ジェルミナール 中 (岩波文庫 赤 544-8)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003254486

感想・レビュー・書評

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  • 「これはあらゆる者の共犯なのだ。百年に及ぶ全体の過失なのだと感じていた。」


    ストライキのさなか、ブルジョワの邸で催される午餐の贅沢な食事の描写が、なかなか皮肉めいていて可笑しくて、怒りに震えながら、権力者にたてつくよりも身を屈するほうがましだというひとの弱さと優しさがとても真に迫り、この世界を呪うしかない。
    だれが悪いわけでもない。これはにんげんの相だから。ひとは、平等 でなんかいられないいきものだから。あるものはひとを使い贅沢をし、あるものはは搾取され日々の鬱憤のためになけなしの銭がお酒にかわってゆく。優しさはときどき煌めくけれど、闇のなかにすぐに埋もれてしまう。けれど弱々しい灯りでも、灯しつづけられれば、だれかの道しるべにはなるだろう。そして、こうして声をあげる人たちがいて、長い、果てしもなく長いときをかけて、少しずつだけれど、照らされるひかりが、ひろがってゆく。

    エティエンヌの理想は果てしもなく、スヴァリーヌ(キャラだちが飛び抜けている!)は、美しく恐ろしさを秘めたアナーキスト。欠けた心のぬくもりをうめるようなポローニュ(兎)がかわいい。ひとの描く夢はいつだって哀しみをともなう。ものいわぬポローニュを虐める子どもたち。タルベーラのサタンタンゴをみたい。これが、にんげん(悪魔)。
    暴動が加速するにつれ、ジンのまわったエティエンヌのようにわたしもこの反乱に酔いしれ、徒党たちかグレゴワール邸の横をとおりすぎたときに「やっちゃえばいいのに。」なんて衝動をかんじてしまった。
    にんげんの底知れぬ欲望と狂気。ないものねだりのわたしたち。可哀想なわたしたち。
    「馬鹿なや奴ら!馬鹿なやつら!」。

    地の底で、未だ燃えつづける焔。地上では緑が、絶えまなくひろがる。
    Life goes on…。


    「何処だろう、向こうとは?─── それは、恐怖を起こさせる遠い所、近づき得ない宗教的な國の中に引込んでいて、そこには未知の神が聖櫃の奥に蹲って支配している。」

    「一切を破壊することだ・・・・・。国民というのもおさらば、政府というとものもおさらば、財産もおさらば、神も宗教もおさらばだ。」

    「ああ、人の言うことは当てにならない、女房の身持ちが悪いと、その家は仕合わせになるんだもの!」

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著者プロフィール

エミール・ゾラ
1840年、パリに生まれる。フランスの作家・批評家。22歳ごろから小説や評論を書き始め、美術批評の筆も執り、マネを擁護した。1862年、アシェット書店広報部に就職するが、1866年に退職。1864年に短編集『ニノンへのコント』を出版、1865年に処女長編『クロードの告白』を出版。自然主義文学の総帥として論陣を張り、『実験小説論』(1880年)を書いた。1891年には文芸家協会会長に選出される。

「2023年 『ボヌール・デ・ダム百貨店』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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