武士道 (岩波文庫 青118-1)

制作 : 矢内原忠雄訳 
  • 岩波書店
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  • / ISBN・EAN: 9784003311813

感想・レビュー・書評

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  • 「武士道」新渡戸稲造/矢内原忠雄 訳
    日本精神論。桜色。
    岩波文庫 青118

    いわゆる国民性のステレオタイプを語るのは面白楽しくて、ネット上にある有象無象のまとめなんかをよく読んでしまいます。
    どこそこの国の人はこういった behavior を示すのです、ということを語りたい動機は同じでも、少なくとも、「維新を経た文化人の、外国人に向けて執筆した、永年読み継がれている」日本人論ですから、今の私達が我々自身(あるいは当時の日本国民の性)を捉えるためになる一書と思います。(4)

    -----
    @全体として、[近世日本の倫理観]に関する本
    @[西欧と比較した日本人独特の倫理観]について、[武士階級が従っていた作法、心得を紹介し]詳しく述べている
    @[構成]17章に分かれ個別の観点から武士道体系全般を記述している。末3章においては武士道の現在・未来について考察している。

    ——
    以下メモ

    ”神道の教義には、我が民族の感情生活の二つの支配的特色と呼ばるべき愛国心および忠義が含まれて”おり、これは”神の事を言っているのか国の事を言っているのか”混同している。しかしこれは”国民的本能・民族的感情を入れた枠であるから、あえて体系的哲学もしくは合理的神学たるを装わない”

    ”義の観念は誤謬であるかもしれない”
    The conception of Rectitude may be erroneous
    → 義(≒正義)に対して疑いを挟む…?

    ”平静は静止的状態に置ける勇気である”

    ”私はいかなる種類の専制政治をも支持するものでは断じてない。しかしながら封建制度を専制政治と同一視するは誤謬である”
    ”封建君主は””自己の祖先並びに…に対して高き責任感を有した”

    「かの誇りをもってせる帰順、かの品位を保てる帰順、かの隷従の中にありながら高き自由の精神の生くる心の服従」(バーク『フランス革命史』)

    真の礼は”他人の感情に対する同情的思いやりの外に現われたるものである”

    何かをなさんとする時には最善の道があるに違いなく、”最善の道は最も経済的であると同時に最も優美なる道である”
    優美なる道が経済的な道であるならば、”優美なる作法の絶えざる実行は力の予備と蓄積をもたらす”

    ”単に礼儀のために真実を犠牲にすることは、「虚礼」であり「甘言人を欺くもの」である”

    ”徳それ自身がこの徳の報酬”である
    …日本における商道徳の低さと対比し。

    ”西洋の個人主義は父と子、夫と妻に対して別々の利害を認むるが故に、人が他に対して負う義務を必然的に著しく減ずる”
    ”しかるに武士道においては、家族とその成員の利害は一体である”

    ”武士道は、我々の良心を主君の奴隷となすべきことを要求しなかった”
    My life thou shalt command, but not my shame.

    武士の教育において守るべき第一の点は品性を立つること

    ”金銭なく価格なくしてのみなされうる仕事のあることを、武士道は信じた。”
    →霊魂の啓発

    ”或る意味において我が国民は他の民族以上に””物に感ずるはずである”
    ”けだし自然的感情の発動を抑制する努力そのものが苦痛を生ぜしめるからである。”
    抑制によって、神経を”いっそう鋭敏ならしむる”

    ”我が国民の笑いは最もしばしば、逆境によって擾されし時心の平衡を恢復せんとする努力を隠す幕である”

    『死を軽んずるは勇気の行為である、しかしながら生が死よりもなお怖しき場合には、あえて生くることこそ真の勇気である』(サー・トマス・ブラウン『医道宗教』)

    ”武士道の窮極の理想は結局平和であった”

    ”女子はおのれの主君を有せざるにより、己れ自身の身を守った。”
    ”女子が男子の奴隷でなかったことは、彼女の夫が封建君主の奴隷でなかったと同様である”

    ”自己否定—これなくしては何ら人生の謎は解決せられない”

    軍事的形態=武士階級
    産業的形態=貴族、及び農工商
    上の場合において婦人は最も少なく自由を享受しており、或は社会階級が下になるほど夫婦の地位は平等であった。また身分高き貴族の間でも(男子が婦人せることにより)両性間の差異は著しくなかった。

    ”アングロ・サクソンの個人主義は、夫と妻とは二人の人格であるとの観念をば脱することができない。”

    ”知的ならびに道徳的日本は直接間接に武士道の所産であった。”

    ”我が国民が深遠なる哲学を欠くことの原因は、武士道の教育制度において形而上学の訓練を閑却せしことに求められる。”

    第17章 武士道の将来
    ”母制度たる封建制の去りたるとき、武士道は孤児として遺され”た。
    ”現在の整備せる軍隊組織はこれをその保護の下に置きうるであろう”
    ”けだし平民主義はいかなる形式もしくは形態のトラストをも許容しない”
    歴史に曰く”武徳の上に建てられたる国家は「恒に保つべき都」たるをえない。”
    ”戦いの本能の下に、より神聖なる本能が潜んでいる。すなわち愛である。”
    武士道は実際の諸問題に没頭するあまり、”往々右の事実に対し正当なる重さを置くのを忘れた。”
    社会の状態が変化して武士道に敵対的となる今日においては”その名誉ある葬送の準備をなすべき時である。”
    ”今や武士道の日は暮れつつある。しかして吾人は””いまだこれに代るべきものを見いださないのである。”
    ”武士道は特に治者、公人および国民の道徳的行為に重きを置いた。”
    これに対しキリスト教は”個人主義が道徳的要素たる資格において勢力を増すにしたがい、実際的適用の範囲を拡大するであろう。”

    ”武士道は一の独立せる倫理の掟としては消えるかも知れない、しかしその力は地上より滅びないであろう。その武勇および文徳の教訓は体系としては毀れるかも知れない。しかしその光明その栄光は、これらの廃址を越えて長く活くるであろう。その象徴とする花のごとく、四方の風に散りたる後もなおその香気をもって人生を豊富にし、人類を祝福するであろう。百世の後その習慣が葬られ、その名さえ忘らるる日到るとも、その香は、「路辺に立ちて眺めやれば」遠き彼方の見えざる丘から風に漂うて来るであろう。”
    Bushido as an independent code of ethics may vanish, but its power will not perish from the earth; its schools of martial prowess or civic honor may be demolished, but its light and its glory will long survive their ruins. Like its symbolic flower, after it is blown to the four winds, it will still bless mankind with the perfume with which it will enrich life. Ages after, when its customaries shall have been buried and its very name forgotten, its odors will come floating in the air as from a far-off unseen hill, “the wayside gaze beyond;”

  • 東久留米Lib

  • 西洋文化、特に騎士道との対比が興味深い。
    武士道がすべて特異ではない、西洋文化にも似た部分があるではないかということを強調している。

  • 他の多くの国と比較して、現代の日本では無神論者とまではいかないものの、それほど自分の明確な宗教を持っていない人のほうが多い気がします。諸外国では道徳教育の中心は宗教が担っているのに対し、日本人はどのような思想に基づいて生活してきたのか。日本人の思想に影響を及ぼしてきた武士道について解説されています。普段あまり学ぶことのない日本についての一般教養としてぜひ読んでみてください。
    (4類 B1)

  • ・知識と叡智の違い
    知識はあくまで手段であり、使いこなせないものは詩歌名句を吐き出す便利な機械に過ぎざるものとみなされるということ。自分がそうならないように戒めとすべきと感じた。

    ・現代
    やっぱり、今の政治に義は無いと思う。
    選挙に勝ったから相手の意見は聞かなくて良い、というのは間違っている。
    批判に激昂することは、勇気が無いと間違いない。

    ・贈り物についての解釈
    アメリカ人は物質の価値を評価し、それを送ることによって相手への好意を示す。
    日本人は物質を差し出すという行動そのものを評価し、その物質自体に執着していない。
    対極的に見えるが、贈るという気持ちは同一であるという説明は実に分かりやすかった。

    ・古代ローマ批判
    財政を取り扱うものがその地位を高めたことで、金銭の重要性が同様に高まった。これがローマ人の貪欲さと関係している、と暗に批判しているように解釈できた。つまり、金銭欲を無視することで、欲望による腐敗から逃れられたのが武士の時代だと説いているのではないか。

    ・男女観
    p136に彼の考えが全て表されている。

  • 2014/07/14−
    中断

  • 「代表的日本人」「茶の本」と読んできて、3番目のこの「武士道」が一番納得がいきました。明治時代に諸外国に向けて日本のあり方を説明するというテーマは、そのまま現代にも通じる、深い洞察があります。この本は繰り返し読んだ方がよさそうです。その都度発見があるような気がします。さすが5000円札のお方、と改めて敬服いたしました。

  • 内容がクソ難しい。

  • 今、なくしかけているもの。
    http://bukupe.com/summary/11935

  • 日本人が感覚的に理解している、道徳の礎。
    その文体は穏やかなるも、力説と知るだろう。
    自分に足りないものの確認のため、何年かに一度読む本。

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著者プロフィール

1862年南部藩士の子として生まれる。札幌農学校(現在の北海道大学)に学び、その後、アメリカ、ドイツで農政学等を研究。1899年、アメリカで静養中に本書を執筆。帰国後、第一高等学校校長などを歴任。1920年から26年まで国際連盟事務局次長を務め、国際平和に尽力した。辞任後は貴族院議員などを務め、33年逝去。

「2017年 『1分間武士道』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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