三酔人経綸問答(中江兆民) (岩波文庫 青 110-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003311011

感想・レビュー・書評

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  • 洋学紳士、豪傑君、南海先生。中江兆民ひとりの手によって描かれたこれら3人の議論が順に展開していくことによって、立憲主義もリアリズムも、現実路線も活き活きと語られる。

    これほど異なった視点から時局を見ることができることを、大局を捉える力というのではないかと思う。

    先に登場する洋学紳士、豪傑君の二人の論は極論のように思えるが、一つの考え方を突き詰めて考えることで、その論が持っているゲームチェンジャー的な可能性が見えてくることもある点が、面白い。

    本書の書き方が一問一答のような形ではなく、両者にある程度たっぷりと論じさせているからこそ、そこまで話が展開できたのだろう。

    南海先生が最後に指摘するように、現実は直線的ではなく紆余曲折しながら進んでいくが、ただ中庸を行くだけではなく、このようは広い視点から状況を捉えたうえで進んでいくべきだということを教えてくれる本だと感じた。

  • 中江兆民が明治時代に出版した本ではあるが日本の政治のあり方についてどうあるべきかと言うことをある3人の人物を登場させて語り合いの中で論じているが、今の時代においてもなかなか参考になる本と言える。
    今の時代において政治は社会はどうあるべきか、考察に値する内容である。

  • 2019年夏現在のトランプ政権の経済エゴ丸出しのディール外交や、Brexitで綱引きするポピュリズム、きな臭いアジア地政学リスクなど、本書で議論されている登場国の役割が変わっているだけで、およそ何が議論の争点となりうるのかの本質は中江が捉えていたものとあまり変化がない。むしろまさに現在こそ、三酔人が問答していたことを外挿して再考出来るのではという気もしてきます。

  • 国際政治は権力闘争ではあるが、その枠組みと規則が存在するため、暴力の支配する無秩序とはいえない。非武装でもなく、征服のための軍備でもなく、世界中の国と友好関係を深め、常に防衛戦略をとるべき。中江兆民『三酔人経綸問答』1887

    軍備と徴兵が国民のために一粒の米・一片の金をももたらしたことは未だにない。▼國民が國威國光の虚榮に醉ふは、猶ほ個人のブランデーに醉ふは如し。彼れ既に醉ふ、耳熱し眼眛みて氣徒らに揚る、屍山を踰へて其の慘なるを見ざる也、血河を渉りて其穢なるを知らざる也。而して昻々然として得意たる也。▼マルクス主義は宣伝によって国民の意識を社会主義にむけさせ、政府や議会を変えていこうとするが、平民社の弾圧のように日本の権力は甘くない。国民の意識も意外に低く、宣伝で変えられそうもない。そこで政府や議会を変えるのではなく、権力それ自体を否定する運動の方が効果がある。幸徳秋水 
    ※社会主義者(→無政府主義者)。平民社。日露戦争反対。大逆事件で刑死。

    人生の不可解が若し自殺の原因たるべき価値あるならば、地球は忽ち自殺者の屍骸を以て蔽はればなりませんよ、人生の不可解は人間が墓に行く迄、片手に提げてる継続問題じやありませんか。木下尚江なおえ『火の柱』1904 
    ※社会主義者。日露戦争反対。

    肉体・知能・霊魂を自然に発達させ維持するために必要な物資を得てない人を貧乏人と呼ぶ。人は水に渇いて(貧困で)も死ぬが、溺れて(金持ちで)死ぬ者もある。だから贅沢は廃止すべきだ。過分に富裕なのがふしあわせだからといって、過分に貧乏なのがしあわせだとは言えぬ。人はパンのみにて生くものにあらず、されどまたパンなくして人は生くものにあらず。※人はパンだけでは生きず、人は主の口から出るすべてのことばによって生きる(旧約聖書―申命記・八)河上肇かわかみ ・はじめ『貧乏物語』1916 
    ※マルクス主義者。李大釗・周恩来は日本へ留学中、河上肇の著書を通じてマルクス主義に傾倒。

    社会主義も無政府主義も精神が理論化されるといやになる。僕が一番好きなのは人間の盲目的行為だ。精神そのままの爆発だ。思想に自由あれ、行為にも自由あれ、動機にも自由あれ。▼変わらないものはない。旧いものは倒れて新しいものが起きる。今威張っているものがなんだ。すぐに墓場の中へ葬られてしまう。大杉栄さかえ『自叙伝』1921 
    ※無政府主義者。エスペラント語。

  • 近代日本において、民主主義はどのような形で導入されるべきか、という問いに対して幾つかの回答が提唱されている。
    南海先生、紳士君、豪傑君、どの登場人物の論が著者の考えを色濃く反映しているのかは分からないが、いずれの論も著者の考えであるのだろう。
    政治哲学とは本当に難しい。誰しもが賛同する政治制度など実在しないのかもしれないが、そうであっても理想を追い求め続け、いつかその制度が実現する日を願い日々邁進することが大事なのかもしれない。

  • 2016/3/12
    南海先生の主張は明治日本の政治体制にまさに反映されている。
    ただ、専守防衛については隔たりがあった。
    ただ戦後日本は専守防衛を軸に政治を行ってきたので、何十年経た結果、実現をしたと考える。

    現実的に考えると南海先生の論が一番適しているが、洋楽紳士の論が叶うような国が理想的だ。

  • 若干消化不良。

  •  最初に近代にすっ転んだきっかけになった本です。

  • もっとも発言量の多い紳士君の言い分が中江兆民の意見ということでしょうか

著者プロフィール

1847年、高知県生まれ。思想家。フランス留学後、仏学塾をひらき、新たな教育や自由民権思想の啓蒙につとめた。門下に幸徳秋水がいる。著作に『三酔人経綸問答』があるほか、訳書に『民約訳解』がある。1901年、没。

「2021年 『三酔人経綸問答 ビギナーズ 日本の思想』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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