- Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003234617
作品紹介・あらすじ
現代アメリカ文学を牽引し、その構図を一変させた稀有の作家による、革新的な批評の書。ウィラ・キャザー『サファイラと奴隷娘』、ポー、トウェイン、ヘミングウェイらの作品を通じて、アメリカ文学史の根底に「白人男性を中心とした思考」があることを明るみに出し、構造を鮮やかに分析すると共に、その限界を指摘する。
感想・レビュー・書評
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フォークナーの「アブサロム アブサロム!」を読み、彼を敬愛し、習った作家群にいるトニ、モリスンを久しぶりに手に取りたくなった。
そこで「ビラヴド」「青い眼が欲しい」を立て続けに・・たまたま 返却に行った際、返却棚にあったこれをチョイス。
薄いと思った私を小ばかにされそうなほどの難解さ。
読み下すのに呻吟・・まさにそういった大学の講義を聴いている感覚に浸った。
皆さんが書いてあるように、解説で目から鱗。
真っ暗悩みを手探りで歩いた後、フットライトを受け取り、周囲の景色が見渡せた想い。
モリスンの聡明さは、思っていた以上で素晴らしい。
100年経ても生き残る存在に挙げられると思える。
無知の塊である私を慈雨隠させられた時間が文を追うその時…ヘミングウェイの側面を分析する手法に舌を巻く。
ネイティブアメリカンの土地をおびただしい流血でもぎとった白人・・その白人とて思い上がりで勝手に一部がでっち上げたのはほぼWASP
その「白人」がアフリカン黒人を奴隷にして今日に至る土台を作り上げていった。
フランス系、スペイン系南欧人種、は後続組。ロマやユダヤらが参入できるようになったのは20世紀になって。
従って今日云われるレイシズムはアメリカという劇場で語るとすれば、きわめて歪んだ流れが渦巻いた上に愚かしくも作り上げられた虚構。
二グロという響きは悍ましくていやだ。そう言う「黒人」はアフリカから連れてこられ、性的屈辱の200年余を経て血が世界中と混じっても・・未だ貼られるレッテルは黒。
モリスンが そういった【暗闇の領域】に押し込められた】死角としての影に光を当て、「見えないふりをしてみなかった」・・あたかも白人の闇を投影しているかのような世界を見せつける 言葉を編み出した!
それを文学と言ってひとくくりにしないで、彼女以前、彼女以降の文学のテクストを学ばなければ無意味になってしまうと感じた。 -
米国は黒人差別に対する言説が独特の先鋭化を遂げていると思うが、トニ・モリソンのものは重要だろう。良い本だが内容はけっこう難しい。文章も難解だが、挙げられている本がマイナーでほぼ知らない。自分の見識のなさもさりながら、ヘミングウェイでも「持つと持たぬと」「エデンの園」。マッチョなヘミングウェイの無自覚の差別、劣った異質なものとして持ち出す「ニグロ」の説明は興味深かったものの。
値段の話をするのはなんだが、本文は130ページ、訳者解説が同じくらい、薄い本で900円。文庫本は500円でお釣りがくる時代からは値上がりしたよね。 -
難解!
訳者解説で光明が見えた。 -
黒人。この言葉は使いたくない。
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タイトルから小説と思っていたが、評論であった。大学での授業をもとにして議論を進めたと書かれている。様々な小説、ヘミングウェーの小説の問題点も指摘している。アメリカ文学を卒論で扱うときには必須の本であろう。解説が1/4以上を占めているし、本文も140ページしかないので、解説から読むのもいいと思われる。