トム・ジョウンズ 1 改版 (岩波文庫 赤 211-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003221112

作品紹介・あらすじ

英国サマセットシャの名望家オールワージ氏が帰宅すると寝床の中に赤ん坊が…。無鉄砲だが正直率直、陽気に生き抜いてゆく捨て子トムの波瀾万丈の物語。法律家、新聞社主宰としても活躍したフィールディング(一七〇七‐五四)の健康な精神が生んだ名篇。

感想・レビュー・書評

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  • 18世紀半ば(1749年)に刊行された小説。旧くさいかなと予想し覚悟して読み始めた。予想通り旧い感じがする面とそうでない面の両面あり、と感じている。

    18世紀らしく旧態な感じがするのは、筆者がやたらと気配を見せること。例えば冒頭ほど近い下記の一節。
     「ところで読者諸君、…(中略)余はこの物語の途中で、必要と思うごとに何度でも脱線するつもりである。」〈第一巻/第二章 末〉
     他にも、下記のような一節。
    「読者よ、ご用心めされ。作者は軽率にも貴殿をオールワージ邸の丘のような高い丘の頂きにさそい上げてしまって…(中略)相成るべくは読者にもご同道願いたいのである。」〈第一巻/第四章〉p24~

    かような具合に、筆者がときに講談師の如く顔を見せるのである。
    いわゆる「神」の目線で小説を書き進める、というスタイルが、この時代まだ確立していなかったのだろうか。 あたかも、作者フィールディングは、第三者の目線で小説を書くことへの、何か衒いのようなものがあった如くである。
    筆者が読者に語りかける。それは、ときに言い訳めいて感じられるし、小説世界に没入することを邪魔しているようにも感じる。 これらの面、18世紀刊である旧さを思わせる。近代的な小説手法が確立する前の黎明期なのかな、と考え、我慢して読み進めた。

    以上、旧さを感じた面であるが、意外にも時代を感じさせない面もある。登場人物の感情、心理の描写に関して、きめ細やかに書いているのだ。しかも、ときに矛盾する感情の併存や、心情と打算が相克する様、そのうえで、心情と異なる意思決定がなされる過程なども、しっかり描いている。この面については、すでに近代的な小説に遜色無いと思わせる。

    さて、物語について。
    英国の田園地帯、オールワージ翁の大邸宅。ある日、彼の寝室に赤子が置かれていた。いわば「捨て子」である
    。この子が成長しトム・ジョウンズ少年、青年となる。オールワージ氏は善意の人だが、その妹の子ブライフィル青年は、密かに悪意をもってジョウンズ君を陥れようと画策する。つまり「悪者」。一方「隣家」の大地主にウェタン家、その令嬢ソファイアとジョウンズ君の恋模様も物語の軸となる。
    そして、トム・ジョウンズ青年は、嫡子でないにも関わらずひねくれたところがなく、素直で男気のある好青年。しかも美貌の男子である。

  • 旧字旧仮名遣いはちょいと厳しいけれど、これぞ古き良き世界の名作文学という感じに嬉しくなってしまう。

    主人公のトム・ジョウンズは、地元の名士オールワージ氏の寝床の中に捨てられていた子どもだ、
    当時の社会では、主に祝福されることなく生まれた子どもを育てるなんていうのは、キリスト教の教えに反する行為で、敬虔なクリスチャンであるというのなら、せめて暖かいおくるみに包むなりして、教会の前に捨ててくるのが正しい行為であると、オールワージ氏の行動はかなりな批判を受けるのである。
    オールワージ氏は、その行動の是非をいちいち自分で考えて行うので、必ずしも世間の正義と彼の正義は一致しないが、オールワージ氏の論理的な考え方の方が現代的と言えると思う。

    幼い頃は、その出自により村人から忌み嫌われていたトム・ジョウンズだけど、オールワージ氏に愛されて育ち、いささか自堕落で手癖が悪くても、基本的には自分の損得より他人のことを思いやれる素直な青年に育つ。
    オールワージ氏には妹があり、彼女の一人息子であるブライフィルとは兄弟同然に育つが、成長するにつれトム・ジョウンズの利他的な性質とブライフィルの利己的な性質、また見た目でも、村の女性陣から好まれる美しい青年となったトム・ジョウンズと、いささか見劣りのするブライフィルとの差が歴然としてくる。

    一巻では主要人物の紹介といった感じで、小さなエピソードがいくつも紹介されるが、大きな流れとしてはトムが女たらしに成長したということくらい。

    古き良き世界の名作文学であると思ったのは、地の文で作者がちょいちょい解説したり、注釈したりして顔を出すところ。
    最近では伊坂幸太郎の『ホワイト・ラビット』がこのような構図の作品だけれど、最近の読者にはこれが不評だったのが残念。
    私は嬉しくって読みながらにやにやが止まらなかったのだけど。

    今後トムの人生にどんな出来事が起きるのか、もう楽しみでしかない。

  • ソファイアのことを好きでいるのに、ウォーターズ夫人らとの関係は続けてしまうトムが特徴的な作品だが、これは当時、けしからん小説だとして批判され、良家の娘が読むべきではない小説だとされていた。世界10大文学作品の一つ。古代ローマの詩人ホラティウスによるラテン語の引用が頻繁に出てくる。

  • 3.56/122
    『トムは捨て子だった.金持ちの家で快活な少年に育つが悪友のために勘当されて旅に出る.物語は無数の事件やエピソードがからんで発展し,トムの生活も波瀾万丈である.しかし彼は常に純情で小気味よい性格をもち続けて読者をひきつける.フィールディング(1707‐1754)の視野の広さ,精神の健康さが人間性の真実を写し出す.18世紀イギリスを代表する名篇.』(「岩波書店」サイトより▽)
    https://www.iwanami.co.jp/book/b247220.html

    原書名:『The History of Tom Jones, a Foundling』
    著者:ヘンリー・フィールディング (Henry Fielding)
    訳者:朱牟田 夏雄
    出版社 ‏: ‎岩波書店
    文庫 ‏: ‎300ページ(第一巻) 全四巻

    メモ:
    ・『世界の十大小説』サマセット・モーム
    ・英語で書かれた小説ベスト100(The Guardian)「the 100 best novels written in english」
    ・死ぬまでに読むべき小説1000冊(The Guardian)「Guardian's 1000 novels everyone must read」

  •  
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4003221117
    ── フィールディング/朱牟田 夏雄・訳《トム・ジョウンズ〈1〉19750616 岩波文庫》
    http://www.enpitu.ne.jp/usr8/bin/search?idst=87518&key=%A5%C8%A5%E0%A1%A6%A5%B8%A5%E7%A1%BC%A5%F3%A5%BA
     

  • 2010.10.16 購入

  • 親父の本棚からぱくってきて染みつけていらい返すことを考えていない

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