暗闇に戯れて 白さと文学的想像力 (岩波文庫 赤346-1)

  • 岩波書店
3.80
  • (4)
  • (2)
  • (2)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 150
感想 : 10
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003234617

作品紹介・あらすじ

現代アメリカ文学を牽引し、その構図を一変させた稀有の作家による、革新的な批評の書。ウィラ・キャザー『サファイラと奴隷娘』、ポー、トウェイン、ヘミングウェイらの作品を通じて、アメリカ文学史の根底に「白人男性を中心とした思考」があることを明るみに出し、構造を鮮やかに分析すると共に、その限界を指摘する。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • Toni Morrison's "Playing in the Dark" (2007): Overview
    https://scalar.lehigh.edu/toni-morrison/toni-morrisons-playing-in-the-dark-a-detailed-overview

    トニ・モリスンが教えてくれた鮮やかな世界 | GQ JAPAN(2019年8月22日)
    https://www.gqjapan.jp/culture/article/20190822-mourning-toni-morrison

    トニ・モリスン氏が死去、米黒人女性初のノーベル文学賞作家 - BBCニュース(2019年8月7日)
    https://www.bbc.com/japanese/49259982

    朝日新聞出版 最新刊行物:選書:白さと想像力
    https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=2405

    暗闇に戯れて - 岩波書店
    https://www.iwanami.co.jp/book/b631509.html

  • フォークナーの「アブサロム  アブサロム!」を読み、彼を敬愛し、習った作家群にいるトニ、モリスンを久しぶりに手に取りたくなった。

    そこで「ビラヴド」「青い眼が欲しい」を立て続けに・・たまたま 返却に行った際、返却棚にあったこれをチョイス。
    薄いと思った私を小ばかにされそうなほどの難解さ。
    読み下すのに呻吟・・まさにそういった大学の講義を聴いている感覚に浸った。

    皆さんが書いてあるように、解説で目から鱗。
    真っ暗悩みを手探りで歩いた後、フットライトを受け取り、周囲の景色が見渡せた想い。

    モリスンの聡明さは、思っていた以上で素晴らしい。
    100年経ても生き残る存在に挙げられると思える。
    無知の塊である私を慈雨隠させられた時間が文を追うその時…ヘミングウェイの側面を分析する手法に舌を巻く。

    ネイティブアメリカンの土地をおびただしい流血でもぎとった白人・・その白人とて思い上がりで勝手に一部がでっち上げたのはほぼWASP
    その「白人」がアフリカン黒人を奴隷にして今日に至る土台を作り上げていった。
    フランス系、スペイン系南欧人種、は後続組。ロマやユダヤらが参入できるようになったのは20世紀になって。
    従って今日云われるレイシズムはアメリカという劇場で語るとすれば、きわめて歪んだ流れが渦巻いた上に愚かしくも作り上げられた虚構。

    二グロという響きは悍ましくていやだ。そう言う「黒人」はアフリカから連れてこられ、性的屈辱の200年余を経て血が世界中と混じっても・・未だ貼られるレッテルは黒。

    モリスンが そういった【暗闇の領域】に押し込められた】死角としての影に光を当て、「見えないふりをしてみなかった」・・あたかも白人の闇を投影しているかのような世界を見せつける  言葉を編み出した!
    それを文学と言ってひとくくりにしないで、彼女以前、彼女以降の文学のテクストを学ばなければ無意味になってしまうと感じた。

  • 米国は黒人差別に対する言説が独特の先鋭化を遂げていると思うが、トニ・モリソンのものは重要だろう。良い本だが内容はけっこう難しい。文章も難解だが、挙げられている本がマイナーでほぼ知らない。自分の見識のなさもさりながら、ヘミングウェイでも「持つと持たぬと」「エデンの園」。マッチョなヘミングウェイの無自覚の差別、劣った異質なものとして持ち出す「ニグロ」の説明は興味深かったものの。
    値段の話をするのはなんだが、本文は130ページ、訳者解説が同じくらい、薄い本で900円。文庫本は500円でお釣りがくる時代からは値上がりしたよね。

  • 難解!
    訳者解説で光明が見えた。

  • 大学の講義を元にしたもの。なので専門的で分かりにくい。だが言わんとするところは今となっては当然と思われること、アメリカの移住者の自由のために黒人は作られたのだ。
    訳者の解説が丁寧でかなり理解の助けになった。

  • 黒人。この言葉は使いたくない。

  • タイトルから小説と思っていたが、評論であった。大学での授業をもとにして議論を進めたと書かれている。様々な小説、ヘミングウェーの小説の問題点も指摘している。アメリカ文学を卒論で扱うときには必須の本であろう。解説が1/4以上を占めているし、本文も140ページしかないので、解説から読むのもいいと思われる。

全10件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1931-2019。アメリカ合衆国の作家。小説に、『青い眼がほしい』(1970)、『スーラ』(1973)、『ビラヴド』(1987)、『ジャズ』(1992)、『ホーム』(2012)など。彼女の長編小説はすべて日本語に翻訳されている。絵本に、スレイド・モリスンとの共著『子どもたちに自由を!』(1999、長田弘訳、みすず書房、2002)『どっちの勝ち?』(2007、鵜殿えりか・小泉泉訳、みすず書房、2020)、『いじわるな人たちの本』(2002)、『ピーナッツバター・ファッジ』(2009)、『小さい雲と風の女神』(2010)、『カメかウサギか』(2010)、『ほんをひらいて』(2014、さくまゆみこ訳、ほるぷ出版、2014)など。写真絵本『忘れないで――学校統合への道』(2004)はモリスンの単著。ノーベル文学賞(1993)のほかに、全米批評家協会賞、ピュリツァー賞、大統領自由勲章など数々の賞を受賞。プリンストン大学などで教鞭をとった。

「2020年 『どっちの勝ち?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

トニ・モリスンの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×