- Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003120613
感想・レビュー・書評
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『原爆詩集』峠三吉 #読了
時には、どんなに細かく丁寧に描写した文章よりも、短い言葉で書かれた詩の方が、くっきりとその瞬間のヒロシマの姿を読者の目の前に立ち表せることがある。
作者の怒りが力強い詩を通して、とてもよく伝わってきた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
〇詩の抱えるおかしみと、それを上回る描写と。朗読がおすすめ。
本日は終戦記念日。
1945年8月15日に、天皇陛下が終戦宣言を出してから、はや75年。
そんな節目の年に、読むことが意義があると思い、読み始めた。
有名な部分は、「序」の、「にんげんをかえせ」という一節だ。教科書でも目にした方は多いだろうか。その「序」から始まる25編の詩集。
この原爆詩集は、あの日のヒロシマのことを、住んでいた筆者が書いた詩集である。
広島に原子爆弾が落ちたのは、終戦の少し前、1945年8月6日、8時15分。
峠は、爆心地から3kmほど離れた町で、被爆している。
その彼が書いている詩であるから、現場の生々しいリアルな表現がふんだんに盛り込まれていながらも、そのときにおそらく死に絶えてしまった彼ら一人ひとりの感じた感情が、実際に目で見たかのように読者に訴えかける、強い文章の集まりだ。
岩波文庫版には、本編と筆者のあとがきのほか、大江健三郎とアーサー・ビナードによる贅沢な解説がついている。
アーサー・ビナードはその解説の中で"日本語をヒバクさせた人"と評する。
被爆という単語は、本来なら放射能等が人類の体を蝕む要因となるものだが、ヒロシマで実際に起こったその「被爆」を、文章表現に落とすのはなかなかできない。それを筆者・峠三吉は巧みな誘導と言葉づかいでそれを実施している。
詩であるから、もちろん目で追って読むだけでも良いのだが、よろしければ、詩のおかしみと、被爆者の様子とを間近に感じざるをえない「朗読」という手段を、この本に関しては特に、読者諸兄にはオススメしたい。 -
戦争の記憶が薄れていき、戦争を知らない世代が多数のこの時代に、この詩集が、もう一度一石を投じて欲しい。
全ての人に、この詩集の言葉一つ一つを、心に刻んでほしい。切に願います。 -
焼け付く喉に願う水、眼球は溶け盲目の中手を繋ぎ進むが爛れ落ちる手の皮膚、落ち剥がれる踵。
人が人にできる暴力の中で、打ち震える恐ろしさを極める。
この詩集が戦争を呪う媒体なら、私も既に同じく呪う媒体となり得よう。
『死』と『その日はいつか』が心を打つ。
少ない言葉の方が、より鮮明に描く。
しかし自分の想像より更に当時の方が悲惨だと考えさせられる。 -
「広島、長崎に投下された原子爆弾によって命を奪われた人や、全世界の原子爆弾を憎悪する人々に捧げられた詩集。「ちちをかえせ ははをかえせ」で始まる「序」は、反核運動の旗幟としてひるがえる。自らの被爆体験をもとに、戦争や原爆に対する激しい抗議と平和への強い決意を訴える言葉の記念碑。(解説=大江健三郎、アーサー・ビナード)]
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この読みづらさにこそ向き合え。
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「ちちをかえせ ははをかえせ/としよりをかえせ/こどもをかえせ//わたしをかえせ わたしにつながる/にんげんをかえせ//にんげんの にんげんのよのあるかぎり/くずれぬへいわを/へいわをかえせ」