- Amazon.co.jp ・本 (185ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003221631
作品紹介・あらすじ
『創世記』にあるカインの弟殺しの話を五幕に書いた劇詩。カインに託して作者の悪魔主義を高揚したもので、発表当時非常な攻撃を受けた。
感想・レビュー・書評
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『旧約聖書』の「創世記」第4章のカインの逸話は、どう捉えるべきなのか困惑する典型的なものの一つだ。この作品は、戯曲形式によって、この問題に対するバイロンの解釈を示したものである。バイロンは聖書のこの場面には登場しないルシファーをして、カインに広大な宇宙空間から地球を遠望させ、また人類以前に絶滅した種族を語って聞かせる。このあたりのスケール感は見事だが、全体には劇的であるよりも、いたって形而上的な内面のドラマといった趣きが支配的だ。バイロンは殺人者として荒野を彷徨うカインの姿にこそ人間の本質を見たのだろう。
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彼の教義の1つたりとも学ばずに、のんべんだらりと生きてきた私としては、普通に物凄く面白かった。ルシファー(の口を借りたバイロン)が言うことにいちいち納得。
解説がまたとても親切。さすが岩波文庫。出版直後に教会関係者からは非難の嵐で、でも一方で賞賛する人たちもいて……ってそっちの経緯も興味深いです。
第3幕、カインを呪うエバの長台詞が凄まじい。 -
本棚片付け中に発見した1993年の復刻版。今読みかけているが、ルシファーが聖☆おにいさんの顔で浮かんで困る。
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めちゃくちゃおもしろかった。
弟殺しのカイン、中二病臭あふれるカイン! -
「神」という存在に対するカインの言葉を借りてのバイロンの批判の数々は、らしいな、というのと同時に激しく共感しました。善とは悪に対する相対的なもので、悪が存在しなければ善という概念も存在しない、よって神は自分の善行を称えさせるために必然的に悪を必要としたのだというような意味のこととか、信仰の証しとして生贄を要求する神に、殺人を咎める権利があるのかとか、宗教というものが抱える矛盾を、すごく突いてきます。
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聖書のエピソードであるカインのアベル殺しをバイロンが戯曲化したのがこの『カイン』です。失楽園好きなので一気に読んでしまいました。もう一度じっくり読みたいと思います。
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バイロンのアンチクライストっぷり、悪魔主義が前面に出ており、発表当時はとんでもない排斥を受けたらしい。さもあらん。
それだけあって実に面白いです。
厳密に言えば「劇詩集」なんですが、訳がいいのであまり敷居を感じませんし、素直に読んでるうちにエキサイトしてしまいます。
個人的には悪魔崇拝、キリスト教否定、というよりは、人間の自我や意志へのより素朴な肯定を強く感じました。
「マンフレッド」も読んでみたいんですが、岩波あたりで出ませんかねえ……