」への恐怖から、辛辣であり、友情の温かさを感じさせる複雑な感情を表現されています。
    復刻版であり、鴎外訳ですから旧仮名使いですので、少し読みにくいのと、事態感覚や男女関係の立場の違いなど異にする所は有りますが、芸術作品を観賞する感覚と恋愛小説の面白味を味会う縁になればいいのでないでしょうか。

  • 肺を患い余命一年を宣告された男と、彼の傍に付き添う女。近づく死への恐怖から、不安定な情緒の波の中でどんどん陰鬱に陥り、殆ど幼児的と云えるくらいに女に弱々しくなっていく――いじけたり猜疑心を抱いたり依存したりしていく男。当初は男と共に死のうとまで思い詰めていながら、死へと傾いていく男を前にして、次第に心境が変わっていく女。

    二人の心情が、すれ違いながら、移り変わっていく。初めは「あなたと一緒に死ぬ」と云った女に、「俺にそんなことさせる権利は無い」と云う男が、死に際になって「俺と一緒に死んでくれるって云ったよな」と心中を求めるも、女はそれに後ずさりしてしまう。

    文学的な「気取り」など無い、死に直面した人間のつまらない弱さ。トルストイ『イワン・イリイチの死』の如き、死を見つめることを通して人間存在の深奥を抉り出してくるような趣は、本作には無い。些か物足りない読後感と云えなくもないが、医師でもあったシュニッツラーだからこその人間診察といえるかもしれない。

    同じく医師でもあった鴎外による訳、翻訳物に特有のぎこちなさが殆ど感じられず、見事。

  • 「こゝへなら人の喜んでどなる聲なんぞは聞こえない。ここなら寂しくしてゐられるのだ。己達はこんな所にゐなくてはならないのだ」まあ、死を目前に恋人の女の存在にすがる男のなんと傲慢であわれなこと。ダメな男を自分に重ねてしまい、最後は奥さんにやさしくしよう、と思う。小島清二郎さんの解説のとおり、シュニッツラーをもっともっと読みたくなった。学校の図書室の鴎外全集に、小島さんが紹介している鴎外訳の殆どはあった。「アンドレアス・タアマイエルが遺書」の鴎外訳は青空文庫から、とりあえずKindle にダウンロード。

  • 森鴎外の翻訳だったので買ってしまいました。まだ三分の一くらいしか読んでいないですが…男女の古典的恋物語って感じです!

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