- Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003106235
感想・レビュー・書評
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視点で世界は変わるということ。
そう思うと、この世界は一つだけではないように思える。
自分がそう認識しているだけで、見方によって世界はその表情を変えていく。
異なるものと変容していく。
絶対的なものなどない。
恐ろしくあり、不可解な世界。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
最盛期の詩とはまた手触りが違う、短編集。
眩むような白昼夢に、
独特な妖艶さが漂う『猫町』
騒がしいはずなのに音がない、
ホッパーの絵画を彷彿とさせる『郵便局』
車谷長吉の強迫観念のような『虫』
あたりがお気に入りです。 -
萩原朔太郎は、普通なら文章に表せないような曖昧な感覚を掬い上げるのがほんとうに上手な人だ。
「月に吠える」の序で彼は次のように述べていた。
「詩とは感情の神経を掴んだものである。生きて働く心理学である。すべてのよい叙情詩には、理屈や言葉で説明することの出来ない一種の美感が伴ふ。これを詩のにほひといふ。」
彼の散文にも同じ「詩のにほひ」が漂っている。感覚の芯のところをしっかりと掴んでそれを言葉にできる、これが詩人の力なのだなぁ。
以下に気に入ったものを取り上げてみる。
「群衆の中に居て」
中学生の頃に一度読んだことがあったのだが、上京して初めてこの作品の意味するところを諒解した気がする。人が本当に孤独を感じるのは一人きりの時ではなく、街でたくさんの他人に囲まれている時だ。とはよく聞く話だ。都会の群衆の中には孤独がある。その孤独の素晴らしさや楽しさをここまで上手く表現してくれた朔太郎には喝采を送りたい。
「虫」
鉄筋コンクリートという単語の「本当の意味」を探す。実は私もたまにこのようなことを考えてしまうのだが、これって異常なのだろうか?芥川龍之介「歯車」梶井基次郎「檸檬」と並んで、精神状態が悪いときの私が共感する短編の一つ(笑)
「詩人の死ぬや悲し」
「著作?名声?そんなものが何になる!」と芥川龍之介。一方、「余は祖国に対する義務を果たした。」と満足して死んだネルソン。このネルソンの臨終の言葉は有名だけれど、聞くたびに私は心の中でかすかな反発を覚えていた。そのもやもやの正体がここにきてはっきりした。欺瞞だ。
萩原朔太郎。感性の塊みたいな男だ。 -
表題作は見知らぬ美しい町で人間の姿をした無数の猫に出会う幻想譚、溢れるノスタルジア!『ウォーソン夫人の黒猫』はポーの黒猫思わせる病んだ内容で非常に好み。そして驚いたのはある作中で中国人が"〜あるネ"とか言ってること。この時代からある口調とは知らなんだ。。
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「坂」
「老年と人生」
とりあえず中年までは頑張って生きてみるか、という気持ちになった。 -
猫町、タイトルで思わず買ってしまった一冊。学の乏しい私には難しく理解するのに時間がかかってしまった。やっぱりまだ詩というものは理解しがたい。だが「猫町」や「ウォーソン夫人」等の短編小説は好きな部類かもしれない。
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村上春樹の『1Q84』に登場する“猫の町”のモチーフになった作品だと知ってからずっと読みたかった本。短編集かと思いきや、短編、散文詩、エッセイとバラエティに富んだ18篇。「猫町」の短いながらも強烈な異体験。「ウォーソン夫人の黒猫」はエドガー・アラン・ポーの『黒猫』のような趣。詩集は『月に吠える』しか読んでいないので『青猫』を読んでみようと思う。2012/159