- Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003107157
作品紹介・あらすじ
隅田川の中洲に理想の町をつくろうとして挫折する奇妙な男たちの物語「美しき町」、"夢見心地になることの好きな人々の為めの短篇"「西班牙犬の家」など、選り抜きの8篇を収録。芥川・谷崎と共に大正文学を代表する早熟の天才詩人・作家佐藤春夫の、上質の酒の酔い心地のような、小説を読む楽しさを満喫させる短篇集。
感想・レビュー・書評
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★3.5 文章と世界観が割と好みだなあ。
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佐藤春夫。河出文庫から出ている『南方熊楠—近代神仙譚』をだいぶ前に読んだきりだったが、あるきっかけがあって、この文庫を手に取った。一番最後に収録されている『山妖海異』は著者自身と熊楠が生まれた土地である熊野の言い伝えをあれこれ書いた随筆で、これが一番『南方熊楠—近代神千譚』に近い。『星』『李鴻章』『F・O・U』は異国が舞台の話。『西班牙犬の家』『美しき町』『陳述』『月下の再会』は国内が舞台の話だが、いずれもバタくさい。つまり洒落ている。ほら、こんなのも書けるよ、と次々手を変え品を変えいろんな料理を出されている感じ。でも嫌味な感じはなく、とても楽しく読んだ。『美しき町』は、概念を弄ぶことの楽しさと美しさの究極みたいな作品。『陳述』の、心理戦の繰り返しの中でどうにもならないまま破滅に突き進んでいく展開には思わず息をのんだ。
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早熟の天才詩人•佐藤春夫の短編集である。
多彩な作風で、同著者とは思えないほどのバリュエーション豊かな作品になっている。
私のお気に入りは、若者2人と老人が理想の町を創り上げる『美しき町』と、明末清初の男女の三角関係を描いた『星』だ。
幻想的で、耽美な世界観に引き込まれ、その時代や場所にタイムスリップしたような心地に誘われる。 -
各短編の発表年は大正6(1917)年から昭和9(1934)年、そして飛び抜けて遅い巻末の「山妖海異」が昭和(1956)31年。
自分は『田園の憂鬱』の作者とくらいしか印象がないが、当時文壇で「まれに見る文才」などともてはやされた人らしい。本巻も確かに巧く書けているが、かといって文学的興趣が胸を打つものはなく、いわゆる「器用貧乏」というやつではないかという気がする。
本書の中では唯一「F・O・U」は良い作品で、心に残った。 -
西班牙犬の家
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表題作二つと月下の再会 F・O・U が好き
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散歩の途中で見つけた不思議な家の幻想譚。佐藤春夫の処女作だが非常に詩的な話である。この文章を通して何らかの思想を伝えようとしたわけではない。抒情的な雰囲気と妄想的な感覚を伝えたかったのだろう。この話を読むと、萩原朔太郎の「ウォーソン夫人の黒猫」を思い出す。夢なのか現実なのか。狂気なのか真実なのか。好きな話である。探偵趣味の香りもして。
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解説:池内紀
西班牙犬の家◆美しき町◆星◆陳述◆李鴻章◆月下の再会◆F・O・U◆山妖海異 -
新書文庫
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「西班牙犬の家」「美しき町」「星」「陳述」「李鴻章」「月下の再会」「F.O.U」「山妖海異」